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「シークレットシネマ」開催記念 特別鼎談 映画館は“未知との遭遇”の場所

映画

インタビュー

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(左より)松岡宏泰、二宮和也、佐々木伸一 撮影:コウユウシエン

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映画が生まれてから約130年。ディスクや配信、放送など映画を観る手段は多様化したが、今日も世界中の映画館で多くの観客が同じスクリーンを見つめている。コロナ禍で映画館の存在が危ぶまれる瞬間もあったが、近年はヒット作が続いたこともあり動員は復調傾向にある。そこで、映画館での鑑賞体験を日常に取り戻すための新プロジェクト「シークレットシネマ」がスタートする。

この企画は、映画館に行こう!実行委員会が主導する企画で、映画に造詣の深いアンバサダーが“人生の1本”をセレクト。当日までタイトルを伏せて上映する1日限定の特別イベントだ。今回アンバサダーに就任したのは俳優の二宮和也。当日は彼が選んだ作品がスクリーンで上映される。

そこで本企画のスタートを記念して、二宮、本企画をサポートする映画館に行こう!実行委員会の松岡宏泰代表理事(東宝株式会社 代表取締役社長 社長執行役員)、佐々木伸一事務局長(全国興行生活衛生同業組合連合会 会長代理/佐々木興業株式会社 取締役会長)の特別鼎談を開催した。イベント当日、どんな映画が披露されるのか? なぜ、人は映画館に魅了されるのか? それぞれの立場から映画を愛する3人のトークは制限時間を突破する盛り上がりに。

まだ知らない作品と感動に出会える場所、少し大げさに言うと“未知との遭遇”が待っている場所=映画館の魅力を再発見してほしい。

“映画を選ぶ”というのは、頭の中を見られるようなもの

佐々木 映画館に行こう!実行委員会の今後の活動のために次世代を担う若手のみなさんにも意見を出してもらいたいと思いまして「若手戦略会議」というものを作りました。映画館、配給会社、映画の制作・宣伝会社などから35歳以下のメンバーを集めて、9チームからそれぞれ提案を受けて、その中で1位になったのが今回の「シークレットシネマ」です。

松岡 昔から「映画は口コミ」と言われますけど、誰かに紹介される、というのは映画にとって一番強い宣伝ではないかと思うんです。一方で、現在はSNSの時代ですから、とにかく情報が事前に入ってきて、どんな映画なのか分かった状態で観ていることが多いですよね。そうではなくて、紹介してくれる人のことを信頼しているけれど、どんな映画なのかは分からない。その切り口が面白いと思いました。

佐々木 私も松岡さんとまったく同意見で、事前情報が何もないまま物語の世界に突入してもらうことが、映画の楽しみ方として一番かもしれないと思いました。

松岡 最初はどなたにアンバサダーをやっていただけるか分からなかったのですが、映画を愛する方が「この映画が好きなんです。みなさんも映画館でどうですか?」と呼びかけてくださるストーリーに手応えを感じていました。そうしたところ、一番最初に、これ以上ない素晴らしい方に引き受けていただける形になり、本当に光栄です。

二宮 本当にありがたいです。このおふたりにお願いされたら、断る理由がないですよね。もちろん、プレッシャーはありました。このプロジェクトのアンバサダーを務めることには、すぐに「分かりました!」とお答えしたんですけど、そのために映画を選ぶということは……ちょっと自分の頭の中を見られるようなところがあるじゃないですか。

佐々木 自分の好きな映画を知られるのは、恥ずかしい部分もありますよね。裸を見られてるみたいな(笑)。

二宮 そうなんですよ(笑)。だから、最初は各国から選ぼうとか、何かテーマを持って決めた方がいいのか?とか考えたんですけど、最終的にはどう受け取られるのかを気にするのではなくて、観てくださった方が「なるほど、選んだ人間はこういうものを面白いと思っているのか」ということも含めて楽しんでもらえたらいいなと思ってセレクトしました。“没入できるもの”がいいかな、と思ったんです。今回、選んだ作品の中には少し特殊な作品もあるんですけど、スッと作品の世界に入り込める良さがある。そういう作品を、不特定多数の人が映画館というひとつの箱に収まって、みんなで観るって“実験”に近いと思うんですよ。だからこそ、集まった人が没入して、みんなで体験できるものがいいなって。まず最初にそのことが思い浮かびましたし、僕自身もそういう映画が好きなんです。

