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時代の熱気を浴びる! 永六輔原作舞台『赤坂檜町テキサスハウス』ザ・スズナリで上演中

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『赤坂檜町テキサスハウス』より (撮影:加藤春日)

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永六輔のノンフィクション作品を原作に、映画監督・崔洋一企画のもと舞台化した『赤坂檜町テキサスハウス』が、2026年5月8日(金)から24日(日)まで東京・下北沢のザ・スズナリ、5月28日(木)から31日(日)まで大阪・近鉄アート館で上演される。脚本・演出を手がけるのは、これまで数々の演劇賞を受賞し、第67回毎日芸術賞演劇・邦舞・演芸部門を受賞した鄭義信。本稿では5月7日(木)に行われたゲネプロの観劇レポートをお届けする。

戦後間もない頃。まだ焼け跡が残る赤坂・乃木坂にあった木造二階建てのアメリカ風アパート、正式名称「花岡アパート」、通称「テキサスハウス」で起きる様々な出来事と、人間模様を描く。そこには、創成期のテレビ界の人たち、出版・映画・舞台関係の人々、女優、モデル、歌手、作家、プロ野球選手──ありとあらゆる業種の人たちが入居しては退居、入れ替わり立ち替わり、昼だか夜だかわからない暮らしをしていた。

物語の舞台となるテキサスハウスは、漫画家たちの住んでいたアパート「トキワ荘」のメディア版ともいえる、多様な才能が集まる場所。そこはおかしな話、面白い話、血なまぐさい話、怪しい話が絶えず見聞きされ、戦後日本の活力と混沌をリアルに感じられるパワースポットのような空間でもある。ザ・スズナリという小劇場の没入感だからこそ、役者の息遣いや表情、集団生活の混沌を間近で味わえるはずだ。

若き日の永六輔を演じるのは、伊藤健太郎だ。主演舞台はおよそ3年ぶり。声のトーンに独特なクセがある役どころだが、芝居が進むにつれ時代の熱気に呼応するように、エネルギッシュで感情豊かな六輔像を体現。幅広いジャンルで活躍する今こそ、親密な舞台空間に身を投じるチャレンジングな姿勢は、今後の役者人生の大きな糧になるに違いない。

テキサスハウスを取り巻く住人たちを演じるのは、大鶴佐助、福井晶一、小川菜摘ら鄭作品常連の実力派俳優たちだ。大鶴は5歳のときに日本に渡ってきて、俳優として活躍する森山昇、時代を見つめる写真家の大竹省二の二役で躍動し、ジャズシンガーの芦田左千夫を演じる福井とともに、コメディ面を担った。大鶴、福井との共演で、伊藤の演技がさらに弾んでいく化学反応は本作の大きな見せ場だ。鄭作品に初出演し、3役をこなす酒井大成にも注目してほしい。「熱演を浴びる」という意味でも、やはりザ・スズナリは本作にふさわしい劇場だと感じた。

一方、50年後の永和雄(みのすけ)は、死を目前にして、若き日々の幻覚を見るようになる。長女の多恵(小川)と、その夫・道明(福井)は和雄に寄り添い、ラジオ番組に復帰できるよう、リハビリに励んでいる。物語は若き永六輔と老人の永和雄の人生が交差しながら、進んでいく構成。美術の石原敬をはじめ、充実のスタッフワークが一人の人間を通した、二つの時代を見事に描写する。ぜひ、ディテールへのこだわりにも目を見張りたい。

安保闘争やベトナム戦争に反対した日本の市民運動団体「ベ平連」といった、時代の波の中で、若者たちがときに抗い、ときに流れ、生き抜いた姿を描く過去パートは、戦後メディア史を回想する意味でも非常に興味深い。当時の“空気”には、世界情勢の不安が続く令和の世の中との、笑えない共通点も見え隠れし、思わず下を向きたくなってしまった。

時代が流れるにつれ、永六輔という表現者の人生には数多くの“別れ”が訪れる。同時に、家族に見守られながら、老いた永和雄にも死が近づいていく。永和雄のリハビリを描く現代パートは、長女の多恵との関係性や、ぎくしゃくもする父娘を大らかに包み込む夫・道明の姿が涙を誘う。みのすけ、小川、福井が見せるどこか滑稽で、感動的なドラマは『赤坂檜町テキサスハウス』のもうひとつの背骨となっている。

旅立つ者と残された者。その関係性は、崔と鄭にも通じるものがあるだろう。崔と鄭は、映画『月はどっちに出ている』をはじめ、『平成無責任一家 東京デラックス』『血と骨』など、互いをリスペクトしながら長年にわたり作品制作を共にしてきた。2022年晩秋、崔は鄭に『赤坂檜町テキサスハウス』の舞台化を依頼したが、その約1カ月後の2022年暮れに崔は逝去した。本作はその意思を受け継ぎ、鄭が上演台本・演出を手がける舞台作品となったのだ。

便利になり過ぎた結果、どこか息苦しく閉塞感が漂う現代において、本作が描く「やりたい放題」の尖ったエネルギーや、人と人のつながりが生む温かさは、ノスタルジックな遺物なのかもしれない。それでも、当時を懐かしむも良し、「こんな時代があったんだ」と時代の熱気を浴びるも良し。時代の流れとともに、変化し続ける下北沢に降り立ち、熱く泥臭い青春群像劇を体感するのも悪くないはずだ。

取材・文:内田涼 撮影:加藤春日

<公演情報>
『赤坂檜町テキサスハウス』

『赤坂檜町テキサスハウス』ビジュアル

原作:永六輔(大竹省二・写真/朝日新聞出版『赤坂檜町テキサスハウス』)
企画:崔洋一
脚本・演出:鄭義信
出演:伊藤健太郎 大鶴佐助 福井晶一 酒井大成 小川菜摘 みのすけ

【東京公演】
2026年5月8日(金)~24日(日)
会場:ザ・スズナリ

【大阪公演】
2026年5月28日(木)~31日(日)
会場:近鉄アート館

チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2666123

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