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中村獅童『子連れ狼』で熱演 小川家ゆかりの俳優たちが集う「六月大歌舞伎」開幕

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昼の部『子連れ狼』より 左から)お浜=中村七之助、拝一刀=中村獅童、拝大五郎=中村夏幹

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6月3日、歌舞伎座6月公演「六月大歌舞伎」が初日の幕を開けた。萬屋錦之介ゆかりの6月興行らしく、本名が「小川」姓の萬屋・播磨屋の俳優たちが一堂に会し、昼夜を通して豪華な舞台を繰り広げる。中村獅童が叔父の当り役『子連れ狼』に挑み、中村時蔵は歌舞伎座で初めて雪姫を勤めるほか、小川家ゆかりの俳優17名が出演する『華舞於河賑 俄獅子』、勘九郎・七之助・松也による『盟三五大切』も上演。古典の様式美からスケール感あふれる人間ドラマまで、見どころ満載の初日の舞台をオフィシャルレポートとともにお伝えする。

昼の部の幕開きは、時代物の傑作『祇園祭礼信仰記(ぎおんさいれいしんこうき) 金閣寺(きんかくじ)』。

昼の部『祇園祭礼信仰記 金閣寺』より 将監息女雪姫=中村時蔵

歌舞伎の「三姫」と呼ばれる女方の大役・雪姫には、一昨年の6月歌舞伎座で父から時蔵の名を継承した中村時蔵。時代物から世話物まで女方の大役を次々と演じ、新作歌舞伎でも歌舞伎 NEXT『朧の森に棲む鬼』のツナ役で強烈な印象を残し観客を魅了、新境地を見せると、7、8月にはスーパー歌舞伎『もののけ姫』エボシ御前への出演が控える大注目の女方だ。

本年4月の歌舞伎座『本朝廿四孝 十種香』八重垣姫で「三姫」を完演した時蔵が、歌舞伎座で初披露となる雪姫に期待が高まる。「国崩し」と呼ばれるスケールの大きな敵役の松永大膳(史実の松永弾正)には三度目となる中村獅童。颯爽とした捌き役の此下東吉(史実の木下藤吉=豊臣秀吉)には今回が初役となる中村隼人。さらに中村錦之助、中村歌昇、中村種之助、中村米吉が揃い、かつてない「小川家」による『金閣寺』となり、古典歌舞伎の多彩な役柄が揃い繰り広げる絢爛豪華な一幕となる。

昼の部『祇園祭礼信仰記 金閣寺』より 左から)将監息女雪姫=中村時蔵、松永大膳久秀=中村獅童

桜が咲き誇る金閣寺。慶寿院尼(中村錦之助)を幽閉し立て籠もるのは、天下を狙う松永大膳(中村獅童)。弟の鬼藤太(中村種之助)と碁を打つ大膳へ奉公を望む此下東吉(中村隼人)が大膳の家臣・十河軍平(中村歌昇)に案内されてやってくる。一方、雪姫(中村時蔵)は大膳が父の仇と知るが、抵抗虚しく桜の木に縄で縛られてしまう。

夫・狩野之介直信(中村米吉)と別れ、嘆き悲しむ雪姫が、降りしきる桜の花びらを集めて爪先で鼠を描くと……。「爪先鼠」の場面は、歌舞伎の様式美にあふれる本作最大の見どころとなり、時蔵演じる雪姫の一挙手一投足に観客は見入る。魂の入った鼠が雪姫の危難を救う奇跡が起きると、客席からは大きな拍手が起こった。筋書の聞き書きで時蔵は「お姫様としての品格に加え、色気も必要」と語るように、悲しみにくれる雪姫の健気さと美しさに客席の視線は釘付けとなった。

昼の部『祇園祭礼信仰記 金閣寺』より 左から)此下東吉後に真柴筑前守久吉=中村隼人、松永鬼藤太=中村種之助、松永大膳久秀=中村獅童、将監息女雪姫=中村時蔵

続いては、常磐津の舞踊劇『戻駕色相肩(もどりかごいろにあいかた)』。春景色の中、中村萬壽演じる白塗りで二枚目の与四郎、中村萬太郎演じる赤っ面風の堂々とした姿の次郎作、中村梅枝演じる振袖姿の可愛らしい禿が揃うと、舞台は一枚の錦絵のような華やぎをみせる。萬壽は次男・萬太郎と、長男・時蔵の息子である梅枝との共演となり、舞台に三人が揃うと客席からは温かい拍手が送られた。

昼の部『戻駕色相肩』より 左から)吾妻の与四郎実は真柴久吉=中村萬壽、禿たより=中村梅枝、浪花の次郎作実は石川五右衛門=中村萬太郎

次郎作(中村萬太郎)が、古風な丹前六方の振りを見せ、大坂新町の廓について語ると、禿(中村梅枝)は京の島原の様子を踊り、可憐で初々しさを見せる。与四郎(中村萬壽)は江戸新吉原の風俗を踊って見せる。三人それぞれの大坂、京、江戸という三都の廓比べで舞台が華やぐ。やがて次郎作と与四郎の意外な正体が明らかになると……。「のどかな菜の花畑がお客さまに見えるよう、大らかに踊りたい」と萬太郎が筋書の聞き書きで語るように、古風な大らかさで春らしく、場内は晴れやかな雰囲気に包まれた。

