『プロジェクト・ヘイル・メアリー』の物語で最も大事な“絆”、それは「デジタルに頼っていては表現できなかった」
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すべて見る注目されたのが、あのオモチャのレゴを映画化した『LEGOムービー』(14)。そしてアカデミー賞を獲得したのが、製作を担当した長編アニメーション『スパイダーマン:スパイダーバース』(18)。こんなユニークなフィルモグラフィを誇る二人組監督、フィル・ロード&クリストファー・ミラーが今回選んだのは、同名ベストセラーSF小説の実写映画化『プロジェクト・ヘイル・メアリー』。リドリー・スコットの大ヒット作『オデッセイ』(15)の原作者、アンディ・ウィアーの長編3作目だ。
「僕たちはアンディの書くSF小説が大好きなんだ。彼はいつも、地に足ついた興味深いアイデアをたくさん盛り込みつつ、知的でエモーショナルな物語を書く。主人公がありったけの科学的知識を導入して窮地を抜け出そうとするんだけど、アンディはその行為を称えている。それって胸が熱くなるし素晴らしいと思うんだ」(ミラー)

実のところこの組合せ、映画ファン的にも原作ファン的にも文句ナシ。原作は実際の科学に基づいたハードSFにもかかわらず、驚くほど人間味にあふれ、笑いもてんこ盛り。未知の生命体により存亡の危機に陥った人類と地球を救うため宇宙に旅立ったのが、何と中学校の科学教師というユニークさだ。まさにロード&ミラーにはぴったりの物語と言っていい。
「もうひとつ、この小説に惹かれたのはフィジカルなフィルムメイキングに挑戦させてくれそうだったから。宇宙船の回転の仕方や重力のレベル。そういうのは原作以上にディテールにこだわったし、主人公の教師グレース(ライアン・ゴズリング)が宇宙船の壁面に映し出す地球の自然。あれもグリーンスクリーンを使って合成したのではなく、実際にあの壁面に映し出したんだ」(ロード)
宇宙飛行士たちのメンタルヘルスのために使われるこのシステムも原作には書かれていなかった要素。とても原作に忠実なのだが、そういう映像的なインパクトに注力し、映画としてのダイナミズムを表現している。

そして、最も重要なのはグレースが“ロッキー”と名付けたエイリアンの存在。彼らは宇宙の果てで出会い、一緒に手を組みそれぞれの母星を救おうと大奮闘する。注目すべきはロッキーの容姿。顔のない岩の塊にクモのような足がついたルックスという、これもまた極めてユニークなのだ。
「ロッキーもCGIなんかじゃなくパペットなんだ。僕たちは原作を読んだときから絶対にそうすると決めていた。撮影時は、ロッキーのメイン・パペティアが声も担当してくれてて、実際にライアンと会話していた。彼がテニスボールを見ながら演技するなんてことは一度もなかったんだから! なぜって、この物語で最も重要なのはグレースとロッキーの絆。それがどうやって紡がれていったのか、デジタルに頼っていたら表現できるはずないんだ」(ロード)

アメリカではグレースを演じたゴズリングの演技が絶賛されている。というのも彼は宇宙船ヘイル・メアリー号で生き残った唯一のクルー。回想シーンを除けば、共演者は本当にロッキーのみなのだ。かなり変わったシチュエーションなのだが、その演技は自由でのびのびとし、さらに大いに笑わせてくれる。
「宇宙飛行士もカウボーイと同じようにヒーローとして描かれる場合が多いだろ? でも、僕たちはグレースを、そういうヒーロー然とした宇宙飛行士にはしたくなかった。いわゆるジョン・ウェインタイプじゃなく、いうなればブッチとサンダンス(『明日に向って撃て!』でポール・ニューマンとロバート・レッドフォードが演じたアウトロー)タイプ。賢くて賢明だけど、恐ろしさを感じ脆いところもある。ヒーローではまったくなく、とても人間的なキャラクターなんだ。そういうグレースを、本当にライアンはよく演じてくれた」(ミラー)

「僕たちは、宇宙SFって西部劇に似ていると思っている。“フロンティア”がキーワードになっているところも、雄大な自然が重要な役目を果たすところも。宇宙の描写を観た観客には、“壮大な宇宙と比べて、自分はなんて小さいんだ。それでも、そんな宇宙と自分はつながっている”ということを感じてもらえれば嬉しいよ」(ロード)
大画面だからこそ味わえる迫力とリアルな科学的描写。そして何より胸が熱くなる友情物語。映画の魅力が詰まった本作にいま、アメリカが大絶賛を送っている。果たしてどんな数字を叩き出すか、気になるではないか!
取材・文:渡辺麻紀
<作品情報>
『プロジェクト・ヘイル・メアリー』
3月20日(金・祝)公開
公式サイト:
https://ProjectHM.movie
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