『またここか』 8年ぶりに上演!――奥野壮×浅利陽介が語る、坂元裕二作品の魅力
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すべて見る脚本家・坂元裕二が2018年に書き下ろした戯曲『またここか』が、8年の時を経てリバイバル上演される。荒井遼の演出、奥野壮、馬場ふみか、永瀬莉子、浅利陽介の出演で立ち上がる、登場人物4人による繊細かつ濃密な会話劇だ。ガソリンスタンドを営む弟のもとに突然兄を名乗る男が訪れたことから、幻想のような現実のある夏の一幕が、可笑しく、せつなく、時に痛みを伴って綴られていく。本格会話劇では初共演、弟役の奥野と兄役の浅利が、とことん魅了された坂元裕二の言葉の世界について語り合った。
――8年前に上演された際、高い評価を得た作品です。お話を受けた時、本作のどのような点に心を惹かれましたか?
奥野 台本を読んだ時に、セリフの言い回しがこれまで触れてきた台本とちょっと違うなと、ドキッとしたんです。ストーリーも面白いな、これやってみたいな!
と思ったのが最初でした。あとはやはり、坂元裕二さんの作品というところに心惹かれました。
浅利 僕は“普通っぽさ”に惹かれましたね。観ているお客さまが、人の会話を聞いているような感覚で劇空間に入っていけるところが魅力だと。それを今回、座・高円寺という劇場でやれることに、僕はとても意味があると思っています。緊密な空間でお客さまに物語を伝える醍醐味というものがあるはず、それを舞台でできないかなと思っていた矢先に来た今回のお話だったので。これだ!
と思って食いつきました(笑)。
奥野 4人の会話劇というところにも惹かれました。ここまでコンパクトで面白い会話劇を僕はあまりやったことがなかったので。少人数で作る舞台という点も魅力の一つでした。

――お話のように普段のなにげない会話が続くなか、さまざまな事実や人物たちの関係性が見えて来て思わず前のめりにさせられる、非常に吸引力のある作品です。稽古の感触はいかがですか?
奥野 僕はまだ「単純に面白いな」という段階にいて、本質的な部分を理解するにはもう少し時間がかかりそうです。まだ浅瀬のプールで泳いでいる、今はそんな感じです。
浅利 壮君が演じる“近杉”の役は、ちょっと共感しにくいキャラクターではあると思います。やっちゃいけないけどやってみたい、そういう思いは誰しも抱えていると思うんですけど、ほとんどの人は行動には移さない。近杉はその一線を越えてしまう人間なんです。すると、世間は異端者とかいろいろ呼ぶわけです。で、さっきもみんな(キャスト陣たち)で話したんですけど、すでに演出プランが決まっていたとして、それでも俳優にとって「一回脱線してみる」という作業は僕、すごく大事だと思うんですね。
奥野 求められていないとわかっていても、やりたくなっちゃう瞬間ってありますよね。
浅利 うん。やり過ぎて、大抵は「やっぱり違ったね」ってなるんですけど(笑)。
奥野 「そうですよね〜」って(笑)。こっちもそれはわかっていながら、でも一旦やってみる、みたいなことは現場ではよくあると思ったり。
浅利 そうそう〜。
奥野 ですから、やっちゃいけないことをやってしまうところに、僕は結構共感できるな。実際の僕たちは理性的に、やっちゃいけないことに対してはやっちゃいけないって自分の行動を制限しますけど、ちょっとそのタガが外れているのが近杉で。そう思うことは別に不思議じゃないなっていう感覚はありますね。
――浅利さんが演じるのは、奥野さん扮する近杉のもとに「あなたの兄です」と名乗って現れる“根森”という男。この兄のことはどう見ていますか?
浅利 このお兄ちゃんは……もう〜自分のことばっかり!(一同笑) とにかく切羽詰まっている状況なんです、この人は。お金も欲しいし、自分の家族も取り戻さなきゃいけない……といった事情が後々わかって来て。
奥野 このお兄さんが、作品の中で一番明確な目的を持った人という気がしますよね。
浅利 そうだね、やはり一番の目的はお金です(笑)。ふた言目には金のことを言ってくる守銭奴みたいな感じの人間ではありますね。
――先ほど「坂元裕二さんの作品だから」と奥野さんがおっしゃいましたが、坂元さんが生み出すドラマのどういうところに魅了されているのか、お話いただけますか?
