『スター・ウォーズ:ビジョンズ/九人目のジェダイ』神山健治監督インタビュー 「ジェダイがかっこいいと思うためには何をすればいいだろう?」
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神山健治監督
続きを読む神山健治が総監督を務める長編アニメーションシリーズ『スター・ウォーズ:ビジョンズ/九人目のジェダイ』が、8月5日(水)からディズニープラスにて日米同時全話一挙独占配信になる。『スター・ウォーズ』のような作品をつくることを夢見て映像の世界に足を踏み入れたという神山監督は本作で何を描くのか? 配信開始前に話を聞いた。
『スター・ウォーズ』の世界をモチーフに世界屈指のアニメーションスタジオが独自の解釈で新作アニメーションを生み出すプロジェクト『スター・ウォーズ:ビジョンズ』から初の長編シリーズが誕生した。物語の舞台はジェダイもシスも消えてしまった戦乱の銀河。何者かに父をさらわれた少女カーラは、父を救いだすために冒険に旅立ち、消滅したジェダイ騎士団の復活を願う者たちと行動を共にする。彼らの前に立ちはだかるのは、黒いマスク姿が印象的な敵ナワーム。彼もまたフォースを駆使して銀河に秩序をもたらそうと考えており、カーラは熾烈な冒険の過程で自身に眠るフォースの力と向き合うようになる。

本作は神山監督が総監督を、『銀河英雄伝説 Die Neue These』シリーズの多田俊介氏が監督を手がけ、『怪獣8号』『攻殻機動隊 SAC 2045』のProduction I.Gがアニメーション制作を担当した。
「この企画がスタートした時、僕の仕事がいくつか同時に進行している状態でした。『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』も企画がスタートしていましたし、先ごろ発表になった『機動戦士ガンダムRG XARX-ZERO』の企画もすでに始まっていました。こうなるとすべてをお受けすることはできないんですけど、この企画は僕が出したものなので、やはり自分で書くしかないだろうということで、脚本とポストプロダクションの部分はすべて担当して、制作の部分を多田監督にお願いしました。もちろん、多田さんはプリプロもポスプロもできる実力のある方なんですけど、最初のアイデアや本作の前の短編の制作時につくっていた設定は自分にしかわからないので、結果として一番、作業の大変な部分を多田さんにお願いすることになりました」
とは言え、神山監督はキャリアの初期の段階から複数の脚本家とチームを組んで脚本づくりをしたり、荒牧伸志監督と共同で『ULTRAMAN』や『攻殻機動隊 SAC_2045』を手がけてきた。チームで動くが、神山作品としての個性はちゃんとある。個別でありながら複合体でもある。このマインドは本作にも貫かれている。
「複数の作品を同時進行するのは、自分自身ではあまり褒められた仕事の仕方ではないのかとも思ってはいるんですが、クオリティの面でそんなに落ちていないし、神山の作品にもなっていると思っていただけたんだとしたら、外側から作品の完成図を想像して、自分から何をスタッフに提供すれば、最終的な作品が完成図と変わらないようになるのか、経験値がたまってきたのは大きいと思います」

では、神山監督は『スター・ウォーズ』にまつわる作品を作る上で、どんなルールを置いたのだろうか? 何をすれば、どんな物語を描けば、その作品は『スター・ウォーズ』になるのか?
「まず『スター・ウォーズ』という作品を最小単位まで分解していくと、そこにあるのは、あの世界を舞台にしたひとりの登場人物の冒険譚だと僕は思っています。そして、そこには必ずライトセーバーが出てこなければならない。それはつまり、ジェダイが出てこなければならないということになりますが、まずはこの世界を冒険する個人の物語だと思っています。
ルーク・スカイウォーカーという個人が辺境の地から銀河の大海原に漕ぎ出していって壮大な冒険をする、それが最も大事だと思うんです。もちろん、そこにはいろんなドラマや設定があって、ルークの父の存在や帝国との深いつながり、その時代ごとの銀河の成り立ちや政治が描かれるわけですけど、名も無き個人が銀河に旅立って冒険をすることが最も重要で、結果としてその個人がどういう人間であったのかは後でわかれば良いと思っています」

ポイントは最小限に分解した要素の中に“ライトセーバー”が存在していることだ。
「やはり特別なものだと思っていますし、これは僕の勘違いでもあったんですけど、僕は『スター・ウォーズ』を観ている時にライトセーバーのビームの部分はフォースだと思い込んでいたんです。ところが『帝国の逆襲』でルークを助けるためにハン・ソロがいとも簡単にライトセーバーをナイフのように使用する場面が出てきて(笑)、これはジェダイじゃなくても使える道具なのかと。
とは言え、僕はいまもどこかで、やっぱり道具というのは違うだろうと。ルークは結果的にジェダイになるわけだから使い方は稚拙かもしれないけど最初からライトセーバーを使えたのであって、僕の勘違いではあるんですけど(笑)ライトセーバーの設定ってそっちの方が良くないか? という想いが、最初の『九人目のジェダイ』の短編をつくるきっかけになったんです。とは言え、やはりあのビームの部分はフォース自体ではないから、本人の心を反映するライトセーバーというアイデアをルーカスフィルムに提案して始まりました」

このアイデアはサーガの正史には存在しないものだ。ただ、登場人物の心の有り様を映し出すライトセーバーのアイデアは、本シリーズでも極めて重要な位置を占めている。また、本シリーズが興味深いのは、キャラクター個人が銀河に漕ぎ出して冒険する物語が描かれながら、同時に消えてしまったジェダイ騎士団の“復興”が描かれることだ。すでに消滅するも、師を持たない騎士たちは集い、ジェダイの復興を目指す。ここにも個人の物語と、個人をとりまく集団の物語が交錯する神山作品の魅力を感じとることができる。
「このシリーズを始める時に、良い悪いではなく、“ジェダイがかっこよく見えない時代になっているのではないか?”と思ったんです。今の時代においてジェダイはとても窮屈な存在で、彼らの考える正義や、彼らが大上段に掲げるライトサイドというものがかっこいいと思える時代ではないのかもしれない、と。そんな中で“復興”とまでは考えなかったですけど『ジェダイがかっこいいと思うためには何をすればいいだろう?』ということは考えました。単にシスのような敵役と戦うだけではダメなのかもしれない。シスの言っていることの方がもしかしたら筋が通っていると思えるかもしれない時代に、ジェダイが再びライトセーバーを手にして戦って勝つことをシンプルにかっこいいと思える物語はあるのか? それをこのシリーズを通じてつくってみたいという想いはありました」
現在、『スター・ウォーズ』は様々なシリーズが展開されており、その主人公は多岐にわたっている。そんな中で本作は、再びジェダイのかっこよさとライトセーバーの持つ不思議な魅力に焦点を当て、壮大な冒険ドラマが展開する。結果として本作はシンプルでありながら、シリーズの魅力の原点がつまったものになった。日本で生まれたジェダイの物語は、世界中のファンを魅了することになりそうだ。
『スター・ウォーズ:ビジョンズ/九人目のジェダイ』
8月5日(水)よりディズニープラスにて日米同時全話一挙独占配信開始
(C)2026 Lucasfilm Ltd.
取材・文:中谷祐介(ぴあ)

