福間洸太朗が描く、ラヴェルとふたりの作曲家の共鳴
クラシック
インタビュー
©KoutarouWashizaki
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すべて見る「念願だった、こだわりのプログラムです」
一昨年日本デビュー20周年を迎えたピアニストの福間洸太朗。2月21日(土)には東京文化会館小ホールで「ラヴェルの波動」と題したリサイタルを開く。最初、タイトルからオール・ラヴェル・プログラムを想像したのだが、そんな単純なものではない。前半にラヴェルの《ソナチネ》とルトスワフスキの《ピアノ・ソナタ》、後半にシマノフスキの《仮面劇(マスク)》とラヴェルの《夜のガスパール》。じつに練り込まれた、福間らしいレアな構成。福間に聞いた。
「もちろん、ラヴェルへのオマージュなのですが、ラヴェルとルトスワフスキ、ラヴェルとシマノフスキという組み合わせが私のこだわりで。昨年のラヴェル生誕150年のメモリアル・イヤーに弾きたかったのですが、ようやく実現します。ラヴェルは3月生まれなので、いちおうまだぎりぎり150歳の期間内ですね(笑)」
20世紀の作曲家ヴィトルト・ルトスワフスキ(1913~1994/ポーランド)の《ピアノ・ソナタ》は1934年作曲の初期作品。福間がこの作品に出会ったのは、2010年にワルシャワに旅した際に訪れた楽譜店でのことだった。
「それまで存在すら知らなかったこの作品をたまたま見つけて。その場でパラパラとめくっているうちに、まだ音も出していないのに、美しい響きの虜になってしまったんですね。同時にラヴェルの《ソナチネ》(1903)に似ているなという印象を受けたんです。とくにそれぞれの第1楽章。私は95パーセントぐらいの確信を持って、ルトスワフスキがラヴェルを意識して書いたんじゃないかと考えています。それから15年間、いつか《ソナチネ》と並べて弾きたいという思いを抱き続けていました。
私の中では、どちらも“水”を感じさせるんですね。私は自分の名前の洸太朗の『洸』のさんずいと光のイメージから、“Shimmering Water(煌めく水)”というテーマをライフワークのひとつにしていますが、ラヴェルと合わせて弾くことで、ルトスワフスキの水のイメージがより浮き立つのではないかと思います。
《ソナチネ》はこれまでそんなに弾いてきていないんです。第2楽章は人気曲ですし、私も大好きです。ラヴェルって、メヌエット系がすごくいいですよね。《古風なメヌエット》や《ハイドンの名によるメヌエット》、《クープランの墓》の中にも〈メヌエット〉がありますし。どれもホロリとさせられる、何かあたたかい雰囲気を持っています」
プログラム後半はカロル・シマノフスキ(1882~1937/ポーランド)の《仮面劇》(1915)を、ラヴェルの《夜のガスパール》(1908)と組み合わせた。どちらも文学作品に基づいた3曲から成る曲集。《仮面劇》は第1曲〈シェヘラザード〉、第2曲〈道化のタントリス〉、第3曲〈ドン・ファンのセレナーデ〉。《夜のガスパール》は第1曲〈オンディーヌ〉、第2曲〈絞首台〉、第3曲〈スカルボ〉。
「シマノフスキの《仮面劇》を初めて演奏会で聴いたのはまだ高校生の時です。その頃はまだシマノフスキという作曲家も知らなかったのですが、第一印象で《夜のガスパール》に似ているなと思いました。
まず神秘性という共通項があるのですが、《仮面劇》の第1曲〈シェヘラザード〉はターン、ターン、ターンと同じ音が繰り返し鳴らされて、それがラヴェルの〈絞首台〉でずっと鳴り響く鐘の音とオーバーラップしたり。速くなるところは〈スカルボ〉っぽかったり、トレモロのところは〈オンディーヌ〉っぽいなと思ったり。和声で言うと、ラヴェルよりも、ちょっとドビュッシー寄りなんですけどね。
今回、実験的に、《仮面劇》の3曲と《夜のガスパール》の3曲を、1曲ずつ交互に弾こうと思っています。音楽的にも面白くつながるんじゃないかなと思うんですよ。新たなストーリーが描けるんじゃないかな。東京文化会館の素晴らしい響きと、幻想的な空間にもぴったり。自分でもワクワクしています」
コンサートでは開演20分前から福間本人のプレトークも用意されている。実際にピアノも弾きながら、この特別なプログラムを楽しむヒントを与えてくれるはず。
「私は一般の高校に通っていたので、小中高の友だちは、そんなにクラシック音楽に詳しくない人ばかりなんです。だからラヴェルも、もしかしたら《ボレロ》は聴いたことあるかもしれないというぐらい。そういう人たちが来てくれた時に、『やっぱり難しいな。もう福間のコンサートはいいや』と思われると、やっぱり悔しいんですよね。プレトークなどで、ある程度の情報があって、何かしら理解の助けになれば、聴いて良かったと感じてもらえると思うんです」
水のきらめき、幻想の気配、うつろう色彩が静かに連なる。ラヴェルの波動と作品同士の共鳴は、ピアニストの感性と溶け合い、聴き手を豊かな想像の世界へといざなってくれるだろう。
取材・文:宮本明
福間洸太朗ピアノ・リサイタル
Vagues ravéliennes ~ラヴェルの波動

■チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2563142
2月21日(土) 14:00開演
東京文化会館 小ホール
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