鶴瓶噺は試行錯誤中ですが、根本は自分が楽しめるかどうかです。
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笑福亭鶴瓶
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すべて見るインタビュー当日が誕生日だった笑福亭鶴瓶。御年74歳にしてバリバリの現役だが、大御所を気取ることが一切ない。それ以前に、カッコつけるとか見栄を張るだとかがないし、鶴瓶噺がそういう芸でもある。「本当にあったことが一番おもしろい」。インタビューの現場でも、本当にあった出来事が紡がれた。

「この間もね、墓参りのあとで、大阪で常宿にしているホテルに帰ったんです。ところが、部屋の前に立って鍵をあてたんだけど、全然反応しないわけです。しょうがないからホテルの方に『この鍵、反応しませんよ?』と相談したら、ふっとその鍵をとって『これ、別のホテルの鍵です』って。あ、そうだ。今日は違うところだったんやって気づいたんですけど……自分で自分の泊まっているホテルがわからなくなるって、カッコ悪かったですね(笑)」
落語家・笑福亭鶴瓶がテレビでも舞台でも現役の74歳ならば、画家・葛飾北斎が「富嶽百景」を描いたのは75歳の時。「画狂老人卍」と名乗っていた北斎は、もっと描ける、もっと描きたい、と長寿を願っていたという。20歳の時に駿河学から笑福亭鶴瓶となってもうすぐ54年。74歳の笑福亭鶴瓶は、いったいなにを願うのだろうか?

「葛飾北斎みたいなすごい方が、75歳で『もっと描きたい』と願っていたのなら、僕だって『もっとしゃべりたい』と言わなきゃダメですよね(笑)。いやでも、本当にもっともっとしゃべりたいです。僕は落語と鶴瓶噺の両方がありますから。落語は江戸時代から続いているものだし、ずっとやり続けなければいけないもの。でも、鶴瓶噺は続けたいものなのかもしれません。最初の頃は大学の学園祭にひとりで出て1時間ぐらいしゃべっていたんです。事前になにも決めず完全にフリーで、話がどこへ飛ぶのかもわからなくて。その頃は『ウケたらええねん!』と思っていましたけど、鶴瓶噺で寄席に立たせてもらえてからは『次の噺家にちゃんとバトンを渡せる噺を』と考えるようにもなって。20代の頃からでいえば50年以上。鶴瓶噺はゆっくり変化してきたし、いまだに試行錯誤中です」

いつの頃からかフリーでは舞台に立たなくなった。日々メモを取り、その1年間にあったことを中心にキーワードをまとめる。その上で、舞台に立ったら全部忘れる。なぞるようにしゃべりたくなかったからだ。そして、2026年の新たな試行錯誤は、過去の鶴瓶噺ライブ音源を聴きこむ作業。
「今回の舞台では〝そもそもの噺〟をやろうかなと思っているんです。しゃべりたい出来事が、日々新しくうまれていく。あれもこれもしゃべりたいとなると、どうしても最近の話が中心で昔の出来事はしゃべらなくなる。まるで、ところてんのように押し出されるのは、新しい出来事だから。でも、自分が生まれた時のことや高校時代の話、師匠との日々。そういう意味での〝そもそもの噺〟って、僕の原点であり鶴瓶噺の原点でもある。だから今回は、昔の音源を聴き直しているんですけど、すっごく嫌です(笑)。『そこ要らない!』と、自分で自分にダメ出ししたくなりますから」
2026年も絶賛試行錯誤中の鶴瓶噺だが「根本にあるのは自分が楽しめるかどうか」と、笑福亭鶴瓶は続けた。偶然なのか、表現とはそういうものなのか。映画『HOKUSAI』のなかで、若き日の葛飾北斎は「ただ描きてえと思ったものを好きに描いただけだ」と語っていた。

取材・文/唐澤和也
撮影/源 賀津己
<公演情報>
『TSURUBE BANASHI 2026』
〈神奈川公演〉
日程:2026年2月28日(土)・3月1日(日)
会場:KAAT神奈川芸術劇場〈ホール〉
〈東京公演〉
日程:2026年3月2日(月)・3日(火)
会場:日経ホール
〈大阪公演〉
日程:2026年3月19日(木)~22日(日)
会場:森ノ宮ピロティホール
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/tsurubebanashi2026/
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