開幕直前! 花總まりがアクションノワール『破果』で新たなフェーズに挑む
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花總まり
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すべて見る“60代女性の殺し屋”を主人公に据え、その内面性とエンタメ感たっぷりのアクションシーンの両方を見事に描いて韓国でベストセラーとなったク・ビョンモの小説『破果(パグァ)』。世界13ヵ国で翻訳され熱い支持を受けている本作が、韓国の演出家でヒットメーカーのイ・ジナによってミュージカル化されたのは2024年。その待望の日本版が、3月7日(土)に一色隆司の演出で幕を開ける。主演の殺し屋・爪角(チョガク)には、数々の名作ミュージカルで主演を務めるほか、近年はストレートプレイやドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』『精霊の守り人』などでも高い評価を得ている花總まり。今回は実年齢より一回り以上も年上の役どころ、かつ初めての殺し屋役で、激しいアクションシーンにも挑戦する。2025年12月16日に行われた制作発表の直後に行ったインタビューで、本作へ懸ける想いを聞いた。

制作発表では、家族を殺されて爪角に復讐を誓う青年トウ役の浦井健治、爪角が所属するエージェンシーに所属するユン役の中山優馬、爪角の少女時代を演じる熊谷彩春のほか、爪角の初恋の人リュウと、彼に面差しの似た医師・カン博士の2役を演じる武田真治といった共演者のほか、イ・ジナと一色も登壇。花總は一色が共同演出を務めたドラマ『精霊の守り人』をはじめ舞台作品でも仕事を共にしており、今回の爪角役は一色からのたっての希望ということも明かされた。
「実際に(役づくりなどを)どう作っていくかというのは稽古に入ってからになると思うのですが、先ほど一色さんがおっしゃっていた『“今まで見たことのない花總まり”というのを今回は出していきたい』という言葉は、私の中でも印象に残っています。ふたりの想いの共通点はそこなので、そのゴールに向けて進んでいけたら」と花總は言葉に力を込める。
韓国版の舞台を観て、イ・ジナとも言葉を交わしたという花總。
「前半では爪角の過去が描かれて、後半からは現在の爪角の物語だったのですが、そこで彼女の押し殺してきたものが一気にあふれ出て、私自身も観ていて気持ちがブワッと持っていかれたのを覚えています。『破果』とは傷んでしまった果実という意味なのですが、爪角も人生の一番いい時期に人に喜んでもらえることを誰にも出来ないまま年齢を重ねてしまったわけですよね。このまま人生が終わっていくのかと感じていた時にトウとの出会いがあって、最後の命を懸けた闘いへと繋がっていく。ミュージカルではあるけれどアクションもあり、そのアクションも人生の深いところを描くためのもの。いくつもの要素が絡み合う作品で、いろいろな方に“刺さる”と思うので、ぜひ多くの方に観ていただきたいです」と花總は語る。
原作本の刊行は、2013年。日本語版の翻訳を手掛けた小山内園子氏によると、韓国では当初それほど話題にならなかったが、数年後に時代の変化に押される形で、爪角のキャラクターにSNS上で賞賛の声が集まり、人気になったという(日本語版の出版元・岩波書店の公式サイト『たねをまく』より)。年齢を重ねて心身の変化を感じている爪角は、現代の女性たちがリアルに共感する女性像だといえそうだ。
その点をどう思っているか花總に尋ねると、「もちろん、私にもその感覚はありますよ(笑)」という答えが返ってきた。
「肉体的に今までのようにはいかなくなって、いろんなことを考えるようになるとか、そういったことは本当に誰でも感じることだと思います。だからこそこれからどうしようと悩んだり葛藤したりするわけで、特に女性なら爪角のような60代でなくても、多くの人が感じるのではないでしょうか。そういう意味で、爪角に共感が寄せられるというのはすごく分かる気がします」という花總。制作発表での「(一色に)爪角という、これまでの私のイメージとは違う役を『見たい』と言っていただけたのは役者として本当に幸せなこと。今の私にとってプレゼントのような気がしています」という発言も、常に進化を続け、本作で新たなフェーズに挑もうとする花總の気持ちの表れといえそうだ。
爪角の心の中を表現する楽曲の数々
韓国では手掛けた作品のほとんどがロングランとなっているイ・ジナの演出は、音楽やダンス、舞台美術を積極的に融合しているのが特徴だ。本作の楽曲もロックやバラード、ヒップホップなど多彩な要素が盛り込まれているという。日本版でも、楽曲については韓国版がそのまま使われる予定だ。
「素敵な歌ばかりで、爪角も歌うシーンが多いです。先ほど、後半で気持ちがブワッと持っていかれたと言ったのですが、彼女の心の中が歌になり、叫びになっているのがすごく印象的でした」と花總は話す。
ただでさえミュージカルに出演する役者は体力勝負といわれるが、「そうなんです、歌の多さに加えてアクションもあるし、今回は本当に体力をつけてやらないと!」と、その言葉とは裏腹に楽しげな表情を浮かべる花總。
「爪角は何十年も殺し屋をやっているので、アクションひとつにしても身体に染み込んでないと説得力を出せないと思っていて。共演の方は皆さん身体能力が高そうな方たちばかりなので、その中でも爪角が一番のスペシャリストだというのが見えるところまでいかないといけない。内面もですが、そういう爪角のカッコいい部分も大切に役づくりしていきたいです」と最後まで笑顔で語ってくれた。

取材・文/藤野さくら
撮影/石阪大輔
〈公演情報〉
ミュージカル『破果(パグァ)』
〈東京公演〉
日程:2026年3月7日(土)〜22日(日)
会場:新国立劇場 中劇場
〈大阪公演〉
日程:2026年3月27日(金)〜29日(日)
会場:梅田芸術劇場 メインホール
〈福岡公演〉
日程:2026年4月4日(土)・5日(日)
会場:久留米シティプラザ ザ・グランドホール
[翻訳・訳詞]高橋亜子
[演出]一色隆司
[音楽]甲斐正⼈
[出演]花總まり 浦井健治 中⼭優⾺ 熊谷彩春 武田真治
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/musical-pagwa/
公演オフィシャルサイト:
https://musical-pagwa.jp/
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