昼の部『戻駕色相肩』より 左から)禿たより=中村梅枝、浪花の次郎作実は石川五右衛門=中村萬太郎

昼の部の最後を飾るのは、傑作時代劇が甦る話題作『子連れ狼』。小池一夫原作、小島剛夕作画の劇画時代劇として誕生した『子連れ狼』は、数多くの映像化がされ、中でも萬屋錦之介が主役の拝一刀(おがみいっとう)を演じるテレビドラマは空前の大ヒット。昭和49(1974)年6月には歌舞伎座「萬屋錦之介特別公演」で舞台化され、この度、実に52年ぶりに新たな脚本で歌舞伎座で上演。歌舞伎として初めて上演される『子連れ狼』は、叔父・錦之介の当り役である刺客の拝一刀を中村獅童、幼子の大五郎を獅童の次男・夏幹が勤める本当の親子共演に、観客の期待は高まる。

昼の部『子連れ狼』より 前)拝大五郎=中村夏幹  後)拝一刀=中村獅童

また、京都撮影所で数々の映像作品を生み出した映画監督の井上昌典と共に獅童が初めて演出を手掛けることも話題に。鮮烈な照明が登場人物たちの心情をも照らし出し、観る者を作品世界へ引き込む。

「新春浅草歌舞伎」など花形歌舞伎で獅童と切磋琢磨してきた中村勘九郎と中村七之助の競演、獅童と尾上松也との本水での一騎打ち、「魔道冥府」に生きる拝一刀の迫力ある大立廻りの数々など見どころ満載。 かつて江戸幕府の公儀介錯人であった拝一刀(中村獅童)は、柳生烈堂(中村錦之助)率いる柳生一族の陰謀によって妻と一族郎党を失い、生き残った幼い息子・大五郎(中村夏幹)と共に、柳生家への復讐を誓い、刺客人となり旅に出る。

昼の部『子連れ狼』より 左から)柳生軍兵衛=尾上松也、拝一刀=中村獅童

大五郎を乗せた箱車を押した一刀は、いつしか「子連れ狼」と呼ばれるように。冒頭から迫力ある大立廻りが繰り広げられ、テレビドラマの印象的な主題歌が歌舞伎座に鳴り響くと客席のボルテージは上がる。親子と同じく愛する家族を殺されたお浜(中村七之助)から仇である杉戸監物(中村勘九郎)への復讐の依頼を引き受けた一刀。母性を見せるお浜と母を失った大五郎──七之助と夏幹のふたりきりで魅せる場面は客席の涙を誘った。

出てくるだけでずる賢くいやらしい悪役だとわかる勘九郎演じる杉戸監物は、お浜に執着している。杉戸監物の愛妾お千(中村米吉)は嫉妬の炎を燃やすと……。やがて拝一刀は、柳生軍兵衛(尾上松也)との宿命的な一騎打ちに立ち向かうが……。印象的な照明の中、息を吞む緊迫した場面が続き、客席からは大きな拍手が巻き起こった。

勘九郎・七之助・松也が挑む 鶴屋南北の傑作『盟三五大切』

夜の部は、『華舞於河賑 俄獅子(はながまうおがわのにぎわい にわかじし)』で幕開き。

本名が「小川」姓の萬屋と播磨屋の17名が、ゆかりの月に一堂に会し、序幕は『華舞於河賑』と題して『俄獅子』を上演。本年は、小川家を見守ってきた三世時蔵夫人の小川ひなさんの三十三回忌にあたり、俤を偲びつつ、歌舞伎のさらなる弥栄を願っての一幕となる。

『俄獅子』は吉原仲之町を舞台に、鳶頭や芸者が顔を揃える、華やなか長唄の舞踊。「俄」とは、吉原の三大年中行事のひとつで、芸者や太鼓持が仮装して、当時話題の歌舞伎舞踊などを見せながら廓内を練り歩いたという、実に賑やかなものだ。

夜の部『華舞於河賑 俄獅子』より 前左から)手古舞=小川加奈絵、芸者=中村萬壽、手古舞=中村梅枝  後左から)鳶頭=中村獅童、鳶頭=中村錦之助、鳶頭=中村又五郎

幕が開くと、江戸の吉原仲之町に賑やかな祭囃子が聞こえてくる。鳶頭の梅吉(中村梅玉)と鳶頭の松吉(尾上松緑)が芸者(尾上辰之助)を伴って吉原へ繰り出してくる。そこへやって来たのは、鳶頭(中村歌六、中村又五郎、中村錦之助、中村獅童)、芸者(中村萬壽、中村時蔵、中村米吉)、鳶の者(中村歌昇、中村萬太郎、中村種之助、中村隼人)、手古舞(中村梅枝、中村種太郎、中村秀乃介、中村陽喜、中村夏幹、小川加奈絵)。その壮観たる光景に客席からは「待ってました!」とばかりの盛大な拍手が送られた。