奥野 やはり坂元さんならではの台詞回しです。なるほど! そういう言い方をするんだ、そういうふうに伝えられるんだ! といった驚きがあって。僕たちの想像からはるかに逸脱したセンスみたいなものを、どの作品でも感じます。
浅利 僕も同じく台詞ですね。ひとつの物事に対しての掘り下げ方というか、ある出来事についての見え方が人によって全然違う、そこがすごく面白いんです。お互いにひとつのことを話し合いながら、どんどん違う方向に行ってしまうんですよね。その遠回りしている感じが非常に面白いんですけど、とっても台詞が長いんですよ。(一同笑) この面白さをどうやって上手く僕が伝えられるか、今、本当にドキドキしています。
奥野 観客に「こういうふうに見てほしい」と明確に求めてはいない感覚がありますね。結構「自由に見てください」という感じ。
浅利 演じる側も自由にやっていい、そんなニュアンスもあるよね。
奥野 そうですね。多くの作品には「ここで感動してほしい」といった意図が絶対あるはずで、もちろん『またここか』にもあるんですけど、受け取り手側の気持ちを制限しない感覚というのかな。それが素敵だと思って読んでいます。
――稽古のなかで感じた、お互いの表現者としての印象や発見などを伺いたいです。
奥野 何か……明るいんだ〜と思って。(一同笑)
浅利 ずっと下を向いている陰鬱な人に見えてたってことだよね。
奥野 いや! 黙々と自分の作業をされる方かな、といったイメージがあったから。
浅利 ああ〜昔気質の職人さんみたいな?
奥野 はい。
浅利 ちょっと渋めの人に見えたけど、本当はすごく明るくて柔和で、現場のいわゆるキーマンみたいな?
奥野 そうです(笑)。ムードメーカー的な。年下の僕に対してもフランクに接してくださるのがありがたくて、いろんな話ができて嬉しいです。
浅利 僕も壮君、いいな〜って思いますよ。台本をすげ〜フラットに読むところがね、たまんないんですよ。本読みって、普通に読む人がやっぱり上手いなと感じるんです。そういうことができる25歳、いないですよ。
奥野 嬉しい〜。
浅利 いやいや。僕は妬んでいるだけですから。(一同笑)
――そう言いつつ、きっと“お兄さん”がいろんな局面でフォローしてくれるのでは。
浅利 いやいやいや、僕は全然フォローでないです。
奥野 僕がフォローします!
浅利 おおっ! 頼もしいです。
奥野 いや、僕も頼もしく思っています。稽古でも本読みを聞きながら、どうしてこんなに台詞に説得力があるんだろう……すごい! って。大先輩、頼りにしています。
――息の合ったおふたりによる今回の舞台、それぞれの意外な姿が覗けるような気がします。
奥野 この作品、正直、自信あります! 僕たちがしっかりと表現して舞台作品に昇華できれば必ず面白いものが出来上がる、そう確信に近いものを得ていますので。僕自身は、最近は漫画原作の作品など個性の強いキャラクターを担うことが多かったので、ここまでしっかりとした会話劇に挑むのは久しぶりかもしれない。ひと味違う僕を見ていただけるのではないかなと思うので、ぜひ期待してください!
浅利 そうですね。まず、しゃべり倒している浅利陽介を見られます。客席が300弱ほどの人数の限られた劇場ですので、とにかくお客さまとの距離が近い!
そんなに近くで見られるの? ってお客さまはびっくりされると思います。あまり笑えるような作品ではないかもしれないので、こちらも小さな声で台詞を喋る瞬間があるかもしれませんが、皆さんの小さな笑い声とか、泣きそうな吐息みたいなものが僕らにも聞こえると思います。そういう静かな、緊密な空気感をお互いに楽しみましょう!

取材・文/上野紀子
<公演情報>
『またここか』
日程:2026年2月5日(木)〜15日(日)
会場:座・高円寺1
※公演によって、終演後に坂元裕二やキャストによるアフタートークがございます。
下記詳しくは公式サイトをご確認ください。
[作]坂元裕二
[演出] 荒井 遼
[出演]奥野 壮 馬場ふみか 永瀬莉子 / 浅利陽介
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/matakokoka/
公演オフィシャルサイト:
https://matakokoka.jp
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