目黒蓮×塩野瑛久 不安を楽しさに変えて挑む “信じて疑う”役者道
映画
インタビュー
『SAKAMOTO DAYS』 (C)鈴木祐斗/集英社 (C)2026映画「SAKAMOTO DAYS」製作委員会
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すべて見る目黒蓮が元伝説の殺し屋・坂本を演じている「SAKAMOTO DAYS」が現在大ヒット公開中だ。クライマックスのシーンで坂本と激しい闘いを繰り広げているのが鹿島役の塩野瑛久だ。共に特殊メイクで驚異的な変貌を遂げ、人間離れしたアクションシーンに挑んだふたり。今作のイベントのためにカナダから一時帰国をした目黒と話題作への出演が相次ぐ塩野のスペシャル対談が実現。ストイックで誠実な役作りで本作と向き合ったふたりの熱いインタビューを読めば、ますます劇場に足を運びたくなるはずだ。
お互いを信頼していたからこそ、できたアクションシーン

――クライマックスでの坂本と鹿島の壮絶なバトル、迫力満点ですごく見応えあるものでした。ハードなアクションの中におふたりのテンポ感も絶妙な掛け合いもあって面白かったです。
目黒蓮(以下、目黒) 坂本と鹿島のシーンは、アクションで対立する場面が多かったんですよ。アクションはある程度、信頼できていないと、ギリギリまで攻めれない部分もあるのですが、アクションの中で「これだけ行って大丈夫なんだな」と、徐々に信頼が築けていけたのは、相手が塩野さんだったからだと思います。
塩野瑛久(以下、塩野) いい画が撮れることに対してストイックなところがあります。例えば、蹴りを避ける時、カメラのアングル的に頭2個分ぐらいまで足が来ないとギリギリに避けたように見えないかなとモニターを見ていて思ったので、目黒くんが1番決まった蹴りを1番いいところで避けなければという緊張感を持ちながらやっていました。でも、それが楽しかったです。
目黒 すごく、いい緊張感がありましたよね。
塩野 目黒くんは運動神経もいいですし、信頼して、ギリギリまで、攻められました。映画の大きいスクリーンでは、ちょっとした遠慮が、分かりやすく出てしまう世界なので、ギリギリまで攻められたのは良かったです。
――鹿島のバトル中に坂本が葵からかかってきた電話に出るというコミカルなシーンのやり取りも息ぴったりで、めちゃくちゃ面白かったです。そんなコメディ芝居のやりとりはいかがでしたか。
目黒 あのシーンは福田監督から、「ここはこういう風にしてほしい」と土台となる部分を伝えてもらって。その中で、自分たちで「こういうものもできたら」とプラスできることを考えたんですよね。ツッコミをいれたり、一言入れたりしてましたよね。
塩野 そうするとカットがかかる寸前に、監督の笑い声が響き渡って(笑)。
目黒 そう、トンネルの中でね。
塩野 トンネルで撮ったバトルシーンは、声が響くんです。結構みんな、いつも以上に現場で静かにしないと、音が入ってしまう状態でした。そんな中、アドリブ部分で二人が何かやると、監督の笑い声が響いて。カットがかかった後に監督が「ごめん、ごめん」と。「俺、カットかかる前に笑い声をあげちゃって、使える? 大丈夫?」とすごく心配していました。スタッフさんが確認されたら「ギリギリ大丈夫だった」とおっしゃっていて、無事、監督の笑い声は入ってなかったです(笑)。
――思わず監督が笑ったというのは、どの場面ですか?
