【インタビュー】映画『どこの町にでもある話』木村真生監督×西片明人(東北ライブハウス大作戦)――東日本大震災から15年、映画制作の経緯&ライブハウスの今を語る
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Text:高橋美穂
東日本大震災の被災地にライブハウスを作るプロジェクト「東北ライブハウス大作戦」で完成した宮城・石巻 BLUE RESISTANCE、岩手・大船渡 KESEN ROCK FREAKS、岩手・KLUB COUNTER ACTION MIYAKO。そのうちのKLUB COUNTER ACTION MIYAKOを舞台にした映画『どこの町にでもある話』が、全国の映画館とライブハウスで上映されている。
前作『東北ライブハウス大作戦ドキュメンタリームービー』(2013年公開)でも監督を務めた木村真生は、「もう一回、10年後や15年後の『東北ライブハウス大作戦』まで追って映画を作らないと意味がない」と、今作の構想を温めていたという。そして、3カ所のなかで宮古がフォーカスされた理由は、震災の年=2011年に生まれた宮古育ちのシンガーソングライター・中村旭を筆頭に、“映画のなかで説明しなくても今を物語れる”登場人物が揃っていたから。今作には、ライブハウスのオーナーの太田昭彦、ライブハウスのスタッフのジュン・ランボルギーニ、宮古を中心に活動するシンガーソングライターの福川哲也、そして中村と、メインは4人しか出演していない。しかし、だからこそ脚色のない言葉と姿が迫ってくる。
全国から支援を受けた「東北ライブハウス大作戦」を発端としながら、宮古の風土と共に育ったKLUB COUNTER ACTION MIYAKO。映画を通して見えてくるのは、震災体験のリアルや、金銭面の苦悩など、希望だけではない赤裸々な実情だ。“被災地”“ライブハウス”“地方都市”など、自分自身の関心の置きどころによって、十人十色の答えが見えてくる映画だと思う。
今回は監督である木村と、「東北ライブハウス大作戦」を立ち上げたサウンドエンジニアチーム・SPC peak performanceの西片明人に、映画についてはもちろん、改めて「東北ライブハウス大作戦」とは? そしてふたりにとってライブハウスとは?と、仕事や生き様の根幹まで見えてくるような深い話まで語ってもらった。
――宮古をはじめとして、「東北ライブハウス大作戦」のライブハウスには、ツアーバンドも来ているじゃないですか。そういった外側の視点のほうがライブハウスに通っている人たちには馴染み深いと思うんですが、『どこの町にでもある話』は、地元のシンガーやライブハウスのスタッフという内側にフォーカスを当てています。それはなぜなんでしょうか?
木村真生 地元のアーティストで作ることは決めていたんです。名前があるバンドさんを追っかける手法は主流だと思うんですけど、それは誰かがやるし、悪い言い方をすると誰でもできるから。だからこそ旭ちゃんや哲也くんの歌や曲のクオリティを確かめたり、インタビューがどんな感じになるかを知るために、事前にも会いに行って。名前があるミュージシャンじゃないからこそ、録音はこだわりましたね。演奏シーンはCDをレコーディングしているエンジニアに録ってもらって。旭ちゃんはキービジュアルにも登場してもらっているので、言ってしまえば希望の象徴というかね。映画そのものは希望にあふれてはいないというか、むしろ「未来あるの?」って思う人もいるかもしれないですけど。でも、それでもあがいて希望に向かっていくのが音楽だと思うので。それがキービジュアルで伝わるかなって。


――また、今作のなかのKLUB COUNTER ACTION MIYAKOは、ジャンルにも世代にも縛られていない、地元との敷居も低いという意味で、すごく理想的なライブハウスに見えたんです。“日常と密着しているライブハウスを作りたい”という思いは、「東北ライブハウス大作戦」を立ち上げた当初から、西片さんのなかにあったんですか?
西片明人 ありました。それがライブハウスだと思っているので。でも、自分が思い描いているライブハウスにしようとは思っていなかった。まず震災があったとき、集まる場所もなかったんですよ。避難所とか“集めさせられる場所”はありましたけど。そうじゃなく、自分たちの意思で集まれる場所を作りたいっていうのが、「東北ライブハウス大作戦」の大前提だったんです。ただ、15年たって、学校帰りにふらっと行っても、KLUB COUNTER ACTION MIYAKOは営業していないときもあるんです。だから現状は、日常のなかにあるわけではなく、町に存在するライブハウスだと思うんですよね。ミニマムのコミュニティが表現されていて。そういう意味でどこの町にでも当てはまるんですよね。タイトルに集約されていると思います。公民館みたいな使い方をしてほしかったんですよ。合唱コンクールの発表の場所にしても、カラオケをやってもいいし。僕は“ライブハウスなのにアイドルが出ているの?”みたいに思う世代ですけど、もちろんアイドルが出てもいいと思う。僕のなかでの敷居が低くなったっていうか、変わっていったんですよね。フォーマットを作ること自体がライブハウスとしてナンセンスだと思うし。
――宮古という町の規模だと、公民館的なジャンルレス感を実現しやすいと思います。
西片 大都市だと、ライブハウスも公民館も増えるので、用途が細分化されていく。それが都市の利便性だと思うので。囲碁将棋が好きな爺さんは、都会では囲碁将棋クラブに行くんです。麻雀がやりたければ雀荘に行く。でも、それ単独で成り立たない地方の、宮古のような町は、いろいろ合わさった場所じゃないと人は集まれないし。あと、分散させたくもなかったし。それが15年たった今の、ライブハウスとしての姿なんじゃないかなと思うんですけどね。たとえば僕がパチプロだったらパチンコ屋を作ったと思うんです。僕が作れる場所がライブハウスだったっていう。だから、あそこで麻雀やってもらってもいいんですよ。(映画にも出演するスタッフの)ジュンはあそこで英会話やギターを教えていますし。
――“こういうものもライブハウスなんだ”っていう気づきにもなりますね。
西片 それはそうでしょうね。とはいえ、もともとなんでもありなんで、ライブハウスって。そこにルールはなくって、自己責任なので、ケガをしても、ものを盗られても。だから、あまりよくないイメージもあると思うんですけど。でも、なんでもありっていうのは悪い意味だけじゃない。だって、音出せてスペースがあるんだから、いろいろできるじゃないですか。



