高橋怜也×高橋健介 直木賞候補原作の舞台化、『逃亡者は北へ向かう』で背負う責任と期待
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インタビュー
(左から)高橋怜也、高橋健介 (撮影:石阪大輔)
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すべて見る映画化もされた『孤狼の血』、『盤上の向日葵』などで知られる作家・柚月裕子の直木賞候補となった小説を舞台化した『逃亡者は北へ向かう』が、6月12日(金)~21日(日)に東京芸術劇場 シアターウエストにて上演される。大震災の直後に殺人を犯し、死刑を覚悟しながらも、ある目的のために逃亡を続ける青年と彼を追う刑事を軸に展開するサスペンス。主人公の真柴亮を演じる高橋怜也と彼を追う刑事のひとり・藤島を演じる高橋健介が本作に臨む意気込みを語ってくれた。
――高橋(怜)さんにとっては、初の主演舞台となりますが、最初に今回の企画に触れた際の印象についてお聞かせください。
高橋(怜) 作品的にはすごく重たい物語であり、これまで演じたことのないタイプの作風ですが、自分の役者人生にとってもすごく大事な作品になると感じました。初主演ということで、正直プレッシャーもありましたが、今年30歳になる自分にとって新たなステップアップであり、糧になる作品だと思っています。

――高橋(健)さんは、原作を読まれてどのような印象を?
高橋(健) 柚月裕子さんの小説を原作にした『孤狼の血』の映画を以前拝見した際、その迫真性や緊張感の強い描写が非常に印象に残っていました。今回の作品についても重厚で痛みを伴う物語を想像していたのですが、脚本を読ませていただくと僕が想像していたのとは違う痛みを抱えた物語でした。そのうえで、これをどのように舞台化するのだろう? と思っていました。
――決して明るいとは言えない物語ですが、舞台としてこのお話を伝えることの魅力や意義をどのように感じてらっしゃいますか?
高橋(怜) わかりやすく何かを提示できるようなお話ではないですし、正直、僕自身もまだ消化しきれていない部分はあります。でも原作と脚本を読ませていただいて、真柴の人生はとても辛いことの連続だけど、それでも希望を見出して生きることの大切さや救いを感じました。光を求めて進んでいくということの大切さはお伝えできるのではと思います。
高橋(健) 今回難しさを感じるのはフィクションとしての物語だけではなく、震災を背景にしていること。結末に至るまでの間に、ご覧になる方にいろんなことを思い起こさせると思うんです。もちろん、震災を扱っているということは事前にお伝えしていますが、その上で、少しでも前向きな思いや期待を持って劇場に足を運んでくださった方たちに、より大きな希望やポジティブな何かを持って帰っていただける作品にしたいと思っています。

――真柴という役柄について、現時点ではどのような人物だと捉えていますか?
高橋(怜) 自分で能動的に何かを選んで生きてきたというよりは、周囲に巻き込まれて、現状にたどり着いてしまったという人間だなと思います。その部分も含めて、わかりやすい人間ではないし、繊細さが求められる、演じるのが難しい役だと感じています。
――真柴が北に向かう理由が劇中で明らかになっていきますが、彼の心理に関して、理解できる部分はありますか?
高橋(怜) もし自分だったら? という想像がなかなか及ばない人生を歩んでいるので、簡単に「理解できる」とは言えないですが、それでも何もない人生を歩んできた男が、ひと筋の光を見つけてそこに向かうというのは、わかる気もします。
――何人かの警察官が登場する中で、高橋(健)さんが演じる藤島は、理想と現実のはざまで葛藤したり、震災によって陥った状況に思い悩んだりします。
高橋(健) おそらく成績もそれなりに良くて、明るいタイプの男性ではあるんでしょうけど、すごく繊細なところも持っている人物なのかなと感じました。僕みたいにとことん明るくて、行き着くところまで行っちゃってはいない(笑)。だからこそ周りの人間が何を感じているかというところにも敏感だし、悩んだり葛藤を抱いたりするんだろうと思います。
――劇中、先輩刑事の陣内を演じる波岡一喜さんとのシーンがほとんどを占めるかと思います。
高橋(健) 僕が子どもの頃から見ていた映画では、波岡さんは怖い役を演じていらっしゃることが多くてそのイメージが強かったんですけど、実際にお会いするとすごく明るくて気さくな方です。僕が感じたその怖さをどのように凄みを効かせて演じられているのか、その過程を今回、しっかり見させていただければと思っています。僕が演じる藤島と波岡さんが演じる陣内は劇中でも対照的に描かれる役柄で、お互いによってそれぞれのキャラクターが浮き彫りになっていくと思います。色は違うけど、それぞれに濃さを出していかなくてはいけない。その関係性を稽古でつくっていくこともすごく楽しみにしています。

