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夢二と気鋭の若手画家が時を超えたコラボレーション『夢二生家企画展 旅の巻』『旅する画家 武久輝也』開催中

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『夢二生家企画展 旅の巻』で展示を行っている日本画家の武久輝也さん。玄関の土間に展示された《群像》の前で

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今年12月に創立60周年を迎える岡山市の夢二郷土美術館。その記念企画の一環として夢二生家記念館・少年山荘では『夢二生家企画展 旅の巻』が開催されている。

夢二は日本各地を旅して描き、晩年には欧米外遊を果たすなど、生涯を通して旅を愛した画家だった。本展は、旅をテーマにした作品を中心に夢二作品を紹介するとともに、夢二芸術に影響を受けた若手の日本画家武久輝也の作品を同時に展示する意欲的な試みだ。

岡山市の夢二美術館本館から東に車で40分ほど離れた瀬戸内市にある「夢二生家記念館」は、夢二が幼年期から16歳まで過ごした生家を記念館として一般公開している分館だ。通りを挟んだ隣の敷地には、夢二が自ら設計し晩年暮らした東京のアトリエ兼住居を復元した「少年山荘」がある。近くには夢二の墓所もあり、この一帯は、夢二巡礼の最も重要な聖地でもある。

夢二の生家を整備し公開している夢二生家記念館 撮影:源賀津己

低い土塀に囲まれた築約250年の茅葺屋根の生家の前に、精悍な面持ちの青年が立っていた。この青年が、日本画家としてのキャリアを踏み出して間もない26歳の武久輝也さんだ。

武久輝也さん

武久さんは2000年、岡山市に生まれた。幼少期から故郷が誇る夢二作品に魅せられ、13歳の時には、夢二郷土美術館のこども学芸員として活動。夢二の表現と人生に多くを学んだという。東京藝術大学の日本画科を卒業後、桃太郎伝説でも知られる地元の吉備津彦神社で約1年間の奉仕をし、干支の蛇の巨大な絵馬を半年かけて描き奉納した。神社の縁日で見かけたキッチンカーに着想を得て、キッチンカーを画室に改装した「アトリエカー」で日本の各地を巡りながら、現場で描くなど、新たな日本画表現に挑戦している。

「地元を代表する、尊敬する作家(夢二)の生家で、地元の人々を始め多くの方々にお披露目できる最高の機会をいただき光栄です」 と、武久さんは涼しげな笑顔で話してくれる。

武久さんとともに各地を旅しているアトリエカー

記念館の玄関を入るや、土間に展示された絵画作品《群像》にまず度肝を抜かれる。それは、武久さんが2023年、卒業制作で描いた作品で、竹久夢二の叙情的な世界観とも武久さんの爽やかな雰囲気ともかけ離れていた。何か、強烈なパワーが漲っている。この世のものとは思えない、珍獣や化け物、得体の知れない存在が蠢いている中、挑むような形相で睨みつる男の顔が描かれている。

「大学の卒業展前の頃は、コロナ下で、パンデミックにより世界中が不安と恐怖に包まれ、ウクライナ戦争も勃発して、混沌とした状況でした。それでも、自分は、日本画家として生きていく。芸術家として、思想家でもあり、世の中に向き合っていきたい。という決意表明でした」と武久さんは言う。

家の中に入っていくと、廊下や広間、2つの座敷、蔵を改装した企画展示室へと続く。壁や床の間に、夢二の生家や人生についての説明パネル、作品が展示され、岡山出身の歴史学者で夢二作品に造詣が深い磯田道史さんの寄託作品《少年の図》も展示されている。夢二が幼少期を過ごした四畳半の座敷には、数えで11歳の茂二郎(夢二の実名)が嫁に行く姉との別れを惜しんで書いた姉の名「竹久松香」と「竹久茂二郎」の鏡文字が連子窓の窓枠に残っている。嫁ぎ行く姉への思慕の思いが伝わってくるようだ。床の間には夢二式美人の女性像の掛け軸。夢二は母や姉に、深く愛しまれ育ったので、彼の描く女性像には、母や姉の姿が投影されていたともいわれる。

夢二が幼少期を過ごしたこども部屋。窓枠に慕っていた姉の名を書いた文字が微かに残っている

夢二のこども部屋の近くには、武久さんが幼少期に描いた《ふくろう》が展示されていて、3歳で馬の絵を描いた夢二の姿とも重なる。武久さんは、物心ついた時から「お絵かきさんになる」と画家になることが夢で、幼少期から夢二の作品に触れてきた。中学1年生の時、東京藝術大学の日本画を目指すことを決め、同じ頃、夢二郷土美術館の第二期こども学芸員として活動。その時、武久さんが選んだ夢二作品《大徳寺》についての解説文も紹介されている。広間に続く廊下には、地元の画塾で腕を磨いた14歳の武久さんが描いた、《鬼》の絵も展示されていた。

武久さんが17歳の時に描いた《鬼》

かつて蔵だった特別展示室には、美術館所蔵の夢二の肉筆作品が季節に合わせて展示されている。「旅の巻」がテーマの本展では、夢二の旅にまつわる書画、風景画、美人画などが並び、武久さんのアトリエカーの旅で描いた第一号《五浦(いづら)》も展示されていた。

特別展示室に展示されている夢二の肉筆画

「近代日本画の立役者たちのアトリエがあった茨城県『五浦』にアトリエカーで行った時に描いた絵です。今はもう、建物はないのですが、当時、アトリエがあった場所の目の前が、太平洋。足がすくむほどの崖っぷちだったんです。松があって典型的日本の風景で、夕日も美しかったのですが、厳しい環境の中で、日々研鑽をし、絵と向き合っていた岡倉天心や横山大観といった巨匠たちの姿勢を思い、ビビッときて描きました」と武久さん。

近代日本画の聖地、茨城県の五浦で描いた《五浦》

「夢二は独自の感性で世界を旅して、自分の心を素直に表現してきました。小さい時から、そういう夢二の感性、心意気を感じながら育ちました。僕自身も、空間的には日本各地、米国やヨーロッパ諸国を旅して来ました。神社での奉仕や、水墨画の勉強など歴史や先人に学ぶことは時間軸の旅で、これらの旅を通して、自分なりの表現を見つけていきたいと思います」

『夢二郷土美術館創立60周年 夢二生家企画展「旅の巻」』は夢二生家記念館からすぐの場所にある少年山荘でも開催されている
撮影:源賀津己
「少年山荘」に展示されている武久さんの作品《龍》

武久輝也
2000年岡山市生まれ。2013年に夢二郷土美術館の第2期こども学芸員活動に参加。2023年、東京藝術大学絵画科日本画専攻卒業。キッチンカーを画室に改装した「アトリエカー」で各地を旅して作品を制作する独自のスタイルを生み出す。色鮮やかなアクリル絵具や岩絵具を用い、強烈な色彩対比を用い、動物を装飾的に表現したり、超現実的な心象風景を独特な筆致で描く。一方で、北宋や明代の山水画の模写を通して、幽玄な水墨画も研究している。

取材・文・撮影:玉重佐知子

<開催情報>
『夢二郷土美術館創立60周年 夢二生家企画展「旅の巻」』
[特別企画『旅する画家 武久輝也』]

会期:2026年6月3日(水)~8月30日(日)
会場:夢二生家記念館・少年山荘
時間:9:00~17:00(入館は~16:30)
休館日:月曜(祝日・振替休日の場合は翌日)
料金:大人600円、中高大学生250円、小学生200円
公式サイト:
https://yumeji-art-museum.com/

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