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『クジラに落ちた男』原作者と出演者が語る。「自分にとって深い意味のある作品」

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公開中の映画『クジラに落ちた男』は、タイトルの通り、巨大マッコウクジラに丸呑みされた主人公のサバイバルを描いた作品だが、その先には主人公の成長劇や父子の感動ドラマが描かれる。本作はなぜこんなにも緊張感があり、同時に心の奥深くまで響く作品になったのか? 原作と脚本を手がけたダニエル・クラウスと、主人公の父親ミットを演じた名優ジョシュ・ブローリンに話を聞いた。

本作の主人公ジェイ・ガーディナー(オースティン・エイブラムズ)は長年、父と複雑な関係にあったが、病気で死期が迫っていた父ミット(ブローリン)はある日、自らこの世を去った。その後、ジェイは海に潜っている時に巨大なクジラに吞み込まれてしまう。クジラの腹の中でジェイは、父から厳しく教えられたことが脱出のカギになるかもしれないと気づく。ジェイの酸素は残り1時間。彼は脱出を試みる中で、父との関係を振り返る。

原作者のダニエル・クラウスは、『Angel Down』でピュリツァー賞に輝いた作家で、実際にダイバーがクジラに吞み込まれたニュースを目にしたことから本作の創作が始まったという。

「僕は以前からずっと、限られた空間で展開する物語が大好きなんです。映画でも、ホテルの部屋を舞台にしたリチャード・リンクレイターの『テープ』や、ライアン・レイノルズが棺の中に閉じ込められる『リミット』のような作品や、『ヘイトフル・エイト』のように、登場人物がひとつの空間に閉じ込められている作品が大好きなんです。それは、選択肢が非常に限られることで、クリエイターとして自分の実力を試されるからだと思います。まるで自分の力を証明しなければいけない試練の場のようで。使えるトリックは何もないし、遊べる場所もひとつだけ。その限られた資源を使って、物語全体を通し、読者を引き込むだけのドラマを作り出さなければならