単にカッコいいだけでない道枝駿佑にも注目! 竹村謙太郎監督が語る『うるわしの宵の月』
映画
インタビュー
(C)2026映画『うるわしの宵の月』製作委員会 (C)やまもり三香/講談社
続きを読むフォトギャラリー(4件)
すべて見る道枝駿佑が主演を務め、ヒロインを安斉星来が演じる映画『うるわしの宵の月』が公開を迎える。累計820万部突破の大人気漫画を原作に、ふたりの“王子”が織りなす恋模様を甘く切なく描き出す本作。監督を務めたのは、『アンナチュラル』、『中学聖日記』などの話題のドラマで演出を務め、映画『交換ウソ日記』で映画監督デビューを果たした竹村謙太郎。道枝と安斉の圧倒的なビジュアルが目を引く本作だが、リアリティのある人間ドラマとして描くべく、竹村監督はどのようにアプローチしたのか?
――やまもり三香さんによる原作漫画を読まれての印象、映画として構築する上で、原作のどういう部分をエッセンスとして抽出し、描こうと考えたのか教えてください。
竹村 「王子と王子」という物語の面白さって普通の少女漫画にはないですよね。「王子のような男子がなぜ普通な私に……!?」というのは多いですけど、両方とも王子というのは珍しいなと。
一方で、原作を読んだ印象としては、難しいなと思いました。2時間の映画にする上で、ものすごく特別な大きなことが起こるわけでもなく、意外と地に足の着いた普通の人間の物語で、そこをどう描いていくか? 外面的にはすごくカッコいいんだけど、意外と不器用で、普通で……、もっと言うなら、普通以上に臆病なふたりの話なので、そこを丁寧に描いていかないといけないと思いました。
――実写映画として見せる上で、原作があり、“王子”と呼ばれるほどのビジュアルのふたりという設定なので、そこをしっかりと表現する必要もあり、そんなふたりを地に足の着いた人物として描かなくてはいけないという……。
竹村 そうなんですよね(苦笑)。ビジュアルに関して言うと、原作でも(道枝演じる)琥珀はプラチナブロンドの髪色で、一歩間違えると、悪い意味でキャラ立ちし過ぎてしまい、キャラ先行になって「そんなヤツ、いないでしょ」となってしまうし、そうなると地に足の着いたドラマの部分までリアリティを失ってしまう。カメラテストを繰り返し、琥珀の持つ危なっかしさと骨太な部分と、道枝くんの持つミステリアスな透明感みたいな“引力”が、ちょうどいいバランスで実在感を持って受け入れられるギリギリのラインを追求してつくっていきました。
現場で伝えたキーワードは「はみ出ていいよ」

――道枝さんと安斉さんの存在感や演技力による部分も大きかったかと思いますが、おふたりとはどんなお話をされたんでしょうか?
竹村 道枝くんにとって「王子でいてください」という部分は、まあ日常のお仕事ですから(笑)、慣れているし、問題なくできると思うんですけど、そうじゃない部分――琥珀が「どうしてこんな気持ちになるんだろう?」となる部分を泥くさくやってほしいという話はしました。
安斉さんも宵の「女子だけど王子」という部分は、きちんと立ててあげればできるので、琥珀に言い寄られて「どうしたらいいんだろう?」みたいな部分、人間くさい部分をどうするのか? 「こういう気持ちだからこれくらいドギマギしてほしい」とか言葉で説明するのではなく、とにかく「揺れてほしい」と思っていました。理屈じゃなくて、翻弄されつつも、でも嫌ではないという感覚もあって、そんなとき、どうなるのか? とりあえずやってもらうという感じでした。
道枝くんも、忙しい中でも原作を深く読み込んで「(琥珀が宵に)こんなふうに触れるよね?」みたいな部分もしっかりと準備はしてきてくれたんですけど、実際に現場で琥珀と宵として動いてみると、そこで生まれる化学反応があって、理屈を超えて「そこでそんなに強い表情をするんだ!」とか、「こんなに感情があふれるんだ?」みたいなことがどんどん出てくるんですよね。
現場で伝えたキーワードは「はみ出ていいよ」というものでして(笑)、はみ出して、揺れて、後になって「あれは何だったんだろう……?」というのが、人間だよねと。出会って、こんなことが起きて、こんな気持ちになって……とキレイに整理整頓されて、道ができているものじゃなく「よく分かんないけど、何となく気になる」というのを言葉にしないで、感じたままやってもらえたらいいなと。

――映画のジャンルとしてはラブストーリーなんでしょうけど、お話を伺っていると、ゴール(恋の結末)に向かって進めていくというより、半ばドキュメンタリーのように人間と人間のやりとりをカメラに収めていくという感じですね。
竹村 そうですね。途中で恋敵が出てきたり、ふたりをかき乱すような存在が出てきたりもするんですけど、そこはそんなに割合として多くはなくて、見た目は派手でカッコいいんだけど、運命的な出会いを果たしたふたりの初恋を静かに育てていくという物語なんですよね。いろいろあるけど、恋人というよりも、お互いの内面を認め合える“同志”、本当の自分を肯定してくれる相手という感じで、激しく燃え上がるような恋の炎ではなく、微熱くらいの感じなのかな(笑)? それは高校生のふたりの物語としてあるよねと。その温度感は意識してつくっていましたね。
だから、触れそうで触れなかったり、あえてセリフを削いで目線だけで見せたり、それは決して分かりやすくはないかもしれないけど、「いろんなことを考えて、感情が渦巻いているよね」というのが伝わればいいのかなと思いました。
道枝くん自身がきちんと準備してきた土台があるからこそ出せるもの

――実際、琥珀は主人公であるにもかかわらず、決してセリフが多いわけではなく、ちょっとした表情や目線で感情を伝えるようなシーンが多かったです。道枝さんとご一緒されていかがでしたか?
竹村 先ほども話しましたが、あんまりこちらから「こうしてほしい」というのを決め打ちしないようにしていて、道枝くん自身、原作をものすごく読み込んで、動きや仕草も研究して、きっちりと準備をしてくれていたし、その上で現場でのひらめきみたいなものを見せてくれるんですよね。
「え? なんで今、そんなことしたの?」ということをたくさんしてくれて、でもそれは、きちんと準備してきた土台があるからこそ出せるものだし、緻密に積み上げてきたものを大胆に捨てる潔さは、本当に俳優として素敵だなと思いました。
――監督の視点で、「ここに注目してほしい」「このシーンの道枝さんの表情を見逃さないでほしい」といった部分があれば教えてください。
竹村 基本的に、全編を通して道枝くん、安斉さんの麗しさを楽しめる“眼福映画”になっていると思います(笑)。でも、それだけではなく、琥珀がちょっとムキになっているところとか、「そんなこと言われてもさ……」という感じの表情になっているところとか、単にカッコいいだけでない道枝駿佑を見てもらえると思います。汗だくで走っている、不器用なカッコよさみたいな部分は、これまであまり見せてこなかった部分かなと思うので、ぜひ見てほしいですね。
取材・文:黒豆直樹
<作品情報>
『うるわしの宵の月』
公開中
公式サイト:
https://uruwashi.toho-movie.jp/
(C)2026映画『うるわしの宵の月』製作委員会 (C)やまもり三香/講談社
フォトギャラリー(4件)
すべて見る