――木村さんが思う“ライブハウスの在り方”についてもお伺いしたいです。
木村 最近思うのは、細分化されるのはいいところもあればよくないところもあるなって。みんなスマホで検索していると、好きなものしか見ないというか。YouTubeも“あなたこれ好きでしょ”っていうのを出されるのを見るだけで。こんな映画があったんだ!っていう出会いはなかなかない。それは音楽も同じで。私が若い頃に通っていたライブハウスは、そういうことを知れる場所でもあったんですよね。好きなバンドを観に行って、初めて会う人と話して、全然知らなかったバンドを教えてもらうとか。たまたま映画を好きな人がいたら、映画も教えてもらったりして。そうやって世界が広がるというか。今、みんなどこでそういうことを知ってるんだろうな?っていう気もしてるんですよ。そこまであの映画で語る気はなかったんですけど、基本的な何かを伝えたいっていうのはありましたね。自分はライブハウスに通っているのが当たり前だけど、当然ライブハウスに行ったことがない人のほうが多いじゃないですか。この映画がライブハウスに来てくれるきっかけになればいいですけど、そこだけに収まらない映画を目指したのかもしれないです。自分にとってのそういう場所に置き換えて考えてみてもらえたりしたらいいなって。人と人との交流がいちばん世界を広げていくと思うので。宮古の規模感も、そこを感じられるんですよね。映像っていう目線で言っても、作りやすいというか。基本的な営みが凝縮されているので。
――ライブハウスが好きな人と、ライブハウスに行ったことがない人では、また違った感想が聞けるだろうし。あるいは東京に住む人と地方都市に住む人では印象も違うでしょうし。いろんな立場の人の感想を聞いてみたくなる映画ですよね。
木村 ありがとうございます。100人が観て100人とも面白いって言う映画なんて、面白いわけねえじゃんと思っているので。100人観て100通りの意見があってほしいというか。みんな、映画に答えを欲しがるじゃないですか。これって何を言いたいの?って。でも私は、その答えを知っているのは観た人だよ、って思っていて。もちろん私のなかに答えはあるんですけど。西片さんがやってきた「東北ライブハウス大作戦」も、一方向だけじゃなく、何方向にも見え方があると思う。そういうことも言いたかったんだと思います。「東北ライブハウス大作戦」を、人から伝え聞いた話で理解したつもりにならないでくれ、っていう。私がそんなことを勝手に言っていいのかはわかんないですけど(笑)。


