『モアナと伝説の海』監督インタビュー。感情の“重み”を描く
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すべて見るディズニーの人気作を実写化した映画『モアナと伝説の海』が7月31日(金)から公開になる。監督を務めたのは、傑作ミュージカル『イン・ザ・ハイツ』や『ハミルトン』などで知られるトーマス・ケイル。彼は世界中のファンが愛する作品の魅力を継承しながら、より感情の”重み”が感じられる作品を目指したと語る。
四方を海に囲まれたモトゥヌイの村長の娘モアナは、島に異変が起こったことから旅に出る。幽閉されていた半神半人のマウイと出会った彼女は、世界を救うため、危険な冒険を繰り広げる。
本作の音楽を手がけているリン=マニュエル・ミランダとタッグを組み、数々の舞台を演出してきたケイルは、『ハミルトン』の映像版やドラマの演出も務めてきたが、満を持して本作を初の長編映画のプロジェクトに選んだ。
「私は主人公が、私は何者なのか? 私はどこに向かうべきなのか? 私はどうあるべきか? と問いかける物語を描いてきました。また私たちの遺産(レガシー)や、私たちが後世に何を残すのか、という問題、さらには家族の物語、コミュニティの中で私たちの役割がどう変化していくのかにも興味を抱いてきました。驚くべきことに『モアナと伝説の海』にはこれらの要素がすべて内包されています。
また私は何世代もの人々が揃って楽しめる作品が大好きなんです。『イン・ザ・ハイツ』や『ハミルトン』を上演している時にも、10歳の子が祖父母や親の隣に座って楽しんでくれている光景を目にしてきました。世代を超えて愛され、語り継がれる物語を生み出すことは大きな挑戦です。長く愛される物語は、家族やその関係性、対人関係、コミュニティについて描かれたものが多いと思います。私が惹かれるのは、エンターテイメントとして楽しめるのと同時に心を動かされるエモーショナルな作品をつくること。そういう作品は観客が体験した後に何かを感じたり、自分たちを省みることができるものだと思います」

ケイル監督が語る通り、本作は幅広い年齢の観客が揃って楽しむことができる内容になっている。ある観客はモアナの冒険にワクワクし、ある観客はモアナとマウイのコンビに心を掴まれ、ある観客は太平洋エリアの文化に根ざした世界観や意匠に魅了されるだろう。興味深いのは、監督が幅広い層の観客の共感を得るため、抽象性を可能な限り排除してモアナを“他にはいない固有のキャラクター”として描いていることだ。
「いまから25年ほど前、劇作家のドナルド・マルグリーズ(米国の劇作家。『ディナー・ウィズ・フレンズ』でピュリツァー賞に輝いた)がこう言っていたのです。“具体的なものを描くことで、私たちはそれを超越して普遍的なものに到達できる”と。物語により多くのディテールやニュアンスを描きこむことで、観客がアクセスできる“窓”がより多く生まれる、ということだと私は理解しています。ですから、今回の映画ではポリネシアの文化を中央に据えて、モトゥヌイという島で暮らす人々の衣服や道具を細部まで誠実に描きこんで世界を構築しました。そうすることで映画を観た方が自分自身をそこに投影することができるのです。すでに私はこの映画を世界各地の観客と共に楽しんでいますが、どのエリアの人も同じように感じてくれています。モアナの心の美しさが共感を生み出すのだと思います」

だからこそケイル監督は本作でセットや音楽やミュージカルシーン以上に、キャラクターの“表情の細やかな変化”を捉えることに力を注いだ。期待と不安を胸に生まれ育った島を出たモアナの感情は、冒険の過程で変化していく。そこで彼はモアナとマウイの表情を丁寧に描き、その延長線上にミュージカルやアクションを置いた。すべては観客の心を動かす感情がベースになっているのだ。
「素晴らしい俳優が集まったことが大きな助けになりました。かつてピーター・ボグダノヴィッチ(米国の映画監督・俳優。監督作に『ラスト・ショー』『ペーパー・ムーン』など)は“映画ではカメラがキャラクターの考えを読むことができる”と言いました。私も本作ではカメラの力を信じることにしたのです。映画では舞台と違って、カメラが俳優のセリフの間の沈黙や考えを読んでくれる。過去にドラマの演出をしたのですが、その時からカメラを使ってキャラクターの感情を描くレッスンを積んできました。
私は、血の通った俳優が演じることで、アニメーション以上に本質的で情緒的な作品、より共感を呼ぶ作品をつくりたいと思っていました。アニメーション作品の持つ躍動感は保ちながら、人間が演じることで生まれる感情の“重み”を表現したかったのです。例えば、モアナと彼女が愛するタラおばあちゃんの別れのシーンは、生身の俳優キャサリン・ランガイアとレナ・オーウェンが演じたことで、感情の“重み”が生まれたと思います」
映画『モアナと伝説の海』は、世界中の観客が愛し続けているキャラクターと物語が、より深い感情を伴って描かれる。冒険のワクワクも、モアナの葛藤と決意のドラマも、これまで以上に胸に迫るものになるはずだ。

『モアナと伝説の海』
7月31日(金)公開
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