低予算映画ながら世界中で大ウケ! 『オブセッション 災愛』主演俳優がヒットの理由を考察
映画
ニュース
マイケル・ジョンストン
続きを読むフォトギャラリー(7件)
すべて見るTOHOシネマズが“いま、気になる映画・映画人”をピックアップするイベント「TOHOシネマズ ピックアップ・シネマ」の第13回が行われ、『オブセッション 災愛』主演俳優のマイケル・ジョンストンがリモート登壇した。
ジョンストンはMTVのヒットドラマ『ティーン・ウルフ』の演技で注目を集め、映画『クルーガー 絶滅危惧種』などに出演。ゲームやアニメーションの世界でも活動する注目株だ。
彼が主演を務めた『オブセッション 災愛』は、低予算作品でありながらアメリカで驚異的なヒットを記録。その勢いが衰えることなく各国に伝播し、公開4週目で世界興収が2億ドルを突破。莫大な予算を投じた大作映画、シリーズ映画を凌駕する成績を記録している。新人監督が手がけた小さな規模の恐怖映画はなぜ、世界で熱狂的に受け入れられたのだろうか? ジョンストンにリモートで話を聞いた。
僕が演じたベアは、選択と行動がことごとく間違っている(笑)
『オブセッション 災愛』(原題「OBSESSION」)【本予告編】(1分49秒)
本作でジョンストンが演じる青年ベアは、繊細で内向的な青年だ。バイトの同僚ニッキーに想いを寄せているが、自分からアタックすることはできず同じ場所をグルグルとまわっている。そんなある日、彼はアクセサリーショップで“ワン・ウィッシュ・ウィロー(願いの柳)”を入手する。

願いを込めて柳の枝を折ればどんな願いも叶うもので、ベアは冗談半分で「ニッキーが自分のことを愛してくれるように」と願って枝を折るが、その瞬間からニッキーは超積極的にベアにアタックしてくる。ベアは急な展開に戸惑いながらも彼女の好意を受け止める。しかし、彼女の想いはエスカレートしていき、想像もしなかった事態が次々に起こり始める。

通常の映画では、罪のない人物が事件や呪いに巻き込まれるところから物語が始まるが、本作では主人公のベアが自ら枝を折って、異様な状況を呼び込んでしまう。それも自分に都合の良い展開を招くために。
「そうなんだ! 最初からベアは観客の期待をくつがえすようなキャラクターにしようって監督と話したよ。それに、監督のカリー・バーカーは本作の主人公に救いのある展開を用意したくなかったんだよ(笑)。
でも、ベアをすごい変人だったり、すごいオタクのように演じようとは思わなかった。彼はどこにでもいる平均的でイイやつのイメージなんだけど、その選択と行動が、ことごとく間違っている(笑)。だから観客も映画の冒頭では気弱な彼を応援しようと思うんだけど、物語が進んでいくにつれて『あれ? こいつ……って何?』って感じで、だんだんお腹が痛くなるような気分になってくる(笑)。そんな展開があったから、観客からいろいろ議論が起こっているんだろうね」

そう、彼が語るとおり、本作は観終わった後、必ず語りたくなる。何せ主人公は自分で何かにコミットすることもなければ、自分から行動することもない人物。急に自分の意中の女性がアタックしてきて驚きこそするが、“誰かが何とかしてくれる”マインドから脱出できない。
脚本と監督を手がけた新鋭カリー・バーカーは、既存のサスペンス、ロマンティックコメディのお約束を逆手にとって予想外の恐怖を描くだけでなく、そこに登場する恐怖描写すら時に脱臼させて笑いに変えてしまう。
「通常のロマンティックコメディだと、最後は王子様が救いに来てくれるわけだけど、この映画ではベアが“誰かが何とかしてくれる”と思っているという点で逆をいってる。そこも興味深いよね。
演じる上では僕はすべてのシーンをシリアスに演じたよ。でも監督のカリーが編集の段階でユーモアの瞬間を見つけてくれたんだ。ホラーとコメディは本当に紙一重で、怖い場面も編集やタイミングが少し違うだけで笑いになる。カリーはその点では天才的で、緊張と緩和を自在に操る傑出した才能を持ち合わせていると思う。
ちなみに彼の次回作『Anything But Ghosts』は、さっき言った“恐怖と笑い”のバランスでいうと、本作よりもコメディ、笑いの方向に少し寄った作品になっていたよ。彼の今後が本当に楽しみだよね。

