井ノ原快彦「緊張よりもワクワク」ヨーロッパ企画と15年ぶりタッグ『世界の終わりかけとスリーコード』上演中
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ヨーロッパ企画特別興行『世界の終わりかけとスリーコード』公開ゲネプロより(撮影/井上嘉和)
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すべて見る上田誠が作・演出を手掛けるヨーロッパ企画特別興行『世界の終わりかけとスリーコード』が10月13日から、東京・サンシャイン劇場で上演されている。井ノ原快彦と劇団「ヨーロッパ企画」の15年ぶり3度目となるタッグが実現。公開ゲネプロに加えて、上田と井ノ原、そして共演する六角精児が出席した取材会の模様をレポートする。
『世界の終わりかけとスリーコード』は、2020年に劇団のラジオで配信した同名のフォークソングラジオドラマをベースに、近未来のフォークソングロードムービー音楽劇として再構築した作品だ。
舞台は文明が崩壊した近未来。世界から電気がなくなり、空前のフォークソングブームが巻き起こる。廃墟の東京をギターとともに旅するフウ(井ノ原)、そしてアコ(藤谷理子)。行く先々の街では、フォークトライブの刺客たちが立ちはだかる。青春フォーク、四畳半、アングラ、ネオアコ…。電気街からはファズギターの音が漏れ聞こえ、為政者はアコギを取り締まろうとする。フウはスリーコードで世界をどうにかできるのか。


本作は、タイトルこそSF的でどこかディストピアな響きを持ちながら、提示されるのは、決して壮絶な悲劇やヒーローの決死の戦いではない。そこに転がっているのは、ヨーロッパ企画が常に描き続ける「取るに足らない、でも愛おしい人間の日常」だ。世界の終わりという巨大なキャンバスを背景にしながら、登場人物たちは愛しいものを抱きしめながら、日々を送っている。


世界が「終わりかけている」という極限状態だからこそ、人間の本性や滑稽さが浮き彫りになる。必死になればなるほど可笑しく、そしてその愚直さが愛おしい。
最も基本的でシンプルなコード進行である「スリーコード」。限られたコードだからこそ、劇中で不器用に鳴らされるその音の響きが、登場人物たちの泥臭い感情や希望と重なり合ったとき、劇場内に言葉では説明できないグルーヴ感を生み出していた。


横浜、吉祥寺、新宿、渋谷、そして…。アコースティックギターが鳴り響く冒険物語は、それまで積み重ねたちっぽけな会話や選択、セッションの数々が巡り巡って、大きな熱量を客席に届ける。世界が混沌とし、どこか先行きが見えない今の時代だからこそ、たった3つのコードで紡がれるメロディが、まるで「世界がどうなろうと、俺たちは今ここで音を鳴らすんだ」。そんな小さくも力強い抵抗のように思えて心に刺さった。

井ノ原が上田誠の公演に出演するのは、『昭和島ウォーカー』(2008年)、『芝浦ブラウザー』(2011年)以来。また、23年にはヨーロッパ企画の25周年を記念した特別興行に、井ノ原がシークレットゲストとして出演するなど、親交を深めてきた間柄だ。
そして、「俺もうすぐ50歳になっちゃうから、上ちゃん一緒になんかやろうよ!」(井ノ原)、「井ノ原さんと会っては計画を練っているうちに、せっかくだからみんなで旅に出るのもいいかもね、となり、仲間集めが始まって」(上田)。そんな何気ない会話から、フォークソングを題材にした『世界の終わりかけとスリーコード』は動き出した。
上田は「今までやったことがない、新しいジャンルにチャレンジできるのが嬉しい。フォークソングもお芝居も昔からあるものだが、掛け合わせることで、かなり新しいエンターテインメントになった」と手応えを語る。「最初はお祭りのような気分で始まった企画」だったが、フォークソングと近未来のディストピア劇の融合は「登ったことのない山に挑む巨大な冒険」だと振り返った。

井ノ原が舞台で主演を務めるのは、約7年ぶり。「すごく久しぶりなので、この世界(舞台)に戻ってこられて感慨深いです。緊張よりもワクワクが勝っている。AIと密接にかかわるお話で、人間、特に表現者として何をすればいいのか、1つの答えが出せるような内容になっている」とこちらも闘志を燃やしている。
共演する六角は、俳優として舞台・映像と幅広く活躍する中、六角精児バンドでミュージシャンとしても活動、フォークをはじめさまざまな音楽に造詣が深い。井ノ原が10代の頃からの付き合いだといい、「六角さんからフォークソングの世界をどっぷり植え付けられている。お話の中でも、六角さん(が演じるスグル)は師匠のような存在」(井ノ原)、「大人になったなぁと(笑)。音楽と演劇がちょうど交わるお芝居を一緒にできるのが嬉しい」(六角)と音楽が紡いだ縁が、舞台で実を結ぶ共演に喜びを示していた。

出演者が芝居をしながら、歌唱や楽器の演奏もこなす点について、上田は「ハードルが高いので、俳優をされながら(コンサートなどで)プロとしても演奏しているお二人じゃないと。AIが発達している時代だからこそ、演奏する人間そのものがにじみ出るフォークソングを聞くのは面白いはず」と語り、井ノ原と六角に全幅の信頼を寄せている。
劇中を彩る20を超える楽曲は、全て上田が作詞・作曲を担当。井ノ原は「こんなこともできる人なんだなって。才能をバシバシ感じている」とその多才ぶりに改めて、驚いている様子。自身が舞台上で弾くギターは「20歳のときに買ったもの」だといい、「弦は切れるし、チューニングは狂うし。それでも続けることで、人間味が出てくる。台詞、段取り、歌詞、メロディ、コード。その時にしか味わえない、毎回違う舞台になると思います」と見どころを語った。
続けて、六角は「フォークを含めたアコースティック音楽は、芝居に共通している」と語り、「やっぱり、生身の人間が動かないと。今回のお芝居で上田さんが、そのテーマを言おうとしているわけではないかもしれませんが、最後は“人力”を信じたい」と話していた。

共演にはヨーロッパ企画の石田剛太、酒井善史、諏訪雅、中川晴樹、藤谷理子に加え、早織、清宮レイ、上田遥、亀島一徳、河本祐貴といった個性豊かな俳優陣が出演する。六角は「皆さんが僕に対して非常に優しいので、離れがたい。それでいて、ほどよく突き放してくれるので(笑)、僕にとっては心地良い現場」だと笑みを浮かべていた。

取材・文/内田 涼
撮影/井上嘉和
<公演情報>
ヨーロッパ企画特別興行『世界の終わりかけとスリーコード』
作・演出:上田誠
出演:
井ノ原快彦
石田剛太 酒井善史 諏訪雅 中川晴樹 藤谷理子
早織 清宮レイ 上田遥 亀島一徳 河本祐貴
六角精児
【東京公演】
2026年10月13日(火)~25日(日)
会場:サンシャイン劇場
【大阪公演】
2026年10月29日(木)~11月1日(日)
会場:SkyシアターMBS
【宮城公演】
2026年11月7日(土)・8日(日)
会場:多賀城市民会館 大ホール(多賀城市文化センター内)
【福岡公演】
2026年11月14日(土)・15日(日)
会場:クラフティア劇場(キャナルシティ博多内)
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/threecode/
公式サイト:
https://www.europe-kikaku.com/threecode/
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