海路×福田麻由子 インタビュー 神が人間宣言した世界の物語に「私たちの世代が見ている景色がある」
ステージ
インタビュー
左から)福田麻由子、海路 (撮影:藤田亜弓)
続きを読むフォトギャラリー(4件)
すべて見るSFや不条理を軸にした奇妙な世界観を現代口語で紡いでいく作風で人気を集める劇団papercraftの最新作『神のみぞ知る死』がシアタートラムにて上演される。「神が人間宣言を出した世界」の日常を描く本作。同劇団の第8回公演『檸檬』にて第29回劇作家協会新人戯曲賞を受賞し、今年の春には新国立劇場 小劇場で上演した舞台『春琴抄』の上演台本・演出を務め、注目を集める主宰の海路(みろ)と『昨日の月』に続く同劇団出演となる本作で、死神の恋人を持つ主人公を演じる福田麻由子が本作への思いを語ってくれた。
――海路さんは18歳で脚本を書き始めたそうですが、2020年に、20歳で劇団papercraftの活動を開始されています。演劇を始められた経緯、“劇団”とした理由を教えてください。
海路 もともと、ドラマや映画など映像作品の脚本家を志望していたんですが、自分に脚本の書き方を教えてくださった師匠でもある江頭美智留さん(「ごくせん」、「1リットルの涙」などの脚本家)が、劇団公演やプロデュース公演をされていて、それを見て勉強していった中で、演劇関係の知り合いやつながりができ、自分もやってみようという感じで始めました。
最初は映像の仕事がしたくて作品を観て貰うために演劇を……という感じでしたが、公演を重ねていくうちにどんどん楽しくなりました。“劇団”と言いつつも個人ユニットのような形なんですが、なぜ劇団を名乗っているかというと当時、加藤拓也さんに憧れていて、加藤さんが個人でやりつつ「劇団た組」という名でやっているのをかっこいいなと思ったからです(笑)。
――“SF”、“不条理”、“現代口語”といったキーワードで語られることが多い劇団papercraftですが、海路さんが演劇で表現したいと考えているものは?
海路 当初から狙っていたわけではありませんが、公演を重ねる中で見えてきた共通のテーマみたいなものは「社会との距離感」なのかなと思います。自分という一個人がいて、一方で友人や家族がいて、もっと広く、職業とか政治なども含め、他者との関わりや社会との関わりみたいな部分で、わだかまりや悩みを抱えている自分、それを吐き出したい自分がいるのかもしれないなと感じています。

――福田さんは、『昨日の月』に続いて、2度目の劇団papercraftへの参加です。海路さんが紡ぎ出す言葉や世界について、どのような印象をお持ちですか?
福田 私と海路さん、少し年齢は離れてはいるけど世代としては近い世代と言えると思います。海路さんが描く物語って、私たちの世代が見ている景色だなと思います。世の中にいろんな物語があって、いろんな価値観が語られている中で、海路さんの作品は、設定は突飛なところもあるんですけど「私たちが見ている世界ってこうなんだよなぁ」って感じがするんです。『昨日の月』でもそれは感じましたし、今回のお話も設定は全然違うんですけど、似たような感覚を抱きました。

