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【インタビュー】内野聖陽×森新太郎が挑む新約『リア王』──型を粉々にする二人が生み出す、むき出しの人間ドラマ

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左から)内野聖陽、森新太郎

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シェイクスピアの四大悲劇のひとつであり、近年さまざまなカンパニーによって上演が繰り返されている名作『リア王』。今回演出家を手がけるのは、森新太郎。そしてタイトルロールのリアを、内野聖陽が担う。
ひとりの為政者の失政から秩序が崩壊していく過程や、老いと若さ、血縁をめぐる愛憎、権力闘争といったテーマは、まさに現代社会の課題そのもの。3度目のタッグとなるふたりが、なぜ今『リア王』を選ぶのか。そしてどのようなアプローチでこの壮大な人間ドラマに肉迫するのか。稽古開始を控えたふたりに、作品に寄せる想いを語ってもらった。

――今回の企画が実現した経緯とは?

内野 実は当初は『テンペスト』をやろうという話だったんです。でも僕が「『リア王』はどうだろう?」と言ってしまって……。

 強大なひとりの王様の過ちによって、世界の秩序があっという間に崩れ去っていく。非常に今日性がある作品で、ぜひ僕もやりたいなと。今日性という意味では『テンペスト』もやるに値する作品ですが、リアの役にはとにかく莫大なエネルギーが必要で。だから内野さんと今やるべきは、『リア王』じゃないかと思ったんです。

――内野さんとだからこそ、どういう『リア王』を作っていけると思いますか?

 内野さんとご一緒するのは3回目ですが、3回目ともなると……内野さんのリアはもう内野さんのリアでしかないだろうなと思っていて。これ意味わかります?

内野 わからないです(笑)。

 (笑)。つまりこの人の感性は規格外なので、僕の演出プランにはとても収まらないということがすでにわかっている。

内野 反抗的な役者ってこと?(笑)

 いやいや、僕の固定観念を粉々にしてくれるので、そこがいいんです。我々演劇人が型にはまった考え方に陥ってしまうと、作品が本来持っている豊かさを失ってしまう可能性があるわけですから。それこそ『リア王』ってたくさんやられているので、お客さんの中には二度、三度とご覧になっている方もいるはず。その人たちに「『リア王』ってこんな話だったの!?」と思ってもらえるような、そういう新たな提示を果敢にしていきたいですね。

――ただ内野さんは現在57歳。リアをやるには少しお若い気もしますが……。

内野 いや若くないですよ!

 初演時、リチャード・バーベッジという主演俳優は30代でこれを演じてますからね。逆に年を重ね過ぎちゃうと、あの爆発的なエネルギーの放出ができる俳優は限られてきます。エネルギーだけでなく高い技術や深い思考力も求められる役なので、力のある俳優さんはみんな挑戦したくなるんでしょうね。

内野 確かに惹きつけられるものはありますね。老いていく人間の話なので、認知力の衰えとか、時代とズレていく感覚とか、価値観の変容に対する戸惑いとか。家族の話でもありますし、内包しているテーマがどれも現代的で、引っかかるものがたくさんあるんです。

――確かに今に通じる課題がたくさん詰め込まれていますね。

 『リア王』ってタイトルではありますが、僕はこれ、群像劇だと思っているんですよ。

内野 僕もそう思います!

 すべては末娘のコーディリアをリアが追放してしまったところから始まるわけですが、その後派生して起こっていることは、とてもリアだけでは回収できない話ですから。例えばエドマンドとエドガーの兄弟間のドラマとか。

内野 本当に面白い! それぞれ根っこがあるからですよね。嫡出子と非嫡出子とか、長女と次女とか。それって今でもありがちな話で、僕なんか読んでいてすごくワクワクします。

 僕は後半思わず笑っちゃうときがあります。もうぐちゃぐちゃ過ぎて(笑)。でもそれこそシェイクスピアの狙い通りだと思うんです。人の命の価値がわからなくなるほどに多くの血が流れて、生き残った者たちは途方に暮れる……あんな幕切れだからこそ僕も、そしてお客さんもこの作品に真実味を感じられると思うんです。

――演出に当たっては、特にどんなことを意識していきたいと考えていますか?

 僕はかなり前の段階から、劇の中心に“暴力”を据えたいと考えていました。立場や名前、道徳観念など、いろいろなものが剥ぎ取られて本当の人間性がむき出しになっていくという話なのですが、その剥ぎ取られる過程で肉体的な暴力、精神的な暴力が相当むごたらしく描かれている。それらをファンタジーにしてはいけないなと。やっぱり傷つけられたら痛いわけだし、血のどろっとした感じから呼び覚まされる本能というものがあるはずですから。そこには生々しく迫りたいなと思っています。

――内野さんはリアを形作っていく上で、特にどんなことを大切にしていきたいですか?

内野 “シェイクスピアを特別にしない”って感覚ですね。僕は“シェイクスピア調”みたいなものがあまり好きではないのですが、いつの間にかそういう節回しになってしまう危険性が罠のように待ち構えている。今僕が喋っているくらいの日常性のレベルでアプローチしていけるかが肝心で。とはいえこのリアというのは、王様は王様でもちょっと桁違いの王様。そこにどうリアリティをつけていくのか、僕にとっては大きな課題で、挑戦しがいのあるところです。

 どのシェイクスピア作品を探しても、頂点からどん底までの距離がここまである人物はいないと思いますね。

内野 神様レベルの人ですよね。

 そう。頂点にいる時は神さまレベルだった人間が、どん底の底の底まで落ちて虫けらの如き無力な存在となる。しかし、それゆえに辿り着ける幸福もあるわけで。人生の振れ幅が尋常でない、本当にダイナミックな役どころだと思います。だからこそ、内野さんのリアが観てみたい。世界中の誰よりも、僕が一番興奮しているのではないでしょうか。

取材・文:野上瑠美子

<公演情報>
『リア王 -KING LEAR-』

作:ウィリアム・シェイクスピア
訳:松岡和子

演出:森新太郎

出演:
内野聖陽 前田公輝 井之脇海 清水くるみ 川上友里 内田慈
大山真志 永島敬三 和田正人 杉本哲太 山路和弘 ほか

【東京公演】
2026年9月21日(月・祝)~10月4日(日)
会場:東京芸術劇場 プレイハウス

【新潟公演】
2026年10月8日(木)・9日(金)
会場:りゅーとぴあ新潟市民芸術会館・劇場

【愛知公演】
2026年10月17日(土)・18日(日)
会場:刈谷市総合文化センター 大ホール

【兵庫公演】
2026年10月23日(金)~25日(日)
会場:兵庫県立芸術文化センター阪急 中ホール

【岡山公演】
2026年10月28日(水)
会場:岡山芸術創造劇場 ハレノワ 中劇場

【福岡公演】
2026年10月31日(土)・11月1日(日)
会場:J:COM北九州芸術劇場 大ホール

チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2669095

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