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ゴジラはどこへ向かうのか? チーフ・ゴジラ・オフィサー(CGO)大田圭二氏インタビュー

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大田圭二氏(撮影:川野結李歌)

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日本が世界に誇るアイコン、日本の“顔”になる存在のひとつは、ゴジラではないだろうか。1954年に映画『ゴジラ』が公開され、日本中で大ヒット。2年後には海を超え、アメリカで公開され、ヒットを記録した。以降、ゴジラは新作映画で世界中のランドマークを壊し続けながら、ファンから愛されている。

なぜ、ゴジラはここまでの人気を得たのか? この先、ゴジラはどこへ向かうのか? ゴジラを手がける東宝の専務執行役員で、ゴジラ事業の総責任者チーフ・ゴジラ・オフィサー(CGO)を務める大田圭二氏に話を聞いた。

転機は2014年の『GODZILLA ゴジラ』だった。

生誕から71年。ゴジラ映画は現在も圧倒的な人気を誇り、本年11月3日(火・祝)には待望の新作映画『ゴジラ-0.0(ゴジラマイナスゼロ)』の公開が控えている。劇場映画の他にも実写・アニメーションを含む新たな映像コンテンツ開発や、ゲーム、イベントなど、様々なコンテンツを準備しており、その活躍範囲は拡大を続けている。大田氏はゴジラを世界的IPに育てるため、全世界のブランディング戦略を手掛ける人物だが、現在の活動について「本当に“ようやく始めた”という感じです」と笑みを見せる。

「以前は監督やクリエイターのみなさんに自由に撮ってもらうのが前提で、シリーズ全体のクオリティやブランドをコントロールするという発想はあまり強くありませんでした。ゴジラは長い目で見ると、“原点に戻ること”を繰り返しています。1984年の『ゴジラ』も、庵野(秀明)監督や山崎(貴)監督のゴジラも、初代のゴジラの世界観に戻って、人類が初めてゴジラに遭遇し、時代性・社会性を色濃く反映し、どう抗うかがテーマになっています。一方で昭和の時代にはゴジラが正義の味方になった時期もありましたし、平成にはゴジラと怪獣のバトルがシリーズになりました。そうやって様々なゴジラがあるのは、その時代の監督やクリエイターの意思を尊重してきた結果であり、すごく大切なことだと思います。ただ、「ゴジラ』シリーズという大きな流れの一貫性や、ビジネスとして継続できる仕組みが確実にあったのかといえば分からない部分もあって、我々は2004年に『ゴジラ FINAL WARS』を公開した後、一度、シリーズをストップさせました。

ギャレス・エドワーズ監督(左)の『GODZILLA ゴジラ』は、ゴジラとムートーの対決を描く超大作で、渡辺謙が出演。(Photo:AFLO)

転機になったのは、2014年にレジェンダリー・ピクチャーズ製作の『GODZILLA ゴジラ』が公開されたことです。イギリス出身のギャレス・エドワーズが監督した同作は世界中で公開され、大ヒットを記録しました。10年の空白があったわけですが、その殻を破るヒットになったわけです。そこで私たちはあらためて“ゴジラのビジネスを加速させていかなければならない”と強い使命感にかられました。当時、ゴジラのライセンスビジネスは非常に苦しい状態でした。ところが、レジェンダリー版の成功によって、全世界の観客がゴジラを待ってくれていたんだと再認識しました。そこで私たちは『ゴジラをこれまで以上に世界中で愛されるキャラクターにしなければならない』という目標を持ったのです。海外のクリエイターの方たちが私たちに火をつけてくれた、という感じです。

実はこの大ヒットの背景には、私たちが意図せず世界に種をまいていた出来事がありました。これは本当に恥ずかしい話なのですが、当時、私たちは過去のゴジラ映画を海外のケーブルテレビ局に低い条件で提供をしていたこともあり、海外のテレビでは何度も何度も繰り返し過去のゴジラ作品が放送されていた時期がありました。本来であれば放送回数に応じた対価を得るべきところでしたが、当時はそれを主張できるだけの交渉力が無かったんです。でも、そこで繰り返し放送された過去のゴジラ映画を観て育ったのが、若い頃のギャレス・エドワーズ監督であり、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』のマイケル・ドハティ監督だったわけです。彼らは、過去のゴジラ映画に影響を受けて育った。だから、ゴジラのことを深く理解し、非常に強いリスペクトを持っていました。だからこそ“ツボをおさえた”映画づくりになり、キャラクター造形や脚本でも私たちからNGを出すことはほとんどありませんでした。これは非常に重要な転機だったと思います」

