今夏待望の再演! 『無伴奏ソナタ -The Musical-』主演、平間壮一インタビュー
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平間壮一
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演劇集団キャラメルボックスの代表作として人気を博した演劇作品が、2024年にミュージカルとなって再誕。2年の時を経て今夏、待望の再演の幕が上がる。アメリカの作家オースン・スコット・カードの短編小説を原作に、ストレートプレイ版、そして初演も手掛けた成井豊が脚本・演出・作詞を担当。すべての人間の職業が幼児期の資質によって決められ、それを幸福とした世界を背景に、音楽の天才として見出された男、クリスチャン・ハロルドセンの壮絶な人生が描かれていく。
初演から続いてクリスチャンを演じるのは、話題の舞台を駆け巡って目覚ましい活躍が続く俳優、平間壮一だ。「あの世界に戻るには勇気がいる」と語る劇空間に再び挑む、今の心境を聞いた。

――2年ぶりの再演です。初演の時点でもう再演のお話は出ていたのでしょうか。
平間 楽日に近づくにつれて「再演はしたいね」という話はカンパニー内で出ていました。僕は「やるなら、なるべく早くやりたい」と。あの環境にもう一回、ゼロから飛び込んでいく勇気がない気がしたので、初演の時の感覚を忘れないうちにやりたかったんです。でもこの2年のあいだ、いろんな舞台を経験して当時の感覚も抜けつつあったので。だから「再演をやるよ」と聞いた時は、ついに来たな〜! っていうのが一発目の感想でした。
――お話のように平間さんは休む間もなく話題の舞台に立ち続けている印象がありますが、その中でも本作は、ご自身にとって特別な意識があるようですね。
平間 そうですね。ショックを受けたり、傷ついたり、幸せな部分もあったりと、いろんな出来事が一気に飛びこんで来て、おおいに感情が揺さぶられるストーリー展開なので。子供の頃に自分に向いている分野がわかって、無駄なお金も時間もかけずにそれをやらせてもらえるというこの物語の設定を、最初は僕、幸せなことでは!? と思ったんです。でも蓋を開けたらやっぱりそれは違っていて。人間にとって悩んだり苦しんだりすることも、幸せの一つということなのかなと。「すべての人にとって幸せ」というのは難しいんだなと思う、そういうお話ですよね。
――あらためて台本を読まれましたか?
平間 いえ、まだこれからです。ふとした時に『無伴奏ソナタ -The Musical-』の世界を思い出したりしていますが、今は“平間壮一を整える時間”かなと。以前は、どんなお芝居にしても楽しむ気持ちを持とうとしていたんですけど、ある時、いや、楽しいだけで芝居をやっていない、と言ってもいいんじゃないかなと思い始めて。
この作品はけっして楽しいだけではやっていられないし、クリスチャンを演じていて「楽しい」と言うのは、ちょっと疑ってしまうかもしれないですね。あくまでも観てくださる方々に楽しんでいただけたら、それでよくて。
基本的にクリスチャンは、周りの方々のアクションを受け取って心を動かしていくキャラクターなんです。今回はキャストも結構替わるので、また新たな受け取り方をして、どう感じていくのかな……という点においては楽しみではあります。
――確かに、クリスチャンの状況が次々に変わっていき、そこで出会う人々によって彼の内面も変化していきます。主軸にして難しい役どころですね。
平間 ただ僕、よく人から言われるのは、あまり内側に入り込めないタイプらしいんです。たとえば運動会で「みんな、頑張ろうぜ!」という雰囲気でも、ちょっと外から俯瞰して見ているタイプ。全力で熱く「絶対勝つぞ〜!」みたいな感じではないんです。

――ご自身でもその自覚はあると?
平間 あります。周りに合わせてはいるけれど本気でそこまで思ってない、みたいなところがあって(笑)。お芝居をやり始めた時も、自分から何かを発するより、見ていて、黙って影響を受けるほうが好きだったり。だから苦手な部分にも気づけましたね。意志をはっきり伝えなきゃいけないパワフルな役を演じるには、本当に全身全霊で表現していかないとパワーが足りないということに気づきました。
――となると、クリスチャンは共感する部分が多いキャラクターでは。
平間 多いですね、自分に重なる部分が結構あったりします。僕自身はもともとダンスが自分の武器だと思っていて、今でも取り上げられたくないものはダンスですし。また中学2年の時に上京して来たので、そこも幼い頃に両親から引き離されたクリスチャンと似ていて。親の気持ちを思うと、もし自分に子供ができたとして10年ちょっとしか一緒にいられないなんて寂しいな〜とか思っちゃいますね。
――そんなに早くから表現者になりたかったんですね。
平間 ダンスを踊っていたかった、というのが最初で、たまたまきっかけがあって上京してきたんですけど、そこで「踊れる仕事」としてやったのがミュージカルのアンサンブルだったんです。お芝居なんてまったくやったことがなかったけど、踊れる! と思って稽古場に入ったら、歌え、芝居しろ、全部やれ! って言われて、もう頭の中がウワ〜ッてなってました(笑)。
悔しかったですよ。一人だけ稽古終わりに呼ばれて、みんなの前で「お前だけ芝居も何もしていないぞ」って言われて。みんなからは「アイツ、ダメ出し食らってるわ〜」みたいな冷ややかな目を食らい(笑)。歌もやったことがなくて、毎回稽古場で歌唱指導の先生に「下手クソ」と言われながら声を出していましたね。
――そこから始まり、今や途切れなく舞台に立つ活躍ぶり。素晴らしいですね。
平間 嬉しいです。メッチャ苦しかったけど、あの時期がなかったらたぶん今やれていないだろうなって思います。
新たな気持ちで臨む再演
お客さまそれぞれの心に寄り添えるように
――初演で好評を得た作品に、再び挑むことへの意識をお伺いしたいと思います。
平間 まずは、もう一度見たいという気持ちを届けてくださった方々に感謝します。再演は毎回、難しいと思います。やはり初演と比べてしまう自分がどこかにいて、前回はこういう流れだったなとか、ここでこういうことを受け取っていたなとか。その記憶が結構邪魔だったりするんです。でも、演じる人が変わると作品は本当に変わりますから。今回はそこが楽しみでもあり、怖くもあり、です。
――先ほどのお話の通り、“面白い”の一言では言い表せない、何とも不思議な魅力を持った作品です。平間さんの心に響くポイントは?
平間 僕好きなシーンは、レストランにピアノがあって、店のオーナーが「弾けよ」と言ってくれたからクリスチャンが弾くんですけど、演奏が上手過ぎて、料理じゃなくてクリスチャンの音楽目当てでお客さんが押し寄せてしまう。そしたらオーナーがよく思わなくて、彼には何も言わずに結局追い出してしまうんです。その嫉妬心がすごく人間っぽいなと。自分の思いを直接クリスチャンに言えばよかったじゃないですか。「お前のおかげでお客さんは来たけど、俺の料理を食べてほしいんだよ」って。ダサくてもいいから自分の気持ちを素直に言ってみよう!って。

