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高杉真宙が後悔なく生きるためにやっていること「行動だけでなく、言葉にすること」

映画

インタビュー

ぴあ

(撮影/梁瀬玉実)

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もしも愛する人が余命わずかだと知らされたら――。

そんな想像するだけで胸が潰れそうになる悲しみと向き合ったのが、高杉真宙だ。映画『ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記』で演じたのは、気の優しい青年・遠藤将一。和(川口春奈)と恋におちた将一は、二人で幸せな日々を過ごしていた。

それは、どこにでもある平凡な恋だった。当たり前に続くはずの日常だった。

だが、病魔が二人の未来に影を落とした。和がステージⅣの大腸がんと宣告されたのだ。5年生存率は、およそ15%。愛する人が病の淵に立たされたとき、人は何ができるのか。遠藤将一を演じる日々は、その問いと対峙し続ける日々だった。

真似をするのではなく、映画の中の将一をつくり上げる

「和の前で悲しみは見せない、ということは決めていました」

遠藤将一として生きたひとときを振り返り、高杉真宙はそう話しはじめた。

「将一は、和が治ると信じている。なのに、和の前で悲しい顔をしてしまったら、もう助からないんだって認めたことになる。それは違うなと思って、和の前では平静でいようというのは心がけていましたね」

本作は、2021年、24歳の若さで旅立った遠藤和さんの手記を原作としている。交際中の恋人・和さんからステージⅣの大腸がんであると打ち明けられた将一は、「絶対別れない」と決意。『1億人の大質問!?笑ってコラえて!』で放送された二人の結婚式は大きな感動を呼び、多くの人が二人の幸せを願った。

実在の人物――それも歴史上の偉人ではなく、今も生活している市井の人を演じる責任は重い。高杉も「繊細にならなければいけない部分が多かった」と明かす。撮影現場には、将一さん本人も訪ね、話を聞く機会があった。だが、目の前にいる遠藤将一さん本人を再現するという意識はなかったという。

「僕が演じるのは、映画の中の将一という人物。だから、目の前の将一さんの癖とか話し方を真似しよう、みたいな感覚はなかったです。でも参考になることはいっぱいありました。いちばんは、記憶です。こういうことがあったんだ、という話を聞かせてもらえるだけで、より二人の歴史が具体的に浮かび上がってくるというか。別にそれをどこかのシーンで取り入れようとか、そういうことではなくて。その記憶を持って演じるだけで、自分の中で何かが違ったところはありました」

“空気すらも演技している”って感じがした

将一の複雑な心の揺れを、高杉真宙は丁寧にすくいとり、演じ上げた。中でも印象的な場面が二つある。一つは、和から大腸がんであると告白される場面。病院のロビーから始まるこのシーンは、実に4分以上にわたる長回しで撮影された。

「撮影に入る前から、このシーンは長回しでいきたいというのはなんとなく聞いていました。ただ、尺的にもそうですし、移動もあったりで、ストローク的にもすごく長いシーンだったので、ここまで全部長回しでいくんだというのは、ちょっと意外でした」

だが、カットを割らずに撮り切ったことで生まれたものがあった。

「“空気すらも演技している”って感じがしました。撮影としても、二人の人生という意味でもすごく緊張感のある場面。いつもそうですが、今回は特に、自分があらかじめ持ってきたものに固執せず、監督の考えに柔軟に対応し、川口さんをはじめキャストのみなさんとお芝居をする中で生まれてくるものを大事にしたいなと思って現場に臨んだんですけど。あのシーンはまさに目の前で起きたことにただ素直に反応していくうちに、気づいたらカットがかかっていたという感覚でした」

和から「別れたほうがいいかもしれない」と告げられた将一は、何も言葉を返すことができなかった。

「やっぱり信じられなかったんですよね。ああいうときって、驚きとか、嘘だと思いたい気持ちが自分の中にダイレクトに飛び込んでくるんだなと思いました。そこからちょっと周りが見えて、和さんを気遣う気持ちが生まれたから、将一は立ち上がって彼女を追いかけた。あそこで初めて将一は覚悟を決めたんだと思う。何があっても和さんを支えて進んでいくんだという強い覚悟を」

入念なリハーサルの末、本番では2テイク撮影を行った。無事に撮り終えたときは、現場から自然発生的に拍手が生まれたという。

「“いけた”という手応えがきっとみなさんの中であったんだと思います。演じている側というのは、うまくいったかどうかは自分ではわからなくて。川口さんはどうかわからないですけど、僕は拍手を浴びながらも、ちゃんとできたのかなって不安でした。良かったと思えたのは、初号でこのシーンを観たとき。そこで初めていいシーンだったなって、ちょっと安心しました」

もう一つは、クリスマスのシーン。治療を終えて帰ってきた和を、サンタクロースの格好をした将一が出迎える。そこで、癌が治らないことを伝えられた将一は、おどけたように『Silent Night』を口ずさみ、和の手をとって踊る。涙なくしては見られない、本作きっての名場面だ。

