【Setlist】
1, dawn
2, somewhere
3, aphrodite
4, Echo ※新曲/新作EP収録予定
5, haunt me
6, the snow will catch us once again
7, melt
8, Tokyo ※未発表曲
9, WHIRLPOOL ※きのこ帝国カバー
10, reverie
ENCORE
11, afterglow
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『the neverminds Asia Tour 2026』 Photo:エドソウタ
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すべて見るText:サイトウマサヒロ Photo:エドソウタ
カナダ・トロントを拠点に活動するシューゲイザーバンド・the nevermindsが、2年ぶり2度目の来日ツアーを開催。9月11日に東京・下北沢ERAにてファイナルを迎えた。全3公演の制作は、今回が初の海外アーティスト招聘公演となるインディ・オルタナレーベルOaikoが担当。各地で現在進行形の国内シューゲイズ/オルタナシーンの前線に立つアーティストが出演し、日本のカルチャーからの影響も色濃いthe nevermindsと共鳴した。
この日も3組のゲストアクトが登場。オープニングアクトを務めたSpit lulu'sは、「乾かない夏」のノスタルジックなMVが25万回再生を突破し今まさに注目度を高める中で、ライブバンドとしての確かな熱量と実力を発揮。続く宇宙ネコ子は、11月4日(水)にリリースされるニューアルバム『大人になっても、夜は暗くて』からの新曲も交えて、歪んだバンドサウンドの中に柔らかな手触りの歌を響かせる。そしてBlume Popoは、織り重なり変幻する「ポスト・ポップス」サウンドとともに、「次はカナダで会いましょう」と本日の主役にラブコールを送った。

ただでさえ満員のERAのフロアだが、この日は冷房の不調によりまさに灼熱の状態に。そんな中でバトンを受けたthe nevermindsが、「dawn」からライブをスタートさせる。深いリバーブに包まれて、皮膚感覚が身体から切り離されていくような感覚を覚えた。Vincent Ta(g)のアーミングによって音程が揺らぐ度に、私たちは記憶のどこかに吹いている涼しい風を手繰り寄せているようなのだ。まさに昇っていく朝日をただ静かに見守っているような荘厳さの中で、Ginny Kim(vo/g)は、一音一音をそっと空間へ置いていくように歌う。陽光が差し込み目が開くように、バンドの演奏は徐々にサスティンを増して、外へと開かれていく。


「下北沢、What's up?」と呼びかけたVinny Hau(b/vo)がツアーへの感慨を伝えると、2曲目は「somewhere」。先ほどまでの浮遊感から一転して、躍動感のある8ビートに身体が揺れた。さらに単音リフと直線的なビートがポストパンク的な切迫感を生む「aphrodite」へと続き、Vinnyが激しく頭を振りながら低音を叩き込む。そこで肉体的な感覚を取り戻したからこそ、改めて彼らの巧みな音響構築に驚かされる。歪みと残響によって飽和したアンサンブルの中で、Ginnyの歌声は果てしなく遠くに感じられながら、それでも確かにそこに在り続けている。すぐ隣で寄り添うのではなく、決して触れられない距離を保ったまま、どこかから見守っているもの。それがいままさに霞んで消えようとしているのか、それとも暗闇の中から輪郭を得ようとしているのか、まだわからないでいる。



ここでGinnyが、日本語で「久しぶりに日本に来られてうれしいです」とMC。そして、メンバー全員が「ボカロシューゲイズ」を好んでいること、自分たちなりの「ミクゲイザー」を作ろうと話したことを明かして、来る新作EPに収録予定だという新曲「Echo」を披露する。抑揚豊かなアレンジは後半にかけて速度と熱を増していき、この日もっともキャッチーな瞬間のひとつを生んだ。
「haunt me」では、寒々しい音像の中でAshton Purvis(ds)が一打一打の力を増しながら、演奏をドラマティックに押し進めていく。音の層がただその場に滞留するのではなく、次々と景色を更新していく。彼らの鳴らすシューゲイズは、ただ時間感覚を溶かして陶酔へと導くだけの音楽ではない。むしろ繊細なタッチの映画のように、静かに、しかし確実に前へと進みながら物語を描きなぞっていく。セットリストの中で私たちは、ノスタルジーと現在進行形の孤独を往復しつつ、それでも否応なしに終わりへと向かって進んでいく。

ここで機材トラブルによって数分の中断が生じるが、「the snow will catch us once again」「melt」からライブを再開。一音ずつ上昇するロングトーンに導かれ、力強いドラムと甲高く鳴くギターがフロアを再び音の中へ引きずり込む。やはり演奏が止んでいる間ほど暑さが身に染みて、音が鳴らされるとすぐに冬の景色へと飛び込めてしまうのがなんだか可笑しい。
Ginnyはふと、2年前の日本ツアーを振り返り、「色んな場所で色んなアーティストに出会って、本当に大切な時間だった」と語る。その思い出から生まれたのが、未発表曲「Tokyo」だ。ダンサブルな16ビート、メロディアスなアルペジオ、クランチギターが奏でるコード。Bメロで一度熱を落とし、サビへと開ける展開はどこかJ-POP的でもある。その煌びやかな旋律を前にして、あなたには東京がこう見えているんだね、と思う。遠い距離と言語の違いに隔てられた他者同士が、完全に理解し合うことなどきっとできない。だとしても音を使って、視界の断片くらいは交換できる。the nevermindsのシネマティックな楽曲は、ここ東京でそれを優しく証明していた。


だから、轟音のフィードバックからきのこ帝国「WHIRLPOOL」のカバーに雪崩れ込んだ時に、私たちはようやく同じ景色を共有できる喜びに包まれた。閃光のようなギターフレーズと実際の照明が重なって眩しく輝き、思わず顔を上げる。その瞬間、ステージとフロアの目線が確かに交わったように感じた。抽象性を増した音像の中、GinnyとVinnyは真摯でまっすぐなハーモニーを日本語で紡ぐ。原曲への敬意を保ちながら自分たちの音響へと溶け込ませた好カバーだった。
共演者と来場者への感謝を伝え、本編最後に選ばれたのは「reverie」。4分間の長いイントロを経てそっと囁くような歌声が届いた時、バンドと客席は大きな塊同士ではなく、一対一の親密な関係が連なったものに変わった。そうしてグッと縮まった距離を再びリバーブが空へと解き放っていく。短く「Thank you」と言い残し、4人はステージを去った。

アンコールで演奏されたのは「afterglow」。冒頭の「dawn」と対を成す、7分を超える大曲だ。ミドルテンポのビートの上で、ギターが揺蕩い、徐々にスケールが広がっていく。それは、沈んでいく夕日をともに見送るような時間だった。先ほど目線を交わしたばかりの私たちが、今は同じ方向を向いて、同じ景色の前に立ち尽くしている。東京とトロント、舞台と客席。お互いの人生が交わったのは、この日のたった1時間弱に過ぎない。それでも沈んだ陽がいつかまた昇るように、約束はなくともまた出会えるような予感の中で、the nevermindsによる2度目の来日ツアーは静かに幕を閉じたのだった。

<公演概要>
『the neverminds Asia Tour 2026』
2026年9月11日 東京・下北沢ERA
1, dawn
2, somewhere
3, aphrodite
4, Echo ※新曲/新作EP収録予定
5, haunt me
6, the snow will catch us once again
7, melt
8, Tokyo ※未発表曲
9, WHIRLPOOL ※きのこ帝国カバー
10, reverie
ENCORE
11, afterglow
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