まもなく開幕! 奥村康祐、米沢唯が公開リハーサルでパ・ド・ドゥを披露 新国立劇場バレエ団『街の灯』世界初演
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新国立劇場バレエ団『街の灯』公開リハーサルより (撮影:奥田祥智)
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すべて見る2026年10月23日(金)から11月1日(日)、新国立劇場バレエ団が2026/2027シーズンの開幕作品として『街の灯』を上演する。原作は、1931年に公開された喜劇王チャールズ・チャップリンの映画。英国の振付家アラスター・マリオットが、この名作映画の世界初のバレエ化に挑む委嘱作だ。10月初旬に実施された公開リハーサルに臨んだのは、映画でチャップリン自身が演じた放浪者(リトル・トランプ)役の奥村康祐と、盲目の花売り娘役の米沢唯という初日キャストの二人。マリオットと、振付補佐を担うジョナサン・ハウエルズの指導のもと、見どころとなる場面の一部を披露した。
この日公開されたのは、二つのパ・ド・ドゥだ。「まずは出会いの場面。二人がどんな風に出会ったか、というところから──」とマリオット。チャップリンが並々ならぬこだわりをもって撮影したという名場面だが、マリオットは映画へのリスペクトを散りばめた振付で、美しく、温もりある出会いを印象付ける。音楽は、映画と同じくホセ・パディーヤによる「ラ・ヴィオレテラ」。その他の映画音楽はすべてチャップリン自身が手がけているが、チャップリン財団の許可を得て、全曲をティモシー・ブロックが新たに編曲した。それぞれの踊りの長さ、動きのタイミングに合わせ全曲をアレンジするという、地道で挑戦的な作業が重ねられた。

リトル・トランプ役の奥村は、稽古着ながらすでにチャップリンの雰囲気をたたえての登場。目の前の花売り娘が盲目だと気づいて驚くも、その儚く可憐な姿に魅了されていく様子を、チャップリンならではのおどけた動きを交えながら、きめ細やかに表現していく。この役に取り組むにあたり、『街の灯』をはじめとするチャップリンの映画に数多く触れたという奥村いわく、「リトル・トランプはコメディの要素が強いキャラクターというイメージでしたが、映画を見ると実は、もっと哀愁があり、寂しさや人間の弱さ、とても繊細な面がある。コメディは、それらを際立たせるためのものだと感じました」。

一方の米沢は、目や顔の向き、恐る恐る一歩を踏み出す動きで、目が見えないことを表現。無一文のリトル・トランプを、高級車から降りてきた富豪だと勘違いしつつも、彼の優しさに触れて弾む心を、一つひとつの動きに滲ませる。
もう一つのパ・ド・ドゥでは、リトル・トランプが朝までともに呑み明かした富豪の車を勝手に拝借、再会した花売り娘を車で送り届けるまでが描かれる。躍動感あふれる動きやリフトを効果的に用い、心浮き立つ二人の様子をロマンティックなパ・ド・ドゥに仕立て上げた。米沢は、目線を外しながらポワントで踊ることの難しさを感じているというが、「それ以上にやらなくてはいけないことは、彼女の揺れ動く感情、台詞をお客さまに伝えることです」と意欲的だ。

普通の人々が起こしうる人間ドラマを、バレエに
リハーサル後、記者たちを前に作品への思い、取り組みを語った彼ら。子どもの頃、バレエコンクールでチャップリンを踊ったというマリオットは、当時はテレビで繰り返し古い映画が放映され、その中に必ずチャップリン作品が入っていたと振り返る。「あらためてこの物語に注目したのは、コロナ禍の時でした。100年前に流行したのはスペイン風邪で、恐ろしい戦争もあった。1920年代の人々は刹那的にパーティーに明け暮れ、1930年代に入って大恐慌になると、大金持ちも破産した。いま、私たちが生きているこの世界と多くの共通点があると感じました。そこで私は、あえて市井の小さな人の人生に光を当て、オペラのような壮大なスケールで表現できないかと考えたのです。お金のないちっぽけなリトル・トランプが、偉大なことを成し遂げる。彼は放浪者のまま、花売り娘とその祖母の人生を変えるんです。私は、普通の人々が起こしうる人間ドラマを描きたい、と思いました」。

2022年に新国立劇場バレエ団で新制作された、吉田都芸術監督演出『ジゼル』の振付を手がけたマリオット。「その時、新国立劇場バレエ団の皆さんと恋に落ちたので、今回は誰に何をやってもらうのがいいか考えてもいました。歌舞伎や浄瑠璃の世界を持つ日本の人々には物語を語る力があり、非常に繊細かつ正確に物語をお客さまに伝えることができる。今回のような、コメディでありながら何とも言えない悲哀がある物語は、日本の皆さんに合っていると思っていました」とも明かした。
奥村も、「リトル・トランプはあくまでも紳士で、汚い身なりであっても、心はすごく綺麗な人物。ジェントルに、ということは常に心がけています。映画を見れば見るほど、チャップリンの偉大さを感じます」と役柄への取り組みを語る。今夏、大阪・国立文楽劇場で上演された新作文楽『まちの灯』を観たというが、「すごく感動したのですが、振付が始まる前だったので、心配にもなりました。でも、振りをいただいた時には、『これはいい作品になる』と思いました。この作品に巡り合えてよかったなという思いです。アラスターさんのオリジナルの終わり方で作っていますので、そこも大きな見どころに」と自信を覗かせる。
米沢は、そんな奥村のことを「毎日いろんなことを研究し、アップデートされています。本当に素晴らしいリトル・トランプです」と称える。また、「私も、リハーサル初日で『これは素敵なバレエになる』と確信しました。私にとって大切な役、大事な作品になると思います。花売り娘は、決してかわいそうな人、不幸な人ではなく、自分の足で立ち、前向きに生きている女性。そこは大切にしたい。リトル・トランプは、花売り娘から買った花をずっと胸に付けて大事にし続けますが、そんな一輪の花のような、素敵なシーンがたくさんあります。楽しくて賑やかな場面が多いのですが、その中で、この一輪の花を差し出すような存在であれたら」と微笑んだ。


数々の作品でパートナーを組んできた奥村と米沢だが、互いに目線を合わせられないパ・ド・ドゥには、独特の難しさがあったようだ。「でもその分、感覚は少しずつ研ぎ澄まされていきます。彼がいまどういう状態で、どんな息遣いをしているかということを感じて踊っています」と米沢が語ると、奥村も「普段どれだけアイコンタクトをしながら踊っていたのか、ということを実感しています。お互いの長いキャリアがあってこそのパ・ド・ドゥになると思います」と深く頷いた。
奥村、米沢を含めて全4組の主役カップルが取り組む世界初演作品。4組それぞれが描き出す『街の灯』の世界に注目が寄せられる。
文:加藤智子 撮影:奥田祥智
<公演情報>
新国立劇場バレエ団『街の灯』
2026年10月23日(金)~11月1日(日)
会場:東京・新国立劇場 オペラパレス
チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2670288
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