――思いがけない視点でした(笑)。ご自身は素直に言えるほうですか?
平間 言えます。自分から遠ければ遠い人ほど言えますね。近い人になればなるほど言いにくくなってきます……ってそれはみんなそうか(笑)。でも、極力言うようにしています。同世代の役者さんの芝居についても、「〇〇さんの芝居、カッコいいと思っちゃって悔しがってます」って(笑)ちゃんと素直に言うようにしています。
――本作から得たこと、気づいたことなどはいかがですか?
平間 ラストの、クリスチャンの言葉には表せない、何とも言えない感覚ですかね。生きていてよかったと思いながら、どこかで虚しさを感じているような……。あの言葉にできない感じを味わえたことで、『無伴奏ソナタ -The Musical-』をやってよかったって思います。わからないこともあるんだなと、作品からもキャストからも教わりました。
それまでは答えしか求めてなかったというか、「これはこうなっていて、こういう芝居だから僕はこういう演技をする」と決めて本番の舞台に立っていたように思います。『無伴奏ソナタ -The Musical-』はそれが無理で、悩み続けていたんです。でも「わからないまま立っちゃえばいいよ」って教えてくれたのがこの作品でした。
――今回の再演でも、同じようにずっと探り、悩み続けていくことになるのでしょうか。私たち観客もいろいろと考えを巡らせる、その機会を与えてくれる作品だと感じます。
平間 そうですね。結局、幸せを求めるためには、苦しさや悔しさといった反対の部分も必要なのだろうなと。人間って複雑でややこしいなと、あらためて考えさせる作品ではありますね。観客のみなさんに対しては、今回に関しては「何かを伝えなきゃいけない」というのもやめようかなと。『無伴奏ソナタ -The Musical-』をシンプルに観た時に何を思うんだろう!? と、自分でも今もわかっていなくて。「人に優しくしよう」でもいいですし、「後悔しないように生きよう」でもいい、感じることは本当に人それぞれでいいと思います。みなさんの日々のストレスや痛みを代わりに背負って(笑)クリスチャンとして生きよう、頑張っていこうと思っていますので、ぜひ劇場にいらしてください。

取材・文/上野紀子
撮影/荒川 潤
STORY
すべての人間の職業が幼児期のテストで決定される時代。クリスチャン・ハロルドセンは生後6ヶ月のテストでリズムと音感に優れた才能を示し、2歳のテストで音楽の神童と認定され、両親と別れて森の中の一軒家に移り住む。そこで自分の音楽を作り、演奏すること。それが彼に与えられた仕事─彼は「メイカー」となった。メイカーは既成の音楽を聴くことも、他人と接することも禁じられていた。ところが、彼が30歳になったある日、見知らぬ男が森の中から現れた。男はクリスチャンにレコーダーを差し出して言った。「これを聴いてくれ。バッハの音楽だ……」
〈公演情報〉
『無伴奏ソナタ -The Musical-』
〈東京公演〉
日程:2026年7月17日(金)〜26日(日)
会場:サンシャイン劇場
★ぴあ全館貸切公演 7/20(月・祝)13:00
〈大阪公演〉
日程:2026年8月8日(土)・9日(日)
会場:クールジャパンパーク大阪 WWホール
[原作] オースン・スコット・カード
[翻訳] 金子 司
[脚本・演出・作詞] 成井 豊
[音楽] 杉本雄治
[出演] 平間壮一 多田直人(キャラメルボックス) 真瀬はるか 熊谷彩春 長江崚行/西川大貴/ 畑中智行(キャラメルボックス) 原田樹里(キャラメルボックス) 大久保祥太郎 西野 誠 町屋美咲
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/sonata2026/
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