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こんな木村多江、見たことない! 初の舞台主演作『わたしの書、頁を図る』でロックな新境地が開花

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『わたしの書、頁を図る』稽古場から:木村多江

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紀伊國屋書店創業100周年記念公演『わたしの書、頁を図る』が、2026年7月19日(日)まで、東京・紀伊國屋ホールにて上演中だ。演劇プロジェクト「EPOCH MAN」の主宰であり、第31回読売演劇大賞において3部門受賞の快挙を遂げた小沢道成による最新作。本稿では開幕に先がけて行われた通し稽古の様子をお届けする。

図書館職員の柳沢町子(木村多江)は、何の変哲もない退屈な時間を過ごす中で、ふと見かける利用客らの人物像や日常を妄想しては、また現実へと引き戻される日々を繰り返していた。しかし、突如現れた年下の青年によって大きく心を揺さぶられ、常連客たちの真の姿や想いを知っていくにつれて、彼女は心の中で葛藤し、変化していく……。

本来なら、会話も物音も厳禁であるはずの図書館だが、『わたしの書、頁を図る』の舞台となる図書館は、どこか騒がしい。不登校の中学生(光嶌なづな)、無職の男(中井智彦)、売れない舞台役者(坂口涼太郎)、現実逃避する主婦(猫背椿)。町子が観察する常連たちは皆、個性的。だが、周囲に馴染めず、それぞれが心の傷を見せまいと“鎧”をまとっている。

そこに現れたのが、映画監督を自称する青年・岸口慶太(味方良介)。町子の姿を「撮らせてほしい」と強引にカメラを向けるが、それをきっかけに、町子をはじめとする登場人物それぞれに隠された本音が映し出され、平穏に見えた日常がドラマチックに揺れ動く。

『わたしの書、頁を図る』稽古場から:味方良介
『わたしの書、頁を図る』稽古場から:光嶌なづな

物語に引き込まれながら「いつの間にこんな展開に?」「あれ、急に形勢逆転しているんだけど?」と、気づかぬうちに人間関係や世界観までもガラッと変わるスリリングな感触が魅力だ。最初は、町子の妄想によって生み出された“テンプレ”に見える常連たちは、次第に多面的で愛おしい人間性が深掘りされていく。

『わたしの書、頁を図る』稽古場から:中井智彦
『わたしの書、頁を図る』稽古場から:坂口涼太郎
『わたしの書、頁を図る』稽古場から:猫背椿

そして、何よりも主人公・町子の変化がすさまじい。傷つきたくないから誰よりも“分厚い鎧”をまとう彼女が、1枚ずつその防具をはがし、歌い、叫び、踊り、感情の嵐を巻き起こす。こんな木村多江、見たことない! 思わず、そう声をあげたくなる俳優としての新境地は絶対に見逃してほしくない。

少し意外にも思ったが、本作は木村にとって、初の主演舞台となる。主人公の町子は、演出の小沢が「ロックな姿が見たい」と当て書きしたキャラクターだ。かつては“薄幸”のイメージが先行した時期もあった木村だが、確かに一歩踏み出すロックな町子の姿は、俳優として固定概念を覆そうと苦悩し、本作では舞台初主演という新たなステージに挑む木村本人と重なるのかもしれない。もちろん「他者と関わり、自分も変わりたい」という願いは、現代人なら誰もが抱くもの。その痛烈なまでの共感が、町子を通して、客席にも届くはずだ。

『わたしの書、頁を図る』稽古場から

それと同時に、他者との向き合い方も見直したくなるのが『わたしの書、頁を図る』の効用だと感じた。「人は見かけによらぬもの」ということわざがあるが、図書館を舞台にした本作には、“Don't judge a book by its cover.”(本の中身を表紙で判断するな)という英語圏の慣用句がしっくり来るかもしれない。

町子は、図書館の常連たちやカメラを回す慶太のことを、最初は“表紙”しか見ずに、その人となりをあれやこれやと妄想していた。しかし“頁”をめくるたびに、相手の本音や本性に触れ、一喜一憂しながら、少しずつ理解を深めることでしか、お互いを分かり合えないという現実に直面する。それは自分を見つめ直す機会でもあり、観客も町子の物語こそが“わたしの書”だと強く実感できるはずだ。

『わたしの書、頁を図る』稽古場から:木村多江

ストレートプレイの枠を超えて、これまで数多くの小沢作品に携わってきたオレノグラフィティが創り出すオリジナル楽曲が、個性豊かな登場人物の人生を躍動させる。キャスト陣は歌唱に加えて、楽器の演奏も披露。坂口によるテナーサックスの演奏は、出色だ。慶太を演じる味方は不器用なまでに、物語をかき乱し、光嶌は儚くも芯の強い少女を好演。中井による多彩な表現、猫背が見せる絶妙なリアリティが図書館をカラフルに彩っている。

題名やあらすじ――つまり“表紙”だけでは計り知れない魅力に溢れているのが『わたしの書、頁を図る』だ。

本作の構想について小沢は「図書館を舞台にした“華やかな”物語が観てみたい」とコメントを寄せているが、照明や映像演出が加わることで、まさにその通りの舞台になることは間違いない。本公演は2027年に創業100周年を迎える紀伊国屋書店の創業100周年記念公演として、紀伊国屋ホールで上演されている。本に囲まれた空間に位置する、伝統ある劇場で“書”と人生にまつわる物語に触れるのもまた、忘れがたい演劇体験になりそうだ。

取材・文:内田涼

<公演情報>
紀伊國屋書店創業100周年記念公演
『わたしの書、頁を図る』

作・演出・美術:小沢道成
提携:紀伊國屋書店
企画・製作:メディアミックス・ジャパン(MMJ)

出演:
木村多江
味方良介 光嶌なづな 中井智彦
坂口涼太郎 猫背椿

2026年7月3日(金)〜19日(日)
会場:紀伊國屋ホール

チケット情報:
https://w.pia.jp/t/watashinosho/

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