塩野 坂本と鹿島のやり取りで、終わりどころが、僕らも分からない状態でした。どこで終わるって決めていないので。ずっとやり続けて、台詞に戻る瞬間を目黒くんが見つけて、戻るんですけど。セリフに戻った後の、僕のツッコミみたいなのは、その場で自然に出た言葉でした。
目黒 そうでしたね。
塩野 そのツッコミは不意打ちだったので、ツボにはまったらしく(笑)。
真剣にやるからこそ生まれる、笑いのシーン
塩野 僕は、福田組は初めてですが、福田組ならではの緩急の部分は保ちながらやりたいなと思っていました。そこを意識した結果、緊張感がありつつも、傍から見るとちょっとおかしい、みたいなところに繋がったのかなと思います。
――鹿島のツッコミ、面白かったです。
塩野 本当はもっと自由にお芝居ができたら、攻めたいろんなことができたんですけどね。
目黒 でも、しっかりキャラクターの感情を持った中での動きでしたね。
――本当に原作にはない福田監督ならではの笑いが盛り込まれたシーンでした。
目黒 インの1発目のテイクがボイル戦だったんですよ。ワンカットめで特殊メイクの状態で撮影に挑むというのが初めてだったので、あれだけの特殊メイクをして、撮影をした前例がなかった。メイクを作ってくださる方たちも「こんな分厚い特殊メイクは正直したことない」という世界だったので、どこまで特殊メイクを崩さずに挑めるのか未知の領域に飛び込む緊張感もあったんです。そしたら、アクションシーンぐらい汗をかいてしまって、早速メイクが崩れてしまった。
そんな中、コミカルなシーンも、1つの笑いを生み出そうと頑張っていましたね。坂本の心情に、「葵たちの元へ帰りたい」という坂本の真剣な思いがあるので、笑わせに行こうとしているのではなくて、真剣にその思いを持った上で動いて、笑ってくれたら、いいなという気持ちでやってました。
――そこでの目黒さんはあまり見せたことのない顔をしていましたね。
目黒 確かにあまり見せたことはなかったですね。これまでお芝居シーンは重めの感じが多くて、その深い感じが良かったですけど。でも、真剣にやるということは、どのジャンルにおいても変わらないことなので。ただ、真剣に本気でやってました。
――個性的なキャラクターで縛りもある中、セリフ以外の部分でやりとりしていたんですね。
塩野 福田監督は楽しく現場を作られていますが、厳しい演出家の部分もあり、何か試されている感じがしたんです。監督が望む笑いのシーンになったのかも大切なんですが、僕の中のキャラクターを守るという正義を大切にしました。
目黒 それはしっかりキャラクターの中の感情の動きをもった上でやるっていうことですよね。僕もそれをすごく大事にしてたんですよ。坂本の葵たちの元に帰りたいっていう感情の動きがある中でやってました。

――目黒さんはふくよか坂本とスマートな坂本を演じ分け、鹿島は顔に特殊なメイクを施してのお芝居で、いろいろ制約がある中のお芝居は大変そうですね。
目黒 ふくよかな坂本の状態で、もうどこまで自分が動けるのかも分からないし、本当に未知で。やってみたら、首が左に向かない、右にも向けないとか、やっぱり色々な問題が出てくるんですよ。汗がどこかの隙間から漏れ出てくることもありましたし。どこかのパーツを取ったら、もう絵に描いたように、溜まった水が出てきたり(笑)。ここまで寝っ転んじゃったら、もう立ち上がれないという状態になったり。自分の体験値を張り巡らせて、この範囲にとどめておけば次の動きに入っていけるななど、色々な挑戦がありましたね。でも、トライしていくことが楽しかったです。誰も正解を持ってないし、「こうやったらいいよ」とか、「あの人はこういう風にやっていた」とか、そういうものがなかったので。周りのスタッフの方々が本当に助けて下さったおかげでできました。
――特殊メイクも4時間かかったそうですね。
目黒 特殊メイクは、1パーツずつオーダーメイドなんですよ。しかも、撮影が終わり外してしまったら、もうそれは一度きりで、終わり。あれを作るのに、多分スタッフの方々は、「失敗しちゃったな。もう1回作ろう」ということを何回も繰り返しチャレンジされていたと思います。周りの方たちも、みんなでトライしていくことができたので、喜びがすごくあって。その感じが楽しかったですし、新しい達成感を味わえました。
塩野 目黒くんは、ふくよかな坂本の状態で何回も練習をするわけにもいかないので、テストと本番の2回ほどで、感覚を自分の中で見つけながらやらなければいけない緊迫感があったと思います。決められた通りに動くことはできても、坂本として魅力的に動くとなると……。キャラクターが魅力的に見えるようなアクション、素振り、一瞬のものをたった2回のカットで決めなければいけないという。アクションをする中で、頭をフル回転させていましたよね?
目黒 いや、本当にそうなんですよ。鹿島はどうでした?
