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ハンブレッダーズ × 時速36km、互いの個性で拳を交わす──『秋のグーパンまつり 2026』福岡公演レポート

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ハンブレッダーズ × 時速36km『秋のグーパンまつり 2026』 Photo:サトウアイコ

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Text:荒金良介 Photo:サトウアイコ

ステージのバックドロップには、グーの形をした狐色に焼けたパンが大きく描かれている。とても可愛らしいデザインだ。しかし、ツアーの中身は決して可愛らしいものではない。毎年恒例の対バンツアー『秋のグーパンまつり 2026』を計5カ所で開催中のハンブレッダーズ。ツアー名について、ムツムロ アキラ(vo/g)はこの日も「対バンで拳でぶつかり合いましょう、という意味を込めて、“グーパンまつり”をやっています」と説明してくれた。

先輩後輩という上下関係を取っ払い、本気でぶつかり合える相手。初日の東京・豊洲PIT公演を終え、ツアー2カ所目の舞台は福岡・DRUM LOGOS。この日の対バン相手は時速36km。両者のライブを立て続けに観ることで、共通点も明らかになっていき、それぞれの個性が浮かび上がってきた。そうした点でも非常に興味深い対バンだったし、“拳でぶつかり合う”という言葉の意味も、両者のライブを観ることでより深く理解できた。

時速36km

SEが流れ、仲川慎之介(vo/g)、石井開(g/cho)、オギノテツ(b/throat)、松本ヒデアキ(ds/cho)の4人がステージに立つ。今年メジャー・デビューを果たした時速36kmは、「七月七日通り」でショウの幕を開けた。歌声も演奏も冒頭から高い熱量を放っている。鮮やかなスタートダッシュを決めると、フロアから無数の拳が突き上がり、クラップが鳴り響く。この日、初めて彼らの音楽に触れた人もいたかもしれない。仲川は鼻にかかったようなハスキーボイスで力強く歌い上げていき、怒っているようにも、泣いているようにも聴こえるボーカル。どちらとも言い切れない奥深い声色は、一度聴いたら耳にこびりついて離れない。石井がお立ち台でギターソロを披露すると、それに続いて仲川もソロをかき鳴らし、さらにオギノはステージ中央のマイクで歌い上げる。その押しの強さこそが、彼らの個性を際立たせていた。

アカペラで始まった「ハロー」では躍動感あふれるサウンドが叩きつけられ、飛び跳ねる観客の姿も見られた。ハードロック調のギターソロが鋭く斬り込んでくる場面にも、心底ゾクゾクさせられる。きめ細かなドラミングが冴え渡る「オーバードライブ」を演奏したあと、「仲のいい先輩は少なくないけど、特によくしてくれる先輩です。あの人たちの背中を見てきたし、あの人たちがバンドでやろうとしていることの美しさを、どこかに落とし込めたらいいなと」と仲川は語った。

ピンクの照明に包まれて「Beyond the Sea, Above the Lights」へと移ると、スローテンポの曲調にラップを乗せ、グッと大人びた音色でフロアを揺らしていく。前のめりのバンド演奏だけではなく、肩の力を抜いたオシャレなサウンドで、会場の雰囲気を一変させる。音数を抑えたアレンジの中に豊かな表情が息づいていた。

中盤が過ぎ、「Happy」を挟んだところで仲川は「スクールカーストの最底辺から青春は歌えないけど、学生の頃、プロレスごっこの相手をさせられたり、上履きを隠されたりして‥‥‥トイレでエレカシやレッド・ツェッペリンを聴いて、あいつらよりかっこいいと思っていた。弱者が集まっているバンドが、これだけの人を集めている。だから、ハンブレッダーズのあとを追いかけたくなるんだ」と熱い思いを語る。

後半の「ゴースト」は哀感を帯びた歌声に加え、メンバー4人が一枚岩となって繰り広げる演奏も圧巻の一言だった。続いて「その未来」へと移ると、石井、オギノ、松本による重厚なコーラスにも引き込まれてしまう。ラスト曲「銀河鉄道の夜明け」では熱い拳が突き上がり、会場の温度はさらに上昇。疾走感あふれるエモーショナルなロックで豪快に駆け抜ける。また、「負けっぱなしでグズグズでもって待ったなしで夜は明けていく 俺だけじゃない 君だけじゃない」、「まずはなんか食いに行こうぜって事さ」といった等身大の歌詞をストレートに届けてくる。うまくいかない世の中にあっても、一縷の希望を抱いて突き進む真摯な姿勢は、多くの人の共感を呼ぶものだった。

