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松森望宏の現代的解釈が冴えわたる『十二人の怒れる男』博品館劇場で上演中

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『十二人の怒れる男』より (撮影:阿部章仁)

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レジナルド・ローズによる世界的名作戯曲『十二人の怒れる男』が、2026年6月7日(日) まで東京・博品館劇場で上演されている。

『十二人の怒れる男』は1954年にアメリカでテレビドラマとして発表され、その緻密な構成と鋭い人間描写で高い評価を獲得。57年には映画化され、シドニー・ルメット監督による作品は世界的な名作として知られる。その後、舞台作品としても、世界各国で上演され続け、密室で展開される白熱の議論劇として、現代に至るまで多くの観客を魅了してきた。

父親殺しの罪で起訴された18歳の少年。12人の陪審員たちは、ほぼ全員が「有罪で間違いない」と確信したまま陪審員室に集まり、評決を下そうとしている。しかし、たった一人の陪審員8番が「合理的な疑いがある」と異議を唱える──。これをきっかけに、激しい議論と心理戦が繰り広げられ、次第に陪審員たちの集団心理、偏見、先入観があぶり出されていく。

演出を手がけるのは、三島由紀夫作品の現代的再解釈で高い評価を受け、2022年読売演劇大賞・上半期作品賞ベスト5にも選出された『わが友ヒットラー』を手がた松森望宏。三島の硬質で詩的な言葉を、現代の分断社会や権力構造に重ねて再解釈し、ミニマルな美術と照明で、台詞や視線、沈黙の緊張感を極限まで強調し「息を飲むような濃密な会話劇」を生み出していた。

そんな松森の「古典を現代に問い直す」アプローチは、『十二人の怒れる男』でも、存分に真価を発揮されている。『わが友ヒットラー』と同様に、俳優の演技と言葉の響きで勝負し、答えを提示するのではなく、疑いや揺れ、考え続ける時間といった“余白”を観客に与えることで、古典の再現に留まらず、現代日本に刺さるエンターテインメントとして再構築している。

民主主義の脆さ、集団心理、偏見、個人の良心といった原作がもつ普遍的なテーマに、現代社会が抱える分断や、多数決に依存する危うさを重ね合わせ、今改めて「正義とは何か」「考えることをやめないことの重要性」を、観客に投げかけているのだ。

出演は、和田琢磨、中村梅雀、相葉裕樹、今江大地、陳内将、長江崚行、小松準弥、國島直希、佐藤信長、モロ師岡、大鶴義丹、そして佐藤B作。若手からベテランまで世代を超えた俳優陣が一堂に会し、12人の男たちが、それぞれの「正義」と「怒り」をぶつけ合う。

和田は、論理的で冷静に疑いを提示する陪審員8番を演じ、物語のトリガーとして存在感を発揮。理性的な陪審員4番を演じる相葉、軽薄で自己中心的な陪審員7番役の今江らフレッシュな顔ぶれが個性を放ち、ベテラン勢が人間の業(ごう)を深く表現。感情的で頑固な陪審員3番を演じる梅雀の“凄み”は、映画版キャストのリー・J・コッブを彷彿とさせる強烈なインパクトを残している。

博品館劇場というコンパクトな空間で、息づかいや視線、沈黙まで感じながら、観客がまさに「13人目の陪審員」になったような没入感が大きな魅力だ。激しい言葉のぶつかり合いに圧倒されながら、集団心理の揺らぎが生み出す、一瞬一瞬の空気の変化も、法廷劇だからこその醍醐味だ。自分ならどんな審判を下すのか? 群像劇の一員になった感覚で、正義の行方を見届けてほしい。

取材・文:内田涼 撮影:阿部章仁

<公演情報>
『十二人の怒れる男』

作:レジナルド・ローズ
翻訳:小田島恒志・小田島則子
演出:松森望宏

出演:
和田琢磨
中村梅雀 相葉裕樹
今江大地 陳内将 長江崚行 小松準弥 國島直希 佐藤信長
モロ師岡 大鶴義丹
佐藤B作

福山潤(声の出演)
今井聡

2026年5月30日(土)~6月7日(日)
会場:東京・博品館劇場

チケット情報:
https://w.pia.jp/t/angrymen12/

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