夜の部『華舞於河賑 俄獅子』より 前左から)手古舞=中村夏幹、鳶頭=中村獅童、手古舞=中村 陽喜  後左から)鳶頭=中村又五郎、鳶頭=中村歌六、鳶頭=中村梅玉、芸者=中村萬壽

吉原の様子を描いた洒落た歌詞に合わせながら芸者と鳶頭が息の合った踊りを見せ、鳶の者たちの威勢の良い獅子舞、手古舞たちの踊り、さらにはお面を用いた踊りで、場内は一層華やかな雰囲気に。歌舞伎の様式美あふれる所作ダテの優雅さには、観客もうっとりと魅せられる。『華舞於河賑』の通り、小川家の面々が顔を揃えた花が舞うように賑やかな舞台に温かな拍手が送られた。

夜の部『華舞於河賑 俄獅子』より 前左から)手古舞=中村秀乃介、鳶頭=中村又五郎、手古舞=中村種太郎 後左から)鳶頭=中村錦之助、鳶頭=中村梅玉

続いては、通し狂言『盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ)』。

四世鶴屋南北が「忠臣蔵」の世界を用い、南北ならではの張り巡らされた趣向が冴える生世話物の名作だ。初演当時には「近年になきおもしろき作」と評されたが、その後上演は途絶えていた。昭和40年代の南北ブームの中で舞台や映画で取り上げられ、今からちょうど50年前の昭和51(1976)年に歌舞伎で復活上演されて好評を博し、以降、再演が重ねられている。今月は、中村勘九郎と尾上松也が日替りで薩摩源五兵衛と笹野三五郎、中村七之助が芸者小万を勤める清新な配役。同世代の三人は、コクーン歌舞伎『三人吉三』で作品に新たな光を射し込むなど、観客を魅了してきた。三人で初めて上演する『盟三五大切』に期待が高まる。

夜の部『盟三五大切』より 薩摩源五兵衛=中村勘九郎
夜の部『盟三五大切』より 左から)笹野屋三五郎=尾上松也、薩摩源五兵衛=中村勘九郎、芸者小万=中村七之助

夫婦であることを隠す船頭の笹野三五郎(尾上松也)と芸者の小万(中村七之助)は、三五郎の父が旧主のために必要な百両の金を用立てるために、小万の客の薩摩源五兵衛(中村勘九郎)を騙して金を巻き上げる。源五兵衛は主君の仇討ちの徒党に加わる大望を持ちながらも、小万に惚れるがゆえに、三五郎の甘言につられてしまう。

夜の部『盟三五大切』より 左から)薩摩源五兵衛=中村勘九郎、芸者小万=中村七之助

幕開きは大川が流れ込む佃沖に舟を浮かべた三五郎と小万がじゃらつくユーモラスな場面から一転、月が出て明るくなると源五兵衛が乗る屋形船が現れ、勘九郎演じる源五兵衛の姿が現れると、どこか不穏な空気が流れる。やがて、三五郎と小万の悪巧みが明らかになると、武士の面目を潰された源五兵衛は尋常ならざる行動に出て……。

夜の部『盟三五大切』より 左から)笹野屋三五郎=尾上松也、芸者小万=中村七之助
夜の部『盟三五大切』より 薩摩源五兵衛=中村勘九郎

凄惨な殺しの場面も、歌舞伎の様式美で魅せ、スリリングでセンセーショナルな展開に観客は固唾を呑んで見守る。勘九郎は筋書の中で「因果応報、人間の業、人間とは何と愚かなものかを描く、鶴屋南北らしさが詰まった作品」と話すように、「忠臣蔵」の世界を踏襲し、『東海道四谷怪談』の後日談も差し込まれる巧妙な南北の趣向がふんだんに盛り込まれた名作の上演に、客席からは大きな拍手が送られた。

「六月大歌舞伎」の上演は6月25日(木)まで、東京・歌舞伎座にて。


<公演情報>
歌舞伎座「六月大歌舞伎」

【昼の部】11:00〜
一、『祇園祭礼信仰記 金閣寺』
二、『戻駕色相肩』
三、『子連れ狼』

【夜の部】16:30〜
一、『華舞於河賑 俄獅子』
二、通し狂言『盟三五大切』

2026年6月3日(水)~25日(木)
会場:東京・歌舞伎座

【休演】10日(水)、18日(木)
※昼の部:3日(水)、4日(木)、5日(金)、15日(月)、16日(火)、17日(水)、19日(金)、23日(火)、24日(水)、夜の部:20日(土)は学校団体来観

終演予定時間:
昼の部 午後3時20分頃/夜の部 午後8時47分頃

※無断転載禁止

関連リンク

チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2668650

公式サイト:
https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/972/

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