ハンブレッダーズ

そして、温まったフロアにハンブレッダーズの4人が登場した。ムツムロ、ukicaster(g)、でらし(b/cho)、木島(ds)による演奏が始まると、序盤からフロアはとんでもない熱量に包まれる。ムツムロはステージ上で何度も飛び跳ね、エネルギッシュなパフォーマンスで観客を焚き付けていく。サビでは合唱が起こり、ここにいる全員が自分自身の歌として曲を受け止めているようだった。また、ukicasterはお立ち台でハードロック調の切れ味鋭いギターソロを弾きまくる。その姿に、どこか既視感を覚えた。時速36kmとハンブレッダーズは同じ4人編成であるだけではなく、ギターを前面に押し出したスタイルという共通点も持っている。そこにはギターを軸にロックを鳴らすという両者の美学が感じられた。

AC/DCを彷彿とさせる図太いギターリフで攻める一方、4人によるバチバチのアンサンブルを聴かせるパートもあるなど、押し引きの効いた演奏も聴き応え十分だ。そうしたサウンドに埋もれることなく、存在感を放つのがムツムロの歌声である。変化球を投げるというより、直球を聴き手の心に投げ込むボーカリストと言えるだろう。小手先のテクニックに頼ることなく、曲に込められた感情に寄り添い、どこまでも誠実に、どこまでも伸びやかに歌い上げる。

MCでムツムロは、「時速36kmは地声をめっちゃ張り上げて歌うんですよね。叫びにも聴こえるし、泣いているようにも聴こえる。俺、(仲川)慎ちゃんの声がめちゃくちゃ好きで。ボーカリストの中でも、この声になりたかったなと思う人なんですよ。俺はそういう音楽にずっと救われてきたから。慎ちゃんだけじゃなくて、ほかの3人も声で言うと、地声を張り上げているような演奏をしていると思うんです」と対バン相手を評していた。

さらに「俺は地声でガンと殴ってほしい」と付け加えていた。その姿勢は、ハンブレッダーズにも時速36kmにも共通するものだろう。演奏に関しては、地に足のついたアプローチでどれだけ面白いことができるのかが重要なのだろう。そこにバンドサウンドの醍醐味を見出しているのが、両者なのかもしれない。ならば、どこで差別化を図るのか。そう考えると、歌う人間、演奏する人間という根本的な部分に辿り着く。つまり、一人ひとりが持つ個性こそが最大の武器になるのだ。

ハンブレッダーズと時速36kmはバンドスタイルこそ似ているが、生み出される音楽はまるで違う。では、改めて“拳でぶつかり合う”とは、どういう意味だろう。相手の姿を通して、自分にはないものを素直に認める一方で、自分だけが持つものを丁寧に磨き上げ、前面に出すことではないだろうか。

そして、後半のMCでムツムロは、「福岡で初めてライブをした日からずっと好きです、というファンレターをこないだもらったんですよ。インターネットではいくらでもウソをつけるから、その手紙に応えられる自分でいたい」と述べていた。SNSが社会に浸透した現代だからこそ、人と人との温もりや繋がりを大切にする姿勢が、そこには表れていた。福岡では、ほかの都市よりもライブ中に手が挙がらないことが多いそうで、「僕の中ではそれがうれしくて。ちゃんと聴いてくれているな、という感じがするんです」と、観客の反応を前向きに受け止めていた。

激しい曲では手が挙がり、静かな曲ではじっくりと聴き込む観客に福岡ならではの熱量を感じずにはいられなかった。ツアーはまだまだ続く。訪れる土地ごとに、また違った表情が待っているに違いない。それもまたライブの醍醐味と言えるだろう。いやあ、いい対バンだった。

<公演概要>
ハンブレッダーズ『秋のグーパンまつり 2026』
10月11日 福岡・DRUM LOGOS
出演:ハンブレッダーズ、時速36km

【時速36km / Setlist】

1. 七月七日通り
2. ハロー
3. オーバードライブ
4. Beyond the Sea, Above the Lights
5. Happy
6. ゴースト
7. その未来
8. 銀河鉄道の夜明け

<公演情報>
『ハンブレッダーズ 秋のグーパンまつり 2026』
※終了公演は割愛
10月30日(金) 愛知・名古屋ダイアモンドホール
開場17:30/開演18:30
ゲスト:SKRYU

ハンブレッダーズ Official Site

https://humbreaders.com/

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