ゴジラをもっと身近な存在にしたい

その後、ハリウッドでは「モンスターヴァースシリーズ」としてレジェンダリー版ゴジラの新作が次々に登場し、日本では2016年に庵野秀明が脚本・総監督を務めた、映画『シン・ゴジラ』が登場。日米が並行して新作を製作するようになったが、大田氏は「みなさんとゴジラの接点=タッチポイントをもっと増やし、これまで以上に身近な存在にしていきたい」と語る。

「日本版のゴジラ作品で言えば、『ゴジラ FINAL WARS』から『シン・ゴジラ』までには約12年の間隔があり、さらに次の『ゴジラ-1.0』までも7年を要しました。こうした状況では、観客がゴジラに触れる機会が“数年に一度”になってしまいます。

だからこそ私たちは、ゴジラの世界観や価値がぶれないよう全体を統括しながら、今後も個性ある監督による劇場映画を継続していきますし、同時に、ゴジラ部が企画・推進する作品も積極的に展開していく方針です。さらに映像コンテンツに限らず、多様なコンテンツの開発も進め、ゴジラに触れる入口を増やすことで、みなさんとゴジラが出会う機会を創出し、とりわけ若いゴジラファンの拡大につなげたいと考えています。これまでの“映像コンテンツビジネス”から、より持続的な“IP(知的財産)ビジネス”へと進化させ、映画興行という一過性の波に依存するのではなく、IPそのものの価値を最大化するために、戦略的な施策を一層強化しています」

その一例として挙がるのが、テレビアニメ「ちびゴジラ」ではないだろうか。2018年に誕生した愛らしいキャラクターで、2023年からは新海岳人監督による『ちびゴジラの逆襲』が放送中だ。

「ちびゴジラは、子どもたちが最初に出会う“ファースト・ゴジラ”になってほしいと思っています。現在は『おはスタ』で放送されていますが、クオリティも高くて、ちょっとブラックユーモアもある。最初は周囲から不安の声もあったのですが、まずは小さな子どもたちにゴジラを好きになってほしいという想いがありましたから、Suicaのペンギンでもお馴染みの坂崎千春さんに絵本を描いていただいて、そこからアニメーションになりました。キャストも本当に豪華な方が揃っていますし、アニメーションの完成度も高い。私はTOHO animationも担当しているのですが、創立のときから"とにかく良いものをつくる”ことを掲げてきました。いつも潤沢な予算があるわけではないものの、制作費を抑えるより、良いスタジオ、良いクリエイターとタッグを組んで高い完成度を目指したい。『ちびゴジラの逆襲』もその流れの中にある作品です。

映画もある、アニメーションもゲームもある。そうやってゴジラコンテンツに触れた、子が親になり、その親が子へと、世代を超えて楽しんでもらえる状況をつくっていきたいですし、ファンの方が混乱しないのであれば、いろんなゴジラがあっていいと思っています」

ゴジラが海外の人を出迎え、見送る

羽田空港第3ターミナルから見えるゴジラ

現在、ゴジラはスクリーンやモニターを飛び出して、私たちの日常にも進出している。昨年12月に「日本を訪れるすべての人々をゴジラが出迎え、そして、日本を出発する際にはゴジラが見送る」をテーマに、羽田空港第3ターミナルに全長約40メートル、高さ約9メートルの巨大ゴジラが登場。世界の人々を出迎える“日本の顔”としてゴジラが選ばれたのだ。

