【インタビュー】世間のイメージをぶち壊す“ロックな”木村多江が見られる? 舞台『わたしの書、頁を図る』
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インタビュー
木村多江
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すべて見る木村多江が初主演を務める舞台『わたしの書、頁(ページ)を図る』が、2026年7月3日(金)〜19日(日)、紀伊國屋ホールにて上演される。『我ら宇宙の塵』で第31回読売演劇大賞の3部門を受賞するなど、注目を集める小沢道成が作・演出を務める本作で木村が演じるのは、変哲のない退屈な日々を過ごしている図書館職員の町子。図書館に集う利用客を妄想混じりに見つめていた町子だが、ある日、映画を撮っているという青年・慶太が彼女の前に現れたことで彼女の日常に変化が……。小沢から主演を熱望され、出演を決めたという木村が本作への思いを語ってくれた。
――小沢道成さんとプロデューサーによる打ち合わせで「町子役は木村さんに」と一致したそうですが、オファーが届いた際の心境は?
木村 単純に嬉しかったです。お話をいただいて「あぁ、こういうものを私はやりたかったのかも」と思いました。
――具体的に「こういうもの」というのは?
木村 小沢さんが「ロックな木村さんを見たい」とおっしゃったんですけど、私自身は、わりと「ロックに生きよう」と思っているんです、こう見えて(笑)。小沢さんの言葉に私の中のロック魂がブルブルっときたんじゃないかと思います。「これは私のためにある役なんじゃないか?」と急にフックが掛かった感じです。
――現時点で町子という役をどのように捉えていますか?
木村 多かれ少なかれ、どんな方でも、ある出来事をきっかけに自分の見える世界が変わること、物事の捉え方や人間関係、自分の存在の仕方が変わることってあると思うんです。
傍から見れば「そんなことで?」と思えるようなことなのかもしれませんが、町子は、ある出来事をきっかけに自分が傷つかないように鎧を着るようになり、その鎧が身体の一部になってしまって「もう変わらなくてもいい」という気持ちで自分を守って生きている人だと思います。それが、ある男性が現れたことで「あ、鎧にはチャックがついていた!」「これ、脱げたんだ?」と少しずつ気がつき始める。とはいえ、もはや鎧が肉になっているから、血が流れて、痛みや苦しみがあるんですけど、それが時に滑稽で、すごく愛おしい人だなと捉えています。

――小沢さんは、木村さんと会ってお話された様々な内容を町子に反映させたとのことです。木村さんが戯曲を読んで「これは私だ」と感じるような部分、町子の中にご自身が見えた部分はどんなところでしょうか?
木村 町子は自分を守るため、傷つかないために他人との関係をできる限り絶って生きているんですけど、私はそういうわけにはいかず、役を演じる上で自分と向き合わないといけないし、自分の嫌なこととか、もう蓋をしたくなるような見たくないところもグーっとフタを開けてえぐり出して、魂を削るつもりでお芝居をしなくてはいけない。私は20代から芸能の世界にいて、仕事の現場では連絡先も交換せず、ごはんに行くようなこともなく、そうやって自分を守って鎧を着続けてお芝居をしていた時期があったので、町子の気持ちがすごくよくわかりました。
――町子の思いが、木村さんの心に届くように?
木村 劇中、町子の妄想で「ここ(図書館)に来ている人たちは、現実から逃れたい人たちで、私はその人たちに良い場所を提供してあげている」ということに満足しているというシーンがあります。やっぱり人は、自分が存在している意義があると思いたいし、自分が誰かの役に立っている、自分に生きている価値があると思いたいもので、町子はそう思って自分を納得させている。でも蓋を開けてみたら「あれ? 別にそこまで必要とされてないんじゃない?」みたいなところもあって(笑)。
私も役者をやることで存在意義を確認したいし、自分が「生きていていいんだ」と納得したいし、何かの役に立ちたい――そういう部分は共通していて、ただ私のほうが、上手に心の蓋を開けて、思いを吐き出すチャンスがあったし、いろいろな価値観を持った人たちを演じるために視野が広がって、許容できることが増えたり、変わっていくチャンスがあったというだけなんです。
俳優・木村多江の表と裏?

――いまお話に出た、図書館に集う常連の利用者に対する町子の勝手な妄想と、徐々に明らかになっていく実際の本人たちとのギャップは、本作の面白さのひとつだと思います。木村さん自身、「幸薄そうに見える」などと、勝手な妄想とも言えるイメージを世間に抱かれてきた経験がありますが。
木村 小沢さんが私を見て、きっと表の部分と裏の部分が見えたんじゃないですかね(笑)。
――「ロックな木村さんが見たい」という言葉もその表れなのかもしれませんね。
木村 そうかもしれないですね。人はみんな、多少なりとも裏表があるはずで、裏の部分も表に出すのが好きか? 出さないのが好きか? という違いだと思います。今回、小沢さんが“そっち”の木村多江を見てみたいと思ってくださって、逆に私は自分を出さなきゃいけないという大変さもあります(苦笑)。 私自身、世間からは「幸薄そう」と言われてきましたけど、友達や周りのひとからはずっと「詐欺師だよね」って言われてきたんです(笑)。それはそれで面白いなと思っていますし、みなさんが勝手にイメージしてくださると、真逆の役をやれば「意外性がある」と言っていただける。そういう部分は私が面白がっているところでもあり、小沢さんも見せたかったのかもしれません。「本当は詐欺師でしょ?」って(笑)。
――今回、本や図書館という場所が重要な要素となっていますが、木村さん自身、本や図書館に関する思い出や思い入れがあれば教えてください。
木村 母が幼稚園の先生だったこともあって、本や絵本をよく読んでくれたんですが、幼稚園では“お母さん”じゃなくて、みんなの“先生”だから、お母さんとして、家で本を読んでもらうのは、親子の大事な結びつきでした。だから私にとって、本は愛おしいものであるし、人生の節目節目で苦しいことがあった時に、本に助けられたこともあります。いまでも、誰かに何かを差し上げたいときに本をプレゼントするときがあります。
そこまで高価なものでもないし、その人が「どういう本好きかな?」とか「この方がお子さんに読んであげるならどんな本がいいかな?」と考えて、本屋さんでいろいろ見て、その人の人生にフッと入り込むような本がいいなと思って探すのがすごく好きです。図書館も当然好きなので、この作品に出られてすごく嬉しいです。いまはデジタルもありますけど紙に触りながら読むというのが私はすごく好きですし、大切なもののひとつです。

取材・文:黒豆直樹
<公演情報>
紀伊國屋書店創業100周年記念公演
『わたしの書、頁を図る』

作・演出・美術:小沢道成
出演:
木村多江
味方良介 光嶌なづな 中井智彦
坂口涼太郎 猫背 椿
2026年7月3日(金)〜19日(日)
会場:東京・紀伊國屋ホール
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/watashinosho/
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