咲妃みゆ、念願の『スカイライト』へ――「私のすべてをかけて挑みます」
ステージ
インタビュー
咲妃みゆ
続きを読むフォトギャラリー(5件)
すべて見る元宝塚歌劇団雪組トップ娘役で、退団後もミュージカルからストレートプレイまで幅広く活躍する咲妃みゆが、デヴィッド・ヘアの傑作『スカイライト Skylight』でキーラ役に挑む。かつて不倫関係にあった男女、キーラとトム(山路和弘)と、その男性の息子エドワード(中山翔貴)、わずか3人の登場人物によって、愛や家族、社会、生き方を浮かび上がらせる濃密な会話劇だ。咲妃にとってキーラは、かつて本作を観て衝撃を受けて以来、「30代のうちにどうしても演じたい」と、ひときわ特別な思いを寄せてきた役でもある。念願が叶った喜びと、作品にすべてを注ぐ覚悟を口にする度、抑えきれない情熱があふれ出した。
――出演が決まった時は、どのようなお気持ちでしたか。
咲妃みゆ(以下、咲妃):5年ほど前、ナショナル・シアター・ライブ(英国の舞台を映像で上映する企画)でこの作品を拝見して、ものすごく衝撃を受けました。男性2人、女性1人のわずか3人で壮大な人間ドラマを繰り広げる非常に見応えのある作品です。キーラが30代の設定ということもあり、「私も30代のうちに演じてみたい」と夢を抱きました。そうして作品への思いが最高潮に達していたところへ、出演のお話をいただいたんです。その喜びは、宝塚音楽学校の合格発表を見た瞬間に匹敵するほどで、興奮でいっぱいになりました。
それまで私、「この役を演じたい」という夢や目標を持つと、俳優として苦しくなると思い、あえて持たないようにしていました。この仕事をさせていただいているだけで幸せなのだから、目標にとらわれたくなかったんです。でも、そんな私の考えを覆した作品とお役が、この『スカイライト』とキーラでした。
――その思いは、周囲にも伝えていましたか。
咲妃:映画館で観てから一週間、興奮が収まりませんでした。何かをしてほしいということではなく、「とにかくこの気持ちを共有させてください」と、マネジャーさんに時間を作ってもらい、作品から受けた衝撃を伝えました。それが数年後、こんなにもありがたいご縁につながるなんて。今作のビジュアル撮影の前夜も、当日家を出る時も、思わず深呼吸しました。あの日から時を経て『スカイライト』の撮影に向かう日がくるとは、「今はこれ以上何も望みません」という気持ちです。

――作品のどこに、それほど心を揺さぶられたのでしょう。
咲妃:圧倒的な会話劇と、そこに凝縮された感情の波、そして社会的な壁です。登場する3人は、お互いに愛情を抱いています。家族として、恋愛として、確実に愛が存在しているのに、とげとげしい言葉で相手を傷つけたり、痛みを労り合ったりもする。それが社会の縮図のようにも感じられて、他人事とは思えませんでした。
――キーラ役をどう捉えていますか。
咲妃:キーラはトムとエドワードによって、家族の温もりを知ります。同時に、社会的には決して許されない愛も経験します。彼女は恵まれた環境を自分の意思で離れ、過酷な環境に身を置く決断をします。それは一種の償いとも取れる行動です。重い十字架を背負って人生を歩んでいくと決めたキーラに共感もしますし、哀れにも思います。
キーラは、決して曲げられない価値観を持っていて、時にそれが彼女を苦しめるけれど、なんとか自分の足で歩んでいこうとする人です。お客様にも、自分はどの生き方に共感し、どの道を選ぶだろうと考えていただける作品ではないでしょうか。

――共演のお二人の印象は?
咲妃:トム役の山路和弘さんとは二度目の共演です。昨年『平家物語―胡蝶の被斬―』で親子役を演じた時は、あえて互いに目を合わせず、声から表情や感情を想像する演出でした。今回は対面で、真正面から芝居を交わせることに興奮しています。
エドワード役の中山翔貴さんとは初共演です。27歳で、舞台出演2作目にしてこの作品に巡り逢えるなんてとてもうらやましい。柔軟な中山さんから生まれる表現に、ハッとさせられることも多いと思います。初心に返り、向き合わせていただきます。
――演出の杉原邦生さんについては、どのような印象を?
咲妃:創作を楽しむ心を常に持っていらっしゃる印象があります。以前拝見した杉原さん演出の舞台が素晴らしくて、いつかご一緒したいと思っていました。私は稽古が進むにつれて自分を追い込んでしまいがちなのですが、そこに風穴を開けてくださるのではと、勝手に期待しています。稽古場では恥を捨て、杉原さんを信頼して挑みたいです。

――最近、ご自身に変化はありますか。
咲妃:仕事に全力で挑むためにも、オフの時間を充実させたいという気持ちが強くなりました。自分が何に心をひかれ、その思いがどれくらい膨らむのかを、自分の体を通して感じることが表現につながる気がしています。日々の暮らしそのものが、楽しい実験のような感覚です。
――具体的にどんなことですか。
咲妃:私の三大趣味は、ドライブ、食の堪能、野球観戦です。快適な運転を追求する心は、演劇にも生かされていると思います。料理人の思いが伝わる一皿に出合うと、私も作り手として生半可な気持ちで舞台に立ってはいけないと感じます。野球はドラマであり心理戦。駆け引きやチームの結束力にひかれますし、どんな状態でもその時のベストを尽くす選手の姿は、俳優にも通じるものがあります。
――念願の舞台へ、今の思いを聞かせてください。
咲妃:『スカイライト』に出演できることは大きな喜びで、キーラ役はこれまでにない挑戦です。この作品に出合えたことに感謝しかありません。私のすべてをかけて挑ませていただきます。

取材・文/島田 薫
撮影/吉原朱美
あらすじ
ロンドン北西部で質素な暮らしをしながら教師をしているキーラ(咲妃みゆ)。ある日突然、かつて彼女が働いていたレストランのオーナーの息子・エドワード(中山翔貴)が、キーラの住むアパートを訪れる。一年前に亡くなった母・アリスについて語り、アリスの死から立ち直れない父・トム(山路和弘)を助けてほしいと訴える。エドワードが帰った後、同じ夜にトムもまた図らずもキーラのもとを訪れる。二人は、互いの現在の生活や、かつてレストランで共に働いていた日々について語り合い、離れていた約三年の空白を埋めようとする。しかし、実は二人はかつて不倫関係にあり、キーラは罪悪感からトムたちの前から姿を消していた。会話が進むにつれ、二人の生い立ちや生活環境、価値観の違いが次第に浮き彫りになっていく。アンド、夜が明ける前、いまだに互いに惹かれ合う二人の関係に、一つの決着がつく――。
<公演情報>
KAAT神奈川芸術劇場プロデュース
『スカイライト Skylight』
作:デヴィッド・ヘア
翻訳:小澤英実
演出:杉原邦生
出演:咲妃みゆ 山路和弘 / 中山翔貴
【横浜公演】
2027年1月20日(水)~31日(日)
会場:KAAT神奈川芸術劇場 <大スタジオ>
【神戸公演】
2027年2月6日(土)、7日(日)
会場:神戸文化ホール 中ホール
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/skylight/
フォトギャラリー(5件)
すべて見る
