Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
ぴあ 総合TOP > 新国立劇場で稽古中の浜田学×山口森広×演出・金澤菜乃英が読み解く、ノゾエ征爾の新作『りんごが落ちる』の魅力

新国立劇場で稽古中の浜田学×山口森広×演出・金澤菜乃英が読み解く、ノゾエ征爾の新作『りんごが落ちる』の魅力

ステージ

インタビュー

ぴあ

左から)浜田学、金澤菜乃英(演出)、山口森広 (撮影:酒井優衣)

続きを読む

フォトギャラリー(4件)

すべて見る

新国立劇場にて、小川絵梨子演劇芸術監督の任期最後のシリーズ企画「いま、ここに──」のラストを飾る作品『りんごが落ちる』の稽古が進行中だ。ノゾエ征爾による書き下ろし戯曲を、新鋭・金澤菜乃英が演出する本作は、舞台上でセリフが止まり、ラスト10分間を沈黙劇にしてしまった舞台俳優と、そんな彼のもとにやってくる人たちの物語。金澤と、舞台俳優・田端役を演じる浜田学、田端の大学時代の演劇部の後輩・猿橋を演じる山口森広に、演劇人としての実感をもって向き合う本作の魅力、舞台への意気込みを聞いた。

──まずは、ノゾエさんの戯曲を読まれての最初の印象からお聞かせください。

金澤 優しさに満ちあふれていると感じました。言葉の端々がとても優しく、もちろん刺々しい言葉も出てきますが、傷ついたことが最終的に拾われ、回収されていく感覚があり、かつ、ちょっとずつユーモアがあって笑ってしまう。皆それぞれに闇があるのだけれど、追い詰められているその様もちょっと滑稽で、救われる。どこかしら自分や誰かのエピソード、実生活と重なっていく面白さも。初めて最後まで読んだ時の、少しホッとする感覚を大事にしたいですし、作品の受け取り方に余白を残していくような面白い戯曲だなと感じました。

浜田 僕自身、人間として劣っている部分を常に感じているのですが、ノゾエさんが描く人たちは、人生の中でいろいろな挫折や苦しみを抱えている人間の集まりで、「ああ、なんかわかる」。すごく愛すべき人たちだなという印象を持ったのが最初です。これを皆でどう考えて作っていくかということに、挑戦したいと思いました。そういう人間を演じることができるのも僕たち俳優の醍醐味ですし、自分を高めていくと同時に、その役柄にどれだけ寄り添って生きていけるかということを大事にしたく思います。

山口 非常に面白く読んだのですが、読み終えた時に、泣いちゃっていて。この涙はどこからきた涙なんだろう、と──。ノゾエさんの言葉がどんどん心臓をパンチしてボディブローのように効いて、だんだんハートが繊細になって、それを皆で見せ合ったりしているような感覚に。印象に残るセリフ、好きなセリフが多くて、言葉に込められているものがいっぱいあると感じました。

──今回のような新作の場合、戯曲が手元に届くまでの間はどのように過ごされるものなのですか。

金澤 多分、待つということも演出者の仕事のひとつで。台本が出来るまで待つ時間も、自分の中で熟成するものがあるのかなと思います。脱稿後はカンパニーメンバーが一丸となって創作へ向かい、猛烈に立ち上げていく様が私は好きです。

浜田 最初にプロットをいただいたときのワクワク感や人物の印象を常に忘れないようにしながら、稽古が始まるまで田端の人物像を考える日々を送っていました。

山口 新作でも、台本が未完成のまま現場に入ることもありました。稽古の最初から台本があるなんて、贅沢です(笑)。

──ちなみに、セリフが飛ぶというハプニングは、俳優さんがよく夢に見ることだと聞きますが。

浜田 そうですね。ただ、僕は10分間沈黙を続ける勇気はありません(笑)。袖に捌けて台本を見ちゃいますね。やっぱり、田端には何かしら捌けなかった理由があるのではないかと思います。

金澤 10分間の沈黙を、何か動物的な感覚で乗り切った田端さんがいて、それが成り立ってしまって、梅舟惟永さん演じる演出家の鴨川は悔しくて──。演劇のことが盛り込まれていますが、でもそれは入口に過ぎず、ノゾエさんが描きたいことのスケールはとても大きいなと思います。沈黙の10分間の捉え方も含めて、自然、地球、宇宙と飛ばし方が広大。多分、登場人物の身体を借りながら、生物的な感覚としてどう体感していくか、という芝居なのかなと。私たちはもちろん演劇人として、この物語の世界に入っていきますが、その枠を超え創っていきたいと思うんです。

──作中には台所や“食べる”ことが登場するのも気になります。

金澤 料理の先は、「食べる」ということにつながります。食べようとすること自体に、生物のエネルギーが込められているし、調理するということは自分のためでもあるけれど、誰かのことを思いながら作り、食べて、摂り入れて……。それは生きる希望です。作品の結びにどう繋がっていくか、というところも考えどころです。