――お話を伺って、おふたりとも視野が広いなって思いました。木村さんなら映像のこと、西片さんなら音のことだけを考えているわけではないから、こういった作品や活動に結びついているんだろうなって。私事ですけど以前、PA卓にいる西片さんの後ろでライブを観ていたときに、私の子供が疲れてきているのを察したのか、スッと椅子を貸してくださったんですよね。そのときも、後ろにいる人にまで気づくんだ!って驚いたんですけど。
西片 それは集中していたからでしょうね。僕は集中していないと、音に関してだけになってしまうんです。集中していると、どこまでどう伝わっているかを感じ取れる。僕の仕事は、スピーカーから大きな音を出すだけではなく、それをどう伝えるかっていうことなので。でも、僕は自分のことを視野が広いとは思っていなくって。失敗もたくさんあるし。
木村 失敗を経て広くなったんじゃないんですか?
西片 そうかもしれないですけどね。
――最後におふたりに伺いたいのですが、今回の映画をどんな人たちに観てほしいですか?
西片 いろんな人たちに観てほしいですね。ライブハウスに行ったことがない人のきっかけになってほしいし、ライブハウスに通っている人も、出演している人も、ツアーバンドも観てほしい。震災があってライブハウスを作ったっていうことに関しても、いろんな意見があって、叩かれたこともあったし。理解者すらも不安にさせるような、無謀なプロジェクトだったし。まさにこの映画を観て「やっぱダメじゃん」って思う人もいると思うんです。それでいいと思う。でも、いつか潰す店としてオープンしたわけではないので。答え合わせは、観た人それぞれでいい。観てもらって、自分のなかの答えというか気持ちを確かめてもらえればいいんじゃないかなって思うんです。たとえば中村旭は「地元を出たい」って言っているんですね、愛してはいるけど。それって、すごくわかりやすい答えだと思ったんです。“地元を愛している”“地元を嫌い”っていうのは違う言葉ではないと思うので。僕も同じ規模感の町で育ったんで、すごく腑に落ちたというか。15年の活動のなかで、自分がやってきたことが、正しかったのか、間違っていたのかをずーっと考えていたので。そういうふうに、“自分がやっていることは正しいのか?”って考えるタイミングって、誰にでもあると思うんです。僕にとっては、自分が腑に落ちるための映画になった。だから、ライブハウスに行ったことがある人もない人も、大きな町に住んでいる人も小さな町育ちの人も、みんなが共通する何かしらが詰まっているような映画になっていると思います。
木村 前回の『東北ライブハウス大作戦ドキュメンタリームービー』は、「東北ライブハウス大作戦」が走り出した頃に作ったので、「東北ライブハウス大作戦」を紹介するための映画というか。今回は、映画として勝負できるかっていうのが大前提で。頻繁に映画を観ない人が、月に一本だけ観る映画に選んだときに「よかったな」って思ってほしい。そうしないと、ライブハウスに行ったことがない人たちには何も伝わらないと思ったので。できれば若い人に観てほしいし、海外の人にも知ってほしい。でも、誰にでも観てほしいですね。親戚が映画館に行ってくれたらしくて、それは恥ずかしかったですけど(笑)。「こんな仕事してたんだ」って言われて(笑)。でも、10年先にも観てもらえるものにはしたかった。自分が音楽に携わってきたすべてがぶちこめたとは思っています。


<作品情報>
映画『どこの町にでもある話』
公開中

【監督】木村真生
【音楽】フジイケンジ(The Birthday)、高野勲
【エンディングテーマ】The Birthday「birthday eve」
【出演】太田昭彦 / 福川哲也 / ジュン・ランボルギーニ / 中村旭
【特別出演】KO(SLANG、KLUB COUNTER ACTION)/ BRAHMAN / yasuo(雷矢、BULL THE BUFFALOS)/ 西片明人(SPC peakperformance、「東北ライブハウス大作戦」)/ 竹原ピストル
【舞台】岩手・KLUB COUNTER ACTION MIYAKO
映画『どこの町にでもある話』本予告
<上映情報>
映画『どこの町にでもある話』ライブ付き上映会
8月3日(月) 東京・渋谷LOFT HEAVEN ※舞台挨拶+ライブあり
開場 18:30 / 開演 19:00 / 終演予定 21:30
▼舞台挨拶
出演:木村真生監督 / 西片明人
▼アコースティックライブ
出演:中村旭 / 片桐(Hakubi)/ 大木温之(ピーズ)
8月4日(火) 京都・磔磔 ※舞台挨拶+ライブあり
開場 18:30 / 開演 19:00 / 終演予定 21:30
▼舞台挨拶
出演:木村真生監督 / 西片明人 / 能野哲彦(プロデューサー)
▼アコースティックライブ
出演:中村旭 / 片桐(Hakubi)/ 卓真(10-FEET)
【チケット情報】
全自由席:3,500円(税込/ドリンク代別)
映画『どこの町にでもある話』上映会
8月3日(月)・4(火)・6(木) 大阪・iiie(イーエ)
開場 19:30 / 開演 20:00 / 終了予定 21:10
8月5日(水) 大阪・iiie(イーエ) ※舞台挨拶+座談会あり
開場 18:30 / 開演 19:00 / 終了予定 21:00
出演:木村真生監督 / 西片明人
8月7日(金) 鹿児島・Live HEAVEN ※トークショーあり
開場 19:00 / 開演 19:30 / 終了予定 21:00
出演:木村真生監督 / 安田潤司(映画監督)
8月12日(水) 三重・CLUB CHAOS ※舞台挨拶あり
開場 18:30 / 開演 19:00 / 終了予定 20:30
出演:木村真生監督
8月16日(日) 北海道・KLUB COUNTER ACTION
昼の部:開場 15:00 / 開演 15:30 / 終了予定 16:40
夜の部:開場 18:00/ 開演 18:30 / 終了予定 19:40
【チケット情報】
全自由席:2,000円(税込/ドリンク代別)
オフィシャルサイト
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