茅島みずき×小栗基裕(s**t kingz) 谷崎潤一郎原作『春琴抄』で体現する“理解”を超えた愛の形
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インタビュー
(左から)小栗基裕(s**t kingz)、茅島みずき
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すべて見る盲目の琴三絃奏者・春琴と、彼女に仕える丁稚・佐助の美しくもいびつな“愛”を描いた谷崎潤一郎の代表作『春琴抄』が新たに舞台化される。春琴を演じるのは圧倒的なオーラと存在感を放ち、21歳にして多数のドラマで主演を務めている茅島みずき。佐助を演じるのは、ダンスパフォーマンスグループs**t kingzのメンバーとして活躍しながら、舞台『未練の幽霊と怪物―「珊瑚」「円山町」―』で主演を務めるなど俳優としても活躍の場を広げる小栗基裕。春琴と佐助の愛の形を舞台上でどのように表現するのか? 茅島と小栗が意気込みを語ってくれた。
――過去に幾度も映画化、舞台化されてきた谷崎潤一郎の名作。出演が決まった際の率直な気持ちをお聞かせください。
茅島 そもそも舞台をやらせていただくのが5年ぶりだったので、不安が大きかったです。加えて『春琴抄』ということで、お話をいただいてから、これまで多くの方が素敵に演じられてきた舞台や映画を拝見させていただいて、「これを私が?」というプレッシャーも大きかったです。
初舞台の『ロミオとジュリエット』の時は高校生。上手と下手の違いもわからない状態で(苦笑)、とにかくがむしゃらに頑張りました。そして、稽古を通してじっくりと作品に向き合う時間だったり、お客さまのダイレクトな反応など、舞台作品にしかない面白さ、魅力をたくさん感じることができました。今回も緊張はありますが、しっかり頑張りたいと思います。
小栗 僕は谷崎潤一郎の作品に触れた経験がほとんどなかったんですが、お話をいただいてシンプルにすごくワクワクしました。日本の文学作品の舞台に携わらせていただくのも初めて。小説の登場人物たちがどのように舞台上で命が吹き込まれていくのか、新たなチャレンジにやりがいを感じています。
――原作小説、そして演出も務める海路(みろ)さんの上演台本を読まれていかがでしたか?
小栗 すごく新しい『春琴抄』の捉え方をしていて、読み継がれてきた名作というところにとどまらず、現代の視点から『春琴抄』を捉えて言語化しているという印象がありました。ただ、台本を読んだだけですと「これ、舞台でどうなるのかな?」と読めない部分が多く、そのゆえに楽しみも多いです。
茅島 小栗さんがおっしゃる通り、いままでにない『春琴抄』になるのでは、と思いました。この物語は、演出家さんや俳優さんによって、まったく見え方が異なってくる作品だと感じていて、私たちならではの新しい『春琴抄』をお届けできたらと改めて思いました。

――台本を拝見すると、語り部的な存在である“私”(水田航生)が、春琴と佐助の行動や関係性、状況を説明し、それに合わせてお二人が各シーンを演じるという構成になっていますね。
小栗 そうなんです。見せ方としてすごく面白いんですけど、その中できちんと、春琴と佐助を“生きている”存在として見せなくてはいけないのが難しい。お客さまに“私”ではなく、春琴と佐助に感情移入していただけるようにしたいと思っています。
茅島 “私”の語りに私たちが負けてはいけないし、ご覧になったお客さまの感想が「“私”のセリフが多かったね」となってはいけない。稽古でもその部分はいつも念頭においています。
――春琴という人物を茅島さんはどのように捉えていますか?
茅島 私の中で春琴の印象は少しずつですが変わり続けています。最初に原作を読んだ時は、春琴と佐助の関係性が共依存のように見えましたし、春琴はすごく気が強くて「なんて意地悪なんだろう」というのが正直な印象でした(笑)。でも、稽古で話し合いながらつくっていくうちに、実はものすごくピュアな女の子なのでは、と思えてきたり……。稽古場でみなさんの言葉を聞くたびに「そういう見方もあるのか!」という学びの連続です。目の不自由な人物を演じるのも初めてですから、その難しさも感じながら、私なりの春琴象を目指そうとしています。
――小栗さんが佐助や二人の関係について感じていることは?
小栗 いま、みずきさんが言った「共依存」という表現がとても的を射ていると思います。純粋な愛だけでなく、もうそれなしでは生きていけない状態に陥ってしまっている。最初はそんなつもりではなかったはずの二人が、普通に考えて理解しがたいような不思議な関係に陥っていて、でも二人にとってはそれ以外の選択肢がない。すごく危険な関係でもあるし、だからこその絆であったり、二人にしかわからない想いみたいなものがそこにあると感じています。

不朽の名作が新たな魅力をまとうとき
――春琴、そして献身的に春琴の世話をする佐助。舞台ではお二人の信頼関係が大切になってくると思いますが、ここまで稽古を重ねてこられて、お互いの印象などをお聞かせください。
茅島 とても大変な稽古ですので、「頑張ろう!」と絆が深まっているところはすごくあります(笑)。以前、私が高校サッカーのお仕事をやらせていただいた時、s**t kingzさんとコラボさせていただいたんですが、その時から本当に素敵な方で、いつも優しく声をかけてくださる。今回も稽古初日から安心感がありましたし、何でも相談できるので、それこそ春琴のように頼りっぱなしです(笑)。

小栗 みずきさん大人っぽい印象が強いですけど、お話しするとかわいらしいところがたくさんあって、ホッとします。今回、舞台上でのみずきさんは目をつぶっている状態がほとんど。「絶対にケガをさせるわけにいかないぞ」という、まさに佐助の気持ちと重なる部分が多いです。

――先ほど「理解しがたい」という言葉も出ましたが、そんな二人の姿を描いたこの『春琴抄』が長く読み継がれ、何度も映像化、舞台化されてきた理由、本質的な魅力はどんなところにあると思いますか?
茅島 あらためてお伝えしますと、台本、演出、および出演者によって物語に新たな魅力が生まれていく。そして何より春琴という子が、掘り下げていけばいくほど魅力的だと思います。どこまで行ってもどういう子なのか掴み切れない…春琴(苦笑)。二人の関係性も不思議で、最初は「共感できない」と思っていましたけど、人間って誰かに依存しているからこそ、少なからず理解できる部分があって、誰もがどこかに共感できる部分がある作品なのかなと思います。
小栗 いまの時代、みんな“わからなさ”をなくそうとして、自分がわかるものに当てはめて物事を見ようとして、少し窮屈な世の中になっている気がしています。無理に答えを出そうとしないで、わからないままでいいし、人によって答えが違っていていい。それをこの作品を通して確認できる気がしています。誰も見たことのない『春琴抄』をお届けできると思いますし、お客さまと一緒にこの作品をつくっていただけたらと思います。

取材・文/黒豆直樹
撮影/石阪大輔
〈公演情報〉
『春琴抄』
日程:2026年4月29日(水)~5月6日(水)
会場:新国立劇場 小劇場
[原作]谷崎潤一郎
[上演台本・演出]海路
[出演]茅島みずき 小栗基裕(s**t kingz) 水田航生 古屋呂敏 中山敬悟 永井秀樹(青年団)
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/shunkinsyo/
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