――神が「実は私たちも実体を持ったただの人間なのです」とカミングアウトし、普通の人間として生活しているさまを描いた本作ですが、どのように着想されたんでしょうか?
海路 最初に「神が人間宣言を出す」という、ログラインと言える1行がパッと浮かんできて「これならいけるかも」というところからスタートしました。そこから、自分が“神”というものを作品で扱うにあたって、いまの社会が抱えている問題と自分個人が抱えている問題をどうやってリンクさせていこうか? と考えながら、物語を膨らませていきました。
――福田さんが演じるのは、恋人から「実は自分は死神だ」とカミングアウトされる女性です。
福田 パーソナルな性格の部分で言うと、私とは正反対だなと感じるところが多く、「どう演じれば?」と考えてはいますが、根底にある人生観のような部分はスーッと入ってきました。発する言葉とか行動に関して、私はそういうチョイスはしないだろうなと思いつつ、社会とか人生に対して、漠然と感じている不安とかモヤッとした気持ちは結構わかる部分があります。『昨日の月』では女子高生を演じたんですけど、今回は私も含めて登場人物たちの年齢が少し上がっているので、私と同世代の人たちが見て、何を感じるのかがすごく気になります。
今を生きる人たちの、小さな、そしてリアルな物語
――『昨日の月』で福田さんをキャスティングされた経緯と印象についてお聞かせください。
海路 もともと、福田さんのことは朝ドラ(「スカーレット」2019年)で拝見して存じていました。『昨日の月』の女子高生の役を誰にお願いしようか? と考えていた時に、福田さんが所属事務所を退所してフリーになるというニュースを見たんです。「スカーレット」を見ていたのは自分が脚本を書き始めた頃で、一番ドラマを見ていた時期だったんですが、「スカーレット」の演技がすごく印象的で……。
福田 「これから個人でやっていきます」という発表をして、3日後くらいにメールをいただきました。
海路 ご一緒させていただくと、もうとにかくすごかったです。稽古場で「こういう方向性で考えています」みたいな認識のすり合わせをして、気づいたら当たり前のようにその場にその人物として生きている感じで……。自然とその世界に溶け込み過ぎて、お芝居をされているという感じがしないんです。ただただ、魅力的な人物が目の前に存在しているという印象で、気づくと福田さんが演じている人物に見入っていました。今回も、自分の中でこの役柄についてイメージしていた部分はあったんですけど、福田さんにお願いすることが決まって「それなら、こういうのもありかな?」とか「こういう福田麻由子が見てみたいな」という感じで、可能性が広がっていった感じです。
――福田さんは、前回の『昨日の月』への出演は、ご自身にとってどういう経験でしたか?
福田 私、『昨日の月』がすごく好きだったんです。その場で起きている小さなことを描いているんですけど、込められたメッセージや世界みたいなものはすごく広く、私自身、海路さんが描こうとしているものがわかる気がしていました。言葉にできないものを描きたいから演劇をやるわけですけど、海路さんが描いた言葉にならないものを、ポジティブな意味で「もっと表現できたかもしれない」という思いもありましたので、今回また声を掛けていただけて、すごく嬉しいです。
海路 この役は、いま僕自身が抱えている悩みなどを投影しつつ、“今風のつかめない子”みたいなことを意識して描きました。以前はとにかく物語を前に進めることを意識していたんですが、前作くらいから魅力的な人物を描くことを大切にしていて、ひとりの人物のいろんな面を見せていきたいと思ってできた人物なんです。
福田 本読みでも話が出たんですけど、他人の人生にも自分の人生にも責任を負わない生き方をしている人物なのかなって。相手に対して深く踏み込まないけど、それが弱っている人には優しさに映ってしまうことがあって、相手への無関心がある種の優しさになってしまうって、すごく現代的な側面だと感じます。
――福田さんはここ数年、舞台に出演される機会が増えていますが、いま、舞台で表現することにどのような魅力を感じていますか?
福田 めちゃくちゃ楽しいです。決して仕事を選べるような立場ではないですし、映像の仕事ももっと頑張りたいのですが、「演劇をやりたい」という気持ちは強いです。事務所を退所してフリーになって、全てのやりとりを自分でやる中で、演劇をやられている人たちと濃い人間関係、深いつながりを持つようになったというのが大きいと思います。それまで、とにかく「結果を出さなきゃ」「期待に応えなきゃ」と必死でやってきたんですけど、一歩立ち止まって「私はどう生きたいんだろう?」と考えた時、やっぱり芝居が好きで、何がやりたいのか? と考えた時、演劇っておもしろいなと。演劇って効率よく作品をつくれないところがいいんです。映像だと、多くのスタッフさんの力が合わさればその日に脚本をもらってその場で良い映像が撮れるようなこともありますが、演劇はそうはいかない。どんなに良い脚本と良い俳優さんでも、じっくり稽古しないと絶対に成り立たない。そこが好きです。
――最後に作品を楽しみにしている方にメッセージをお願いします。
海路 神というすごくスケールの大きな存在を扱いつつ、ものすごく小さな物語を描いています。そこにシュールさやナンセンスさもあって、書いていた時はそう思っていなかったんですけど、稽古場で意外と笑いが起きています。でも、その笑いの中に、笑わなくてはやっていけない社会の不条理さや生きにくさみたいなものがあると思います。
福田 私たちが抱えている切実さというのは「取るに足らない」と言ってしまえばそうかもしれなくて、傍から見たら滑稽かもしれないけど、自分に返ってきた時、それはすごく大きなこと。その滑稽さと自分の深い部分に刺さるものが繰り返されるような作品だと感じています。ぜひ生でご覧いただいて、感じていただければと思います。

取材・文:黒豆直樹 撮影:藤田亜弓
<公演情報>
劇団papercraft 第13回公演
『神のみぞ知る死』
作・演出:海路
出演:
福田麻由子 朝田淳弥 盛隆二(イキウメ) 村上航(猫のホテル)
太田緑ロランス 入手杏奈 櫻井健人
2026年9月6日(日)〜13日(日)
会場:東京・シアタートラム
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/papercraft13/
フォトギャラリー(4件)
すべて見る