実際の撮影では、監督はプレビズ(動画コンテ)を用意してくれていて準備万端の状態だった。彼のビジョンがはっきりと伝わってきたし、撮影時間は本当に限られていたけど、すべてが用意されていた。それに彼は俳優とコラボレーションしようとする監督なんだ。結果的に監督と俳優がコラボレーションした部分が作品に良い効果を生んでいるから、みんな彼ともっと仕事したくなるんだと思う。
すごく時間をかけてベアの癖や行動の仕方、声を見極めていったんだ。普通の男性に見えるような部分もたくさんあるけど、彼は自分に自信がないから落ち着いてゆっくりと話すようなことはしない。いつも何かに焦っているような、アワアワとした話し方で、声も高めになる。
それから、身体的な部分では、常に背中を丸めてスマートフォンをいじってるような身体の状態を意識した。脚本の段階ではキャラクターはほぼ白紙の状態だったから、監督と話し合いながらひとつひとつ作っていったんだよ」
現実社会で起こっている出来事と響き合う部分があったんだと思う

本作は公開後、大ヒットを記録しただけでなく各地で様々な議論や考察、感想戦を巻き起こした。自分が好きな娘が、なぜか都合良く自分に好意を寄せてくれる。アニメーションや恋愛ドラマの“あるある”展開だが、本作ではそれがホラー的な状況を生み出してしまう。だとしたら、私たちが日ごろ観ている娯楽作品に埋め込まれている“恐怖”とは何だ? あるいは本作を“男性に都合の良いファンタジーを女性に押し付けた結果、ホラー的な展開が巻き起こり、女性は逃れられない苦痛を感じる物語”だと解釈したら? 本作は手に汗握って楽しんで、映画館を“出た後”も想像したり考えたりできる作品なのだ。
「僕もそのとおりだと思う。興味深いのは、最近、若い観客の間でホラー映画の人気が復活していること。やはりホラーというジャンルは人間性に光をあてることのできるものだし、良質なホラーやスリラー作品は人間性を見せてくれるものだと思う。
『オブセッション…』もそういった意味で本当にたくさんのことを伝えてくれる、いろんな意味でメタファーがたくさん描かれた映画だと思う。それにこの映画はああしなさい、こうしなさいと言った説教臭さはないから(笑)、みんなが映画が終わった後に会話して、そのことがきっかけになってヒットしているんじゃないかな。
そういう意味では、この映画は良いタイミングで公開されたと思うよ。スマートフォンを延々とスクロールし続けることで時間が過ぎていったり、オンラインのデートアプリなんかが流行して実際に対面で人とやり取りすることが少なくなってきたり、孤独とかいろんな気持ちを他者に投影したり……そんな現実の社会でリアルタイムに起こっている出来事と、この映画が響き合う部分があったんだと思う。
この映画のすべてを誇りに思うけど、何よりも嬉しかったのは、大きな予算がなくたって、素晴らしい脚本があって、素晴らしい監督と編集と演技があれば良い映画ができるんだと思えたこと。それって逆に言うと、ここには“金では買えないもの”があるってことだと思うんだ。そう考えると、この映画に参加できたことを心から誇りに思うし、感謝したいと思うんだ」

本作を機にジョンストンへの注目はさらに高まるだろう。大作映画への出演や、新たなプロジェクトへの参加も続きそうだ。それでも限られた予算と撮影期間の中で生まれた『オブセッション 災愛』の“金では買えない魅力”は、今後も色褪せることはない。まずは初公開のこのタイミングで映画館に足を運び、上映が終わってから家に帰るまでの時間も含めて存分に楽しんでほしい。
取材・文:中谷祐介(ぴあ)
<作品情報>
『オブセッション 災愛』
上映中
(C)2026 Focus Features LLC.
フォトギャラリー(7件)
すべて見る
