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團子らスーパー歌舞伎の新章が開幕! 鮮烈さあふれる『もののけ姫』

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スーパー歌舞伎『もののけ姫』囲み取材から 左から:エボシ御前=中村時蔵、アシタカ=市川團子、サン=中村壱太郎 (C)松竹

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三世市川猿之助(二世猿翁)が歌舞伎の伝統と斬新でダイナミックな演出とを融合させた“スーパー歌舞伎”を世に放ち、一世を風靡してからちょうど40年。猿翁を祖父に持つ市川團子と、その父・市川中車ら澤瀉屋の面々、そして中村壱太郎、中村時蔵、市川門之助という強力な布陣で、新作『もののけ姫』が7月3日に幕を開けた。原作はもちろん、世界中で愛され、その複層的なストーリーで映画史のマスターピースともなっているスタジオジブリの同名映画(宮﨑駿原作・脚本・監督)。前日の7月2日に行われた囲み会見とゲネプロの様子をお届けする。

ツケの音が入って幕が開くと、そこはアシタカ(團子)たちが住む村。村人たちが勇壮な祭りを楽しんでいるところへ、タタリ神と化したナゴの守(猪神)が現れる。荒ぶるタタリ神にやむなく矢を放つアシタカだったが、右腕に呪いの刻印を刻まれてしまい……。
スーパー歌舞伎らしく、物語は冒頭からスピーディーに展開。花道からヤックル(歌舞伎の“馬”と同じく、小道具の中に二人の役者が入って動く)に乗って颯爽と登場する團子は、凛々しさと清冽さがアシタカそのもの。呪いを断つために村を去り、西へと向かうことになる場面では、巫女のヒイさま(市川笑也)に“曇りのない眼(まなこ)で物事を見定めるなら、呪いを断つ道が見つかるかもしれん”と告げられる。村の長の後継者として育てられたアシタカと、まだ22歳ながら澤瀉屋の中心に立つ團子。静謐さと共に熱い想いを内面に秘める両者共通の佇まいがあるからこそ、本作は最後まで説得力を持って進んでゆく。

(C)松竹

旅の途中のアシタカが、負傷したタタラ場(エボシ御前が統率する製鉄所)の甲六(市川青虎)を助けたところへ、エボシ御前(時蔵)との攻防で傷ついた犬神・モロの君(市川笑三郎)を連れたサン(壱太郎)が現れる。印象的なのは、その眼差しだ。歌舞伎の演目では女方としてなよやかな風情を漂わせる壱太郎だけに、アシタカに向ける目もどこか寂しげで、探るような暗い情感が本作ならではのサン像。一方で、山犬に育てられた少女らしいハードな立廻りや、通常は立役(男役)がする、ある動きを見せる場面もあり。「少女と獣を掛け合わせた“歌舞伎の女方”になるんじゃないか」(6月に行われた製作発表より、壱太郎の発言)というその表現に注目したい。

(C)松竹

スーパー歌舞伎は、猿翁が「現代の人にも歌舞伎の魅力を伝えたい」という精神のもと創られたため、ストーリーはほぼ現代語のセリフと共に進む。もちろん随所に歌舞伎の手法が取り入れられてはいるものの、鮮烈さを放つ團子のアシタカと壱太郎のサンは『もののけ姫』の世界観にすんなりと馴染む。そのセリフも原作通りだが、スーパー歌舞伎に長年携わり、本作でも演出を手掛ける横内謙介は“名セリフ”として知られる部分をことさらに強調していない。ズームアップが重要な映画と、舞台の演出とは異なるということだろう。その分、前後の文脈から連なる名セリフを改めて受け取る愉しみが生まれたといえそうだ。

もうひとりのメインキャストであるエボシ御前役の時蔵は、古典歌舞伎の大役を次々に勤めるなど、若手では群を抜いた実力で知られる女方。エボシ御前の登場シーンから目の動きひとつ、笑みひとつだけで場を制する存在感はさすがのひと言だ。女たちや病める者を温かく見守りながらタタラ場を統率する一方、村の発展のためにはシシ神(森の奥に棲む神/團子の二役)を殺めることも意に介さない。そんな多面性を持つ女性像を演じる時蔵の、抑制の美にあふれた一挙手一投足に目を奪われた。

