「温かい思いを受け取ってもらえる作品」山口乃々華×ジェイミンに聞く、ミュージカル『SERI~ひとつのいのち 2026』の魅力&稽古場レポート
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ミュージカル『SERI~ひとつのいのち 2026』キービジュアル
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すべて見るconSeptが2022年に上演し、話題を呼んだミュージカル『SERI~ひとつのいのち』。目が見えず、話すこともできない少女・千璃(セリ)と家族をめぐる実話を、脚本·作詞を高橋亜子、作曲·音楽監督を桑原まこ、演出·振付を下司尚実が務めて描き出した。2026年版は、脚本や演出を一部改訂。キャストは初演に引き続き千璃を演じる山口乃々華をはじめ、母・美香役にジェイミン、父・丈晴役に坂田隆一郎と、初参加の面々も。さらに廣川三憲、小林タカ鹿、岡村さやか、金子大介、今森愛夏、尾川詩帆、加賀谷真聡らが顔を揃えている。
早くも高い仕上がりを感じさせる稽古場から
この日まず行われたのは、物語の冒頭から、千璃が生まれて退院するまでのシーン。

丈晴(坂田隆一郎)と美香(ジェイミン)が我が子の誕生を楽しみにし、名前はどうするか、将来どんな子に育つかなどを語り合う姿からワクワクが伝わってきて、こちらまで幸せな気分になる。だが、和んだのも束の間、千璃が生まれた瞬間、場の空気が一変する。担当医・オオヤマ(廣川三憲)を始めとする医療関係者の緊張感、何が起きているかわからず不安に押し潰されそうな美香たち。一方、千璃の魂を表現する山口のパフォーマンスは、生命の力強さを感じさせ、シリアスなシーンでもどこか希望を与えてくれる。
通し稽古が終わると、下司から台詞の発し方やダンスの時の目線、体の向きについてアドバイスや提案が入る。キャスト陣からも「ここってこれでいい?」「こうしてみたらどうだろう」と意見が出て、和気あいあいとした雰囲気で稽古が進んでいた。シリアスな場面を作っている最中でも、しっかりとコミュニケーションを取り、考えや思いを共有しているのが印象的だった。

続いては、千璃が初めて笑う、カラフルな傘のダンスが印象深いシーン。
異国の地で目が見えない千璃に向き合い続ける生活に悩み苦しみ、追い詰められた美香がアパートの屋上に向かうという重苦しい場面からのスタートだが、ジェイミンはすぐに気持ちを作り、母親の苦悩を描き出す。

また、山口は目が見えず話もできない赤ん坊の千璃が母を気にかける様子を身体表現で鮮やかに見せている。さらに、傘売りの声に反応した千璃の笑顔、好奇心を体全体で表し、それまで漂っていた空気を明るく変えていく。跳ねるように傘の間を行き来し、ダンサーと笑顔を交わす千璃のイキイキとした姿はとても愛らしく、そんな千璃に驚きながらも嬉しそうに抱きしめる美香の愛情に満ちた表情も素晴らしい。ささやかな出来事だが、家族にとって大切な瞬間が、歌とダンスによって見事に表現されていると感じた。
ここからさらに稽古を重ね、作品と役を深めたカンパニーがどんな物語を見せてくれるのか。この作品から受け取ることができるだろうたくさんのメッセージと合わせて楽しみだ。

インタビュー
山口乃々華×ジェイミン
――ここまでお稽古を重ねてきて、手応えはいかがでしょう。
山口 お稽古がスタートして1週間で一度全シーンを当たり、初めての通し稽古も早々に終えました。今は細部を確認したり、深められる場所を探したりしている状況です。みんなが自分の役割を考え、「こうしたらもっと良くなるんじゃないか」という感覚で進めているのがいいなと思っています。初演組はもちろん、初参加の皆さんもそれぞれの角度で作品を深めているので刺激的な毎日です。
ジェイミン 参加を決めた時はとても不安でした。でも、皆さんがたくさん助けてくれて、私のペースに合わせてくれたり、温かい目で見守ってくれたりするおかげで、自信を持てるようになってきました。きっとうまくいくと思っています。