松岡 そういう風に映画館のことを思っていただけるのは、我々としてはうれしくてしょうがないです。なぜ人は映画館まで行って映画を観るのか考えると、上映環境だけではなくて、そこに集まった全員が遮断された空間の中で、同じスクリーンを見つめるという非日常を体験しているからだと思うんです。だからこそ、日常とは違う世界を一緒に観るときに、そこにいる人たちがグッと盛り上がったり、一緒に息をのむような瞬間がある。それはひとりではできないことですよね。

佐々木 二宮さんがおっしゃってくださった共通体験というのは、映画館でしか味わえないものですよね。だからこそ我々はそういう体験をもっと楽しんでいただける環境と空間を作っていく義務があるし、他では味わえない鑑賞体験について勉強しなくちゃいけない。映画館の楽しさと本質は共通体験にある……その意見は本当に好きです!

二宮 うれしいです!

松岡 今はスマホでも映画が観られる時代ですから、手軽に映画を楽しめる環境の中で、どうやって映画館に来ていただくのかを考えると、やっぱりイベント性が相当に高くないと難しい側面もある。

佐々木 一方で“事前情報なしに映画を観られる”ことの幸せってあると思うんです。今は「内容が分かっているものしか観ない」という考えの方もいらっしゃいますから難しいところですけど、やはり何も知らずに観た映画が面白かった、という方がいいと思うんです。お恥ずかしい話なんですけど、この間、『プロジェクト・ヘイル・メアリー』を本当に何も知らないまま、息子が面白いって言うので観に行ったら、めっちゃ楽しかったんですよ!

松岡 息子を信じて(笑)。

佐々木 息子を信じて良かった(笑)。

映画の作り手としては観客のリアクションに感動

3人が繰り返し語るのは、映画館でしか味わえない体験がある、ということだ。映画を鑑賞する環境が整っているだけでなく、映画館に足を運ぶことは非日常であり、イベントであり、上映の前後の出来事も思い出に残ることがある。3人とも映画界で活躍するプロフェッショナルだが、一方で幼少期から映画と映画館を愛する“映画ファン”でもある。

二宮 子どもの頃から映画館は身近なものでした。僕らが小さい頃は映画館はまだ指定席じゃなかったですから、通路に座って観たり。父親からすると子どもを2時間ぐらい黙らせておけるから映画館に入れておく、って感じだったと思いますし、僕からすると『ドラゴンボール』を観られて楽しい(笑)。だから、映画館の座席が指定になる前の時代のこともやっぱり覚えてるんですよね。それこそ満員の映画館で『バトル・ロワイアル』を一番後ろで立って観たな、とか。そういう良くない環境で頑張って観たときのことの方が今も覚えているんですよ。

松岡 確かに。

二宮 座って観た映画って、どこに座ったかは覚えてないけど、座れなかった映画って覚えてるんですよ。「あのときは立って観たな」とか「階段の辺りに座って観たな」とか。実際に映画館に行かないと分からないこともあって、ここの映画館は冷房の効きが弱いな、とか(笑)。そうやって行くことで、自分の好みだったり趣味が分かってきたりする。それはすごく好きでしたね。あと、行ったら時間に間に合わなくて、隣の映画館に入って「なんで、この映画を俺は観ていなかったんだ」って思ったり。やっぱり行って観ることの楽しさってあるんですよね。それこそ小さな子どもたちが映画館に行ってアニメーション映画を観る。それだけですごい体験だと思いますし、それ以降「また映画館に行きたい!」って思うのは、いつの時代も変わらないと思います。