「手前味噌になりますが、ゴジラは世界でも人気のある、認知度の高いキャラクターだと思います。だからこそ、ゴジラは街のランドマークになる。巨大な像になったときに、その大きさやスケールが、ゴジラというキャラクターを象徴するものになっていると思います。最初は新宿東宝ビルにゴジラヘッドをつくりました。あれは初代に登場するゴジラと同じ高さ50メートル。ニジゲンノモリ(兵庫県立淡路島公園内のテーマパーク)にある「ゴジラ迎撃作戦」では『シン・ゴジラ』のゴジラが、胸あたりから頭にかけて実物大で再現されております。コロナ禍にオープンしたので当初は少し心配したのですが、現在は家族連れをはじめ、多くの方に来ていただけております。そして羽田空港第3ターミナルにあるのは、幅40メートル、高さ9メートルと屋内のモニュメントとしては世界最大。日本を代表するキャラクターとして訪日される方をお出迎えする存在になってほしいですし、観光スポットとして日本にやってくるきっかけになってもらえればと思っています。今後はこのようなゴジラのモニュメントを海外にもつくりたいと思っています。“世界中のいろんな場所に、ゴジラが出現してもいい”そんな構想も進めています」

これからは、世界で同時にゴジラを楽しむ時代に!

日比谷シャンテ前広場のゴジラ像は『シン・ゴジラ』モデルに。旧ゴジラ像はTOHOシネマズ日比谷内に移設された。(Photo:AFLO)

ゴジラがこれまで以上に世界各地に進出していく最大の理由は、映画やドラマなどの上映・視聴環境が変化し、世界中の人々が同じゴジラ作品を、同じタイミングで楽しむ時代がやってきたからだ。

「これからはゴジラ映画も世界でほぼ同時に公開されることになると思います。『ゴジラ-1.0』は北米であれだけのヒットを記録しましたし、新作への期待も極めて高いと思います。『ゴジラ-0.0』は北米では日本とほぼ変わらないタイミングで公開になります。ですから、これまでは日本の方にどう知ってもらい、好きになってもらうかを考えてきましたが、これからは世界中の人たちにゴジラのことを好きになってもらいたい。そのために何ができるのか?という発想で、日本で培ってきた取り組みを世界各国にローカライズし、広げていきたいと思っています。

ゲームやアニメーションは、すでに日本と海外がほぼ同じタイミングで楽しむスタイルが定着し始めています。同時性があることで盛り上がる部分もあると思いますから、ゴジラもそこにアジャストしていきたいと思っています。映画もなるべく間を空けずに公開してきたいと思っていますし、これから開発していく様々なプラットフォーム向けの映像コンテンツも、可能な限り世界で同時に公開したい。そのための準備を進めているところです」

世界中の人たちがそれぞれの場所でゴジラを愛し、同じタイミングで新しい映画・映像を観て盛り上がることができる。日本で生まれた大怪獣は今では世界の誰もが愛し、熱狂するキャラクターになったのだ。だからこそ大田氏は“この先”を見据えて、様々なプロジェクトを進めている。

「ウルトラマンやガンダムの強みは作り続けていることだと思います。でも、これまでのゴジラは映画が中心で数年に一作というペースだった。だからこそ、これからは公開のタイミングをコントロールしながら、多様なコンテンツを作り続けていきたいと思いますし、劇場映画だけでなく長い時間をかけて育てていくシリーズものがあっても良いと思っています。

私たちはこれからもゴジラを続けていきたい。長く続くものにしたいんです。そのために2019年に全世界におけるゴジラのブランドコントロール担うゴジラルームを立ち上げ、2025年にはゴジラ部へと昇格させました。ゴジラは東宝の宝であり、日本の宝だと思っています。にもかかわらず、その名を冠した組織が社内に存在しないのはおかしい。だからこそ、ゴジラルームとして始め、段階的に体制も強化しながら、部へと発展させてきました。この部は未来永劫ずっと存在すると思っていますから、世代交代しながらゴジラを作り続け、ファンと共に成長していくことが大事だと思っています。そのためにいま最も重要なのは、若いファン、そして新しいファンを増やしていくことだと思っています」

紹介したとおり、ゴジラは生誕から70年を突破し、生誕100年の節目がすでに見えつつある。これからもゴジラの存在は世代を超えて受け継がれることになるだろう。先ごろ、新紙幣に葛飾北斎の浮世絵『冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏』が描かれ、話題になったが、いつか日本の紙幣にゴジラが登場する未来もやってくるかもしれない。

撮影:川野結李歌

大田圭二
1989年東宝入社。2010年映像事業部部長、13年取締役、25年より専務執行役員(現任)。17年よりチーフ・ゴジラ・オフィサーを務める。今後のゴジラを語る上で欠かすことのできない最重要人物。

『ゴジラ-0.0』
11月3日(火・祝)公開
https://godzilla-minuszero.toho-movie.jp/