塩野 原作は続きがありますが、僕たちがやっているのは2時間の中で、絶対に終わる物語。その中で坂本の前に最後に立ちはだかることができる役どころなので、とにかく鹿島を不気味に、強そうに、1歩踏み込んだところで見せなければいけない。坂本の攻撃を食らうたびに鹿島は関節が外れるんですが、そうすることによって鹿島の不気味さも出せるし、坂本の一撃がどれだけ強いかというのを表現できると思って挑みました。
目黒 鹿島の1個1個の不気味な動き、すごかったです。アクションや殺陣で、重要だなと思ったことがあったんですよね。パンチやキック、攻撃をしているほうが派手に上手く、カッコよく見えるかもしれないけど、実際はそれを受けてる、くらってる方が重要で、その受け方が上手ければ上手いほどすごく見える。このリアクションが大事なんです。塩野さんはそのリアクションの部分が結構多かったと思うんですよ。攻撃されて、全てのリアクションをこぼさずに拾って、鹿島のクオリティを高いところまで持っていく難しさがあったと思います。
海外での撮影に向かう車の中、これが“不安”という感情なんだと思いました

――お互いリスペクトを持って現場に立っていたことが今のお話から伝わってきました。
塩野 実は、僕は目黒くんが出演されていた『silent』がめちゃくちゃ好きなんです。当時、ファンの方へ向けたライブ配信でもその話をしたくらいなんです。だから今回、共演が実現して鹿島として対峙できて、すごく嬉しかったです。同じく『silent』以降に目黒くんのことを知った方よりも、僕は目黒くんのことを知っているみたいな気持ちです(笑)。
目黒 ふふふ。いや、有難いです(笑)。
塩野 共演してみて、目黒くんの魅力をひとことで言うなら、誠実さにあると思いました。
目黒 いやいや、塩野さんこそ、僕から見て、すごく誠実な方だなと思います。現場を一緒にやると1つ1つ丁寧にやってらっしゃるなということが分かります。あと、僕、今まで年齢が近い方とお芝居することが意外と少なかったんですよ。今回、お芝居を一緒にやらせてもらって、いつもとはまた違った刺激をもらいました。もっと一緒にできたら楽しいんじゃないかなと思って。これだけでは足りないですよね(笑)。
塩野 ご一緒できるように頑張ります!
――もし再共演されるなら、どんな作品がご希望ですか。
目黒 どんなのがいいかな。今回はアクションをぶつけあったから、繊細なものも、面白いかもしれないですね。
塩野 そうですね。これまでに出られていた作品で繊細な目黒くんを見てきましたが、今回のようなコミカルな役も演じられて、本当に多才な方なんだな、と。だから、どんな作品でもご一緒できたら、楽しめると思うので、どんな作品でも嬉しいです。
――この作品は、お二人にとって色々な挑戦が詰まった作品になったと思います。
目黒さんは現在、カナダに長期滞在しての撮影に挑まれている日々を送っていると思いますが、新たなチャレンジをする時は、毎回どのような想いで挑まれているのでしょう。
目黒 カナダで作品に参加することには、もちろん並々ならぬ覚悟を決めてトライしに行きました、でもやっぱり少し不安もあったんです。
――それは緊張で?
目黒 はい。車の中で撮影に向かっている瞬間もそうでしたね。そのとき、これが人間が不安になった時の感情、心の動きなんだなと思って。でも、それは今しか感じられないことだと思うんです。今日の夜になれば、もう感じられなくなってしまうかもしれない。この気持ちになれるのは、今しかないものなんだと、その瞬間にしかない感情の波に乗る楽しさを少し俯瞰で感じられました。
――目をそらさず、1つ1つの感情を受け止めて、その瞬間を感じるのってすごく大切なことかもしれないですね。
目黒 不安よりも、この先の5年後、10年後の自分がどうなっているのかという楽しみが勝るというか。そのような感じです。
塩野 僕は常に自分の価値観とセンスみたいなものを信じて、一方では疑って、そんなことを繰り返しながらずっとチャレンジしていきたいです。
――疑うんですね。
塩野 “自分ならできる”という気持ちを信じています。とりあえずやっている最中は自分のことをとにかく信じる。でも、俯瞰で自分を見た時に、絶対に甘く見積もらないというところは、意識しています。周りが「良かった」と言って下さるのを常に疑っているタイプです。自分の目で見て、自分がまだまだだと思ったら、とことん追い求める姿勢で、極めていきたいです。
目黒 お話を聞いていて、すごい分かるな、と。疑いますよね。どこか自信を持っていてやっていることにも、不安があるから頑張れる。疑うから、不安だから、しっかり準備するんですよ。もう誰よりも準備する。これで余裕だと思って準備しないのと、全然違うと思う。
塩野 わかります。準備するのはもちろんですが、いざ現場に立って、パフォーマンスをする瞬間には、絶対その気持ちは置いてこないとダメだとも思う。僕らもプロとしてやっているので、疑ったまま現場に臨むのは絶対良くないじゃないですか。だから、やるものに対しては絶対に信じる。
目黒 これだけ準備したし、っていう、ね。
塩野 自信を持って現場では過ごしているけど、終わった後に僕はちょっと自分のことを厳しめで見ながら次に活かそうとします。
目黒 もうその繰り返しですよね。
<作品情報>
『SAKAMOTO DAYS』
全国公開中

脚本・監督:福田雄一
出演
目黒蓮 高橋文哉 上戸彩/横田真悠 塩野瑛久 渡邊圭祐 戸塚純貴/八木勇征 生見愛瑠/北村匠海
取材・文/福田恵子
フォトギャラリー(8件)
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