松岡 映画を観る前後の出来事も含めて体験、経験なのかもしれないですね。映画を観終わった後に一緒に行った人と話をすることも含めて。

二宮 そうですよね。

佐々木 映画を観た帰りにちょっと飲みに行くとか、お茶に行くとかも楽しいところですよね。

二宮 今までに一度も喋ったことのない人たちが同じ空間に集まっている。でも笑ったり、泣いたりする箇所は一緒なんですよ。そんな経験って人生の中で、なかなかないと思うんです。同じものを食べて、同じことを体験して経験してきた人たちだからこそグッとくるものがあるはずなのに、映画館に行くとそれがまったくなくて、立場とか関係なく、笑うときは笑うし、泣くときは泣く。映画の作り手としては、その観客のリアクションというものに感動しますよね。映画館って、ざわざわしていたり、食べ物を食べている音が鳴っていたりするんですけど、その雑音が急に止まる瞬間ってあるじゃないですか。

佐々木 ありますね。

二宮 あれが映画館の醍醐味だと思ってるんです。なんか急にみんなの音がパッと止まる。不思議とそうなるんですよね。

佐々木 それは……いい話ですよね。

二宮 あれはやっぱり映画館じゃないと、全然知らない人たちと一緒に観ないことには起こらない。自分の好きなタイミングで一時停止したり、トイレに行ったりできる環境では起こらない映画館の楽しみ方ですよね。

自分の家のようにくつろげる映画館ワンデーパスが欲しい

近年はデジタル配信やライブビューイングなど映画を取り巻く環境にも大きな変化が訪れているが、映画館の力は衰えることはなく、より良い環境で映画を楽しみたい人、映画館を好きな人は増えているのではないだろうか。好きな映画を何度も観に行くだけでなく、映画館で見つけた新しい映画を観てみることで、さらに世界が広がり、これまで以上に映画を好きになるかもしれない。

佐々木 僕が若いときよりも映画に対して熱心な若い方は増えていると思いますし、地に足のついた盛り上がりを感じています。

松岡 好きな映画だったら何回でも観ることができますし、1回観たけど「うーん」と思うものもあるかもしれない。だけど、お客様がまた映画館に戻ってきてくださるのは、我々が提供しているサービスや、そこで上映されている作品が、鑑賞料金に対して「それ以上の価値がある」と感じていただいているからだと思うんです。だからこそ、我々は現状に安住するのではなくて、もっと施設も良くしていかないといけないですし、作品に対するハードルも年々、高まっているのを感じます。

佐々木 二宮さんのご活躍もあってのことですけど、ここ数年、邦画が盛り上がっているのを感じるんです。新しい才能が出てくる場所として映画館が注目を集めている。もしかしたら撮影環境など厳しいのかもしれませんが、そんな中で新しい俳優さんや監督も出てきて、作り手のみなさんが良いものを目指してくださることで、我々、映画館のビジネスが成り立っている。ですから、そこは本当にありがたいことだと思っていますし、“新しい才能が出てくる場所”という点で言うと、やはりミニシアターの存在はとても大事だと思います。

二宮 映画館の質は間違いなく上がっていると思います。今の時代だったら、やっぱり“映画館ワンデーパス”とか欲しいですもん。テーマパークでもワンデーパスがありますよね。そんな感じで映画館で1日、自分の家みたいにロビーで過ごして、まずはこっちのスクリーンで観て、またロビーで休憩して、次はこっちのスクリーン。

松岡 いいですね!

佐々木 面白い!

二宮 自分でスケジュールを組んで1日過ごせる。

松岡 うちと佐々木さんのところ、どっちが先にやるか(笑)。

二宮 朝から映画館に行って“朝活”して、別の場所で食事して、また映画館に戻ってきて……とかできるわけですよね。

佐々木 いいですね。「シークレットシネマ」は今後も二宮さんには登場していただきたいです!

二宮 もちろんです! アンバサダーがどんどん増えていってもいいですしね。

<開催概要>
「シークレットシネマ」

6月25日(木) 18:30 開演予定
TOHOシネマズ 日比谷+全国の対象劇場で同時生中継

※1回限りの特別上映イベントです。映画本編の上映に加え、トークショーを予定しております。
※全国の対象劇場で上映を行い、メイン会場以外はトークショーの同時中継を予定しております。
※イベントの詳しい情報、上映劇場は順次、公式HP・公式Xにて発表いたします。
※予定は変更になる場合がございます

取材・文:中谷祐介(ぴあ)
撮影:コウユウシエン
ヘアメイク:金山貴成
スタイリスト:福田春美

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