「あそこで歌って踊るというのは、監督(山戸結希)のアイデアです。最初に監督からそう提案されたときは、どんな感じになるかわからなくてちょっと戸惑ったんですよ。でもやってみたら、監督の思惑通りといいますか、すごくいいシーンになった。あんな発想は僕からは絶対に出てこない。台本を読むだけではわからないことがあるなと改めて勉強になったし、山戸さんのすごさを感じたシーンの一つになりました」

愛って引き継いでいくものだと思う

夫から妻への愛。妻から夫への愛。見守る家族の愛。そして、生まれてくる子どもへの愛。本作は、さまざまな愛がつまった映画だ。高杉真宙は、本作にふれ、愛というものをどう捉えただろうか。

「愛って引き継いでいくものなのかな、と思います。僕の中で愛って自然発生するものじゃないんです。人からもらった愛を、別の誰かに渡していく。そうやって循環していくものというイメージがあります。和さんと将一さん、お二人が残した愛を、映画を通していろんな方が受け取る。そして、また一人ひとりが周囲の人へと広げていく。僕は、それこそがこの作品をやった意義であり意味だと思っているし、そうやって広まった愛がまた将一さんやお子さんに帰っていったらいいなと思います」

命は、有限だ。そのことをみんな理解してはいるけれど、日がな実感して生きることは難しい。限りある人生を1日1日どう過ごしていくか。和さんの生き様が残したものは大きい。

「やっぱり素直に生きるって大切だなと思います。後悔なく生きられたらそれがいちばん素晴らしいんだろうけど、後悔を残さないってなかなか難しい。でもせめて自分の心に素直に生きられたら、何かが違うのかなって」

高杉自身も、素直に生きるために実践していることがある。

「ちゃんと言葉にして伝えることですね。感謝の気持ちも、謝罪の気持ちも、愛の気持ちも、言葉にしないと伝わらない。やっぱりいつどこで伝えられなくなるかわからないので。特に最近は親にプレゼントを贈るときも、手紙に『I LOVE YOU』と書き添えたりして。行動だけでなく、言葉にすることの大切さを年々実感しています」

映画の中の将一は、どこまでも一途で、誠実だった。そんな将一を演じた高杉真宙もまた優しさと愛に溢れた人だった。

高杉真宙にミニ質問! この世界からなくなったら困るものは?

――ついに30代を迎えました。30代になって何か変化を感じますか。

単純に数字が増えたなというだけで、これといった変化はないんですけど。あ、でも、誕生日にちょっと悲しいことがありました。僕、弟が二人いるんですけど、下の弟からのお祝いメッセージがなかったんですよ。どうなってるんだと連絡をよこしてみたんですけど、それも無視されて(笑)。非常に複雑な感情が入り混じった誕生日にはなりましたが、彼の誕生日にはちゃんとメッセージを送るぞと心に誓いました。

――高杉さんにとって、この世界からなくなったら困るものはなんですか。

無駄です。

――無駄?

いや、無駄って重要だなと思って。効率を求めることも時には重要ですけど、無駄のない世界ってつまらないじゃないですか。たとえば、服にもちょっとした飾りがついてたりしますけど、これも機能だけを考えるならついていても意味がない、つまり無駄じゃないですか。でも、装飾がないと一気に味気なくなる。こういう無駄が世界を彩っているんだなと思う今日この頃です。

――ちなみになぜそういうことを考えるようになったんですか。

この間までやっていた作品で「無駄がない世界」という台詞があって、それでちょっと無駄ってなんだろうと考えるようになったんですよね。色もそうじゃないですか。白と黒だけあれば事足りるかもしれない。でも、赤があって、青があって、緑や黄色、そのほか数えきれないくらいいろんな色があるから、世界は美しく見える。もともと無駄というものが好きではあったんですけど、その思いがより確かになりました。なので、無駄を愛し、無駄に生きようと思います!

撮影/梁瀬玉実、取材・文/横川良明
ヘアメイク/堤紗也香
スタイリスト/菊池陽之介

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<作品情報>
『ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記』

10月2日(金)全国公開

配給:東映
原作:遠藤和「ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記」(小学館刊)

【STORY】
青森で暮らす遠藤和(川口春奈)と将一(高杉真宙)。
時にぶつかり、時に笑い合う日常の中で、
和の心には「一分一秒、一緒にいたい」「この人と生きていきたい」
という愛おしい未来への願いがふくらんでいた。
そんな矢先、和を襲ったステージIVのがん。
残された時間は限られていた。
それでも将一は「一生大切にする」と彼女の手を強く握り続ける。
愛する人と過ごす日々が増えるほど、二人で叶えたい未来があった。
結婚したい。家族になりたい。
そして、私たちの子どもに会いたい──。
治療を止めるという命がけの選択の先に、出会えた新しい命。
余命は数週間。それでも和は「今が一番、幸せ」だった。

(C)遠藤和/小学館 (C)2026「ママがもうこの世界にいなくても」製作委員会

関連リンク

公式サイト:
https://www.mamaseka-movie.com/

公式X:
https://x.com/mamaseka_movie

公式Instagram:
https://www.instagram.com/mamaseka_movie/

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