――初演から台本などが一部改訂されていますが、初演からの変化、今回の見所などはどう感じますか?
山口 台本も変わっていますが、キャストが違うので全然違う見え方になって面白いです。特に男性陣の印象は大きく変わったと思います。例えば、初演の丈ちゃん(丈晴)はちょっと天然で可愛らしい男性像でしたが、今回は美香を助けることに必死になるが故に周りが見えなくなる瞬間がある。家族のあり方がキャストさんによって変わるんだと感じました。
どちらが良いかということではなく、今回は美香を中心にした関係があると思います。また、美香と裁判で争う産科医・オオヤマ先生の部分はかなり変わっていて、オオヤマ先生の思い、意図しない出来事だということが強調されています。オオヤマ先生に共感する方もいらっしゃると思います。
ジェイミン 人にはそれぞれの人生があって、生き方も違って、それをどう見るか・受け取るかもそれぞれだというところが見どころだと思います。あと、「本当の幸せ」というのは本人にしかわからない。美香は娘である千璃の幸せのために頑張るけど、千璃にとっての幸せは最後まで本人にしかわからないと思うんです。それでもみんなが自分の人生の中で戦っていて、家族の在り方もそれぞれ。
一人ひとりの物語が大切だと思いますし、ちょっと矛盾してしまうけど、みんな結局は一人では生きていられない。作中に「人の心はまるで迷宮のようなもの」という歌詞があるんですが、その通りだと思います。たくさんの複雑なメッセージが込められた作品なので、見てくださる方も、自分や周りの人の生き方について考えさせられるんじゃないかと思います。

――楽曲やダンスの魅力についても教えてください。
ジェイミン 私は(桑原)まこさんの音楽稽古からスタートしたんですが、とにかく楽しかったんです。音楽がすごく心に染み込む感じがして、楽しい曲は本当に楽しいし、辛いところはその思いをきちんと表現できる。それでいてスタイリッシュなのが素晴らしいと思って、まこさんにも「すごく良い音楽ですね」と伝えました。自分の歌い方や表現にも合うので、とても心地よいです。あと、皆さんとの稽古が始まった時に、ハーモニーやそれぞれの声の混ざり合う様子も素晴らしいと感じました。
山口 ダンスは今回も演出の下司(尚実)さんが振り付けをしてくださっています。決まりきっておらず、日常のさりげない動きにもキーポイントがあって、あとは自由に表現するような感じです。魂の千璃ちゃんを演じる時はほぼダンスで表現するんですが、ダイナミックで元気でパワフルで、すごくピュアな存在を壊すことなく表現させてもらえるので、音楽と一緒で心地良いです。いい意味で頭を空っぽにできるのが楽しいです。
――作品の内容にちなんで、最近おふたりが家族や周囲の人の愛を感じた出来事があったらお聞きしたいです。
山口 私は高校生の時に上京して寮に入ったので、何かあったときは、しょっちゅう母に電話して相談していました。最近になって当時のことを思い出す機会がすごく増えたんですが、自分では覚えていないことも、母や姉はちゃんと覚えている。私自身のことを家族が覚えてくれているのが嬉しかったです。ネガティブになりそうな時に、「でもさ」と明るくしてくれるのが家族。愛だなと思います。
ジェイミン 今、東京に来ていて家族と離れているので、最初は少し寂しい時もあったんです。でも、稽古が始まった瞬間からこのカンパニーが愛に溢れていてすごく温かくて、今の私の家族だと思うようになりました。みんな応援してくれるし、失敗しても励ましてくれる。血の繋がりだけが家族ではなく、心が通じ合えば一つの塊になれるんだと思いました。
――最後に、楽しみにしている皆さんへのメッセージをお願いします。
山口 テーマだけ聞くと、少し重い話だと思われるかもしれません。もちろん軽い話ではありませんが、たくさんの温かいものを受け取ってもらえると思います。目の見えない千璃ちゃんがいつかこの作品を観たときに楽しんでもらえるよう、音楽や空気感、愛情を伝えたいという思いが下司さん、まこさん、(高橋)亜子さんにあるそうで、すごく彩り豊かな作品になっています。初演を超えられるようにみんなで力を合わせてお届けするので、ぜひ受け取りにいらしてください。
ジェイミン ののちゃん(山口)がいう通り、重苦しい作品ではないと伝えたいです。人生ではみんな色々な壁に出会うじゃないですか。それを乗り越えて生きていける、大丈夫だよという力をもらえます。本当に楽しい音楽やダンスもたくさんあるので、気軽に見に来ていただけたら。普段、私たちは目で色々な情報を吸収していますが、この作品の中では、千璃が色々な感覚で自分の心や魂を表して、美香や周りのみんなとコミュニケーションをとっています。見ている方も、忘れかけていた感覚についてもう一度考えられるかもしれないと思います。
取材・文・稽古写真撮影/吉田沙奈
スタイリスト/尾村あや
ヘアメイク/田中エミ
撮影/瀬津貴裕
<公演情報>
conSept2026:シーズンReBORNミュージカル『SERI~ひとつのいのち 2026』
日程:2026年2月19日(木)〜3月1日(日)
会場:あうるすぽっと(豊島区立舞台芸術交流センター)
[原作]倉本美香
[脚本・作詞]高橋亜子
[作曲・音楽監督]桑原まこ
[演出・振付]下司尚実
[出演]山口乃々華 / ジェイミン / 坂田隆一郎 / 廣川三憲 / 小林タカ鹿 / 岡村さやか / 金子大介 / 今森愛夏 / 尾川詩帆 / 加賀谷真聡
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/seri2026/
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