ひとりの役者として震災の記憶に向き合うために
――先ほど、高橋(健)さんもおっしゃっていたように、「東北で起こった震災」ということで、東日本大震災を思い出す方も多いと思いますが、演じる側にも覚悟の必要な作品だと感じています。演劇という形で震災を伝えることの責任や大切さをどのように感じていますか?
高橋(怜) 日本人として絶対に忘れてはいけないことだと思っています。最初にお話をいただいて、(出演を)迷う気持ちもありました。僕自身は直接被害を受けたわけでもなくて、どう表現すればいいんだろう? という思いはありましたが、別の作品でご一緒している横田(龍儀)くんが福島県出身で、いろんな話を聞いたりもして、身近にそういう人がいることで自分にも何かできるのではないか? という思いにもなりましたし、より大切に演じなくてはという責任感も芽生えてきました。
高橋(健) 横田くんには、僕が出演しているYouTubeの番組に来てもらったことがあって、その時も当時の経験について話してもらいました。彼自身も被災者で、福島から転校して神奈川の学校に通うことになり、そこで知り合った人に「オーディションを受けてみたら?」と勧められて、この世界に入っています。番組でも、彼は「震災の記憶を風化させない」という思いでいろんなことを話してくれましたが、どこまで聞いていいのだろう? という迷いが僕にはありました。
未だに正解はわかっていませんが、それでも横田くんが僕たちにしてくれたように「伝えていく」ことは大切だと思うし、それを演劇という形でやることに意味はあると思っています。
演じる藤島も震災に直面はしているけど、家族を失ったわけではないという立場。簡単にその気持ちを想像することはできないし、探せば当時の映像もたくさん出てくるでしょうけど、それは軽々しく役作りの“資料”として見るようなものではないとも思っています。本当に難しい役ですけど、そういう繊細な機微を積み重ねて、大切に演じられたらと思うし、この作品はそうやってできあがっていくものだと思います。
――最後に改めて本作に挑むにあたっての意気込みをお願いします。
高橋(怜) 今回、初主演ですし、ストレートプレイも初めてと新しい挑戦ばかり。これまでお話しした通り簡単には演じられない役ですが、大切につくっていきたいと思います。
高橋(健) 正直、普段であれば「こんなふうに演じて、こんな作品ができて、お客さまはこんな感情になって……」という想像がある程度はできますが、今回はどうなるのかまったく見えないです(苦笑)。だからこそ、この作品をしっかりとつくることができれば、もう何が来ても怖くないので、ここでしっかりと結果を残したいです。

取材・文:黒豆直樹 撮影:石阪大輔
<公演情報>
舞台『逃亡者は北へ向かう』
原作:柚月裕子『逃亡者は北へ向かう』(新潮社刊)
脚本・演出:吉村卓也
出演:
高橋怜也 波岡一喜 高橋健介 松田大輔(東京ダイナマイト) 八十田勇一
山村翔・中谷薫風(Wキャスト)/前川泰之
※Wキャストの出演回はチケット販売ページよりご確認ください。
2026年6月12日(金)~21日(日)
会場:東京・東京芸術劇場 シアターウエスト
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/toubousha/
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