演劇の可能性は、究極のアナログ。

──進行中のお稽古の中で、あらためてどんなことを感じられていますか。

山口 観終わったときに、優しさに包まれた感じになるのではないかなと思っているんです。最後にちゃんと希望が残る、と。

浜田 金澤さんがひとつずつ丁寧に紐解いて、掘り起こして耕して、導いてくださる。すごくありがたいなと思いながら、過ごしています。

金澤 解釈も本当に様々で、キャストの皆さんはもちろん、スタッフさんも忌憚なくご自身の解釈や体験談を話そうという日を設けたら、いろんな話が出ました。

山口 登場人物たちの年表のようなものを書いたりして。

浜田 登場してこない田端のお父さんはいつ亡くなったのか、とか。

山口 決めておいたほうがいい部分と、決めることによって何かが失われてしまうところもありますね。

金澤 「ポジティブな棚上げ」ですよね。後から「あれはこういうことだったのかな」と明らかになることも、ずっと棚上げ案件になるものもあります。可能性がありすぎてしまうところを、どこまで絞り余白を作るか。そのさじ加減が、今回の座組ならではのカラーになっていけたら。

──田端には小学生の息子がいますが、皆さんも実際に子育てをしながら演劇に向き合ってこられたそうですね。稽古の中で、ご自身に重なると感じるところは?

金澤 たくさんあります(笑)!

山口 自分の役以外の人のセリフにも共感できて、「俺じゃん」とか(笑)! 

浜田 苦労はしても、子供がいることのありがたさも田端は感じている。そういうところも体感できればなと思います。

金澤 演劇の現場では、「実生活の中であの時経験していてよかったな」と昇華される瞬間が多々あるんです。子育ての中で大変だったこと、トラブルやハプニングも、現場でちょっと話すと笑い話に。しかも、田端が出演する舞台を手がける鴨川は女流演出者。刺さることはたくさんあります。

浜田 心の中と頭とを行ったり来たりで忙しい(笑)。

金澤 その往来のようなものをどう観ていただけるかな、ということも計算しつつ、言葉に心揺さぶられて、というシーンの連続です。

山口 謝らなくてもいいのに謝りたくなるくらい、人間って優しくて繊細で弱い生き物で、そこに美しさがある。作品の後半にはそういうことが散りばめられていて、いろんなところに連れていかれるような感じです。

──浜田さんご自身は、田端のようなハプニングに見舞われたご経験はありますか。

浜田 映像の現場でのことですが、大勢のエキストラさんを前に、多分20回くらい失敗をして──地獄でしたね。一度真っ白になると、また同じところで真っ白になる。

山口 そういう時、妙に優しい先輩がいて申し訳ないですよね。「大丈夫! 全然大丈夫!! よし、もう1回行こうー!!!」とか。逆にプレッシャーになったりして。

浜田 黙って見守られても、それはそれでまた……。

山口 かといってすっごい怒鳴られても(笑)。それでその日は、どんな夜を過ごされましたか。

浜田 まだ生後2、3カ月の子供を、ずっと抱っこしていました(笑)。

──ところで、舞台美術についてはどうされるのでしょう。

金澤 シンプルになっていくんじゃないかなと思います。このお芝居では、時空間が飛ぶ瞬間を、飾りで具体的に説明していく必要があまりないように思います。演劇の可能性は、やっぱり究極のアナログ。たとえばここにりんごがなくても、「りんごだ」とふたりが喋っていたら、お客さんがここにあるりんごを想像できるような──。それが演劇の醍醐味だと思います。りんごが「落ちる」のは色々なことのメタファーですが、ノゾエさんの世界観を大事にしつつ、説明しなさすぎるのも「?」で終わってしまうので、すごく考えるところです。

──最後にあらためて、舞台への意気込みをお聞かせください。

金澤 新国立劇場は私の憧れで、目標にしていた劇場。今回お話をいただいてとても光栄です。ノゾエさんの繊細で優しい世界を皆で丁寧に取り組み、全力でお届けしたいです。と思います。

浜田 新国立劇場で主役を演じることを想像したことがなく、あまりに突然すぎてびっくりした状態から始まっています。だからこそ、このすごく素敵なステージの上で、余計なことを考えずに田端という人間を貫き通すことを一番に考え、皆でああじゃない、こうじゃないと追求しながら作っていきたいですね。

山口 新国立劇場主催の舞台に出演することは、俳優としての目標のひとつの達成。嬉しいですね。タフじゃない人たちに送るエールというか、最後にとても温かい気持ちにさせてくれるお話なので、ぜひ劇場に来ていただけたらと思います。

取材・文:加藤智子


<公演情報>
新国立劇場の演劇
『りんごが落ちる』

作:ノゾエ征爾
演出:金澤菜

出演:
浜田学 / 山口森広 / 梅舟惟永 / 宮川安利 / 大西多摩恵

2026年6月13日(土) ~ 6月28日(日)
会場:東京・新国立劇場 小劇場


シアタートーク『りんごが落ちる』
2026年06月19日(金) 14時公演終了後

演劇『りんごが落ちる』公演ガイドツアー
2026年06月26日(金) 14時公演終了後

関連リンク

チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2668131

公式サイト:
https://www.nntt.jac.go.jp/play/nozoeseiji-newplay/

フォトギャラリー(4件)

すべて見る