(C)松竹

スタッフとキャストの皆で創り上げたスーパー歌舞伎の新作

6月の製作発表では、スタジオジブリの鈴木敏夫代表取締役プロデューサーから「宮﨑は(『もののけ姫』は)時代劇だよ、チャンバラなんだよ、と。だから歌舞伎になることはごく自然な流れじゃないかって話していました」との発言も聞かれた本作。その言葉通り、立廻りやアクションシーンもふんだんに盛り込まれているが、圧巻なのがモロの君(笑三郎)と猪神の長老・乙事主(中車)の立廻りだ。重量級の衣裳をまとう両者が斬り結ぶだけでも見応えがあるが、猿翁門下の女方として古典歌舞伎からスーパー歌舞伎まで高い実力を発揮してきた笑三郎と、46歳で歌舞伎界入りして以来研鑽を重ね、今では古典でも評価を得ている中車(俳優名は香川照之)が並び立つ頼もしさ。さらに一筋縄ではいかないジコ坊に扮する市川猿弥(一本歯下駄も再現!)や、甲六役・青虎とトキ役・笑也(ヒイさまと二役)夫婦のおかしみ。門之助が演じるエボシ御前の近侍ゴンザの憎めなさ。そして舞台に立つ隅々の役者までセリフが明瞭に聞こえる安心感まで、すべてが揃っての“スーパー歌舞伎”なのだと改めて感じられた。

(C)松竹
(C)松竹
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初日の前日に行われた囲み会見では、團子と壱太郎、時蔵の3人が登壇。冒頭では緊張気味の表情も見られたが、質疑応答の辺りから次第に笑顔が漏れるように。「稽古場で印象に残っていることは?」と問われると、「演出の横内さんが歌舞伎ともののけ姫との狭間で『ここはどうしよう』と悩んでいる時に、すぐに(演者の)数人から『こうすればどうでしょうか』と意見が出て、皆で創っていったこと」と答えた團子。「歌舞伎は工夫の歴史だと思っているので、皆が同じ熱量で創れたというのが嬉しかったです」と振り返る。隣の壱太郎もうなずきながら、「自分の培ってきた経験はもちろんですが、横内さんを筆頭に皆が意見を出し合うことで、今まで気づかなかった自分自身の発見や役の深掘りが出来た。とてもいい稽古場だったと思っています」と感慨深げだ。一方の時蔵は「6月末まで歌舞伎座に出ていたので、そこにはあまり参加できなかったんですけども」と断りつつ、「ヤックルの意外な大きさと、コダマの可愛さでしょうか(笑)。稽古場で初めて見た時にとても印象的でした」と、多くの観客がとりこになるであろうポイントをアピールした。

最後に團子から「初めて歌舞伎をご覧になる皆様にも、初めから最後まで分かりやすく、スーパー歌舞伎の世界も『もののけ姫』の世界も両方を楽しんでいただける作品だと思っています。我々一同、お客様に感動を届けられるように毎日励んでまいりますので、ぜひ新橋演舞場に足をお運びいただけたら幸いです」と挨拶。和やかな雰囲気のうちに囲み会見が終了した。
『もののけ姫』の普遍的なストーリーに、クライマックスの宙乗りの“ド派手さ”などスーパー歌舞伎らしいエンタメ性を兼ね備えた本作。老若男女問わずに楽しめる貴重な舞台を、ぜひ劇場で目撃してほしい。

(C)松竹
(C)松竹

取材・文:藤野さくら

<公演情報>
スーパー歌舞伎『もののけ姫』

原作:宮﨑駿
オリジナル音楽:久石譲
脚本:丹羽圭子 戸部和久
演出:横内謙介
協力:スタジオジブリ
製作:松竹

出演:市川團子 中村壱太郎 中村時蔵 市川猿弥 市川笑三郎 市川青虎 市川寿猿 市川笑也 市川門之助 市川中車

2026年7月3日(金)〜8月23日(日)
会場:東京・新橋演舞場
★ぴあ全館貸切公演あり。8月11日(火・祝) 11:00

チケット情報:
https://w.pia.jp/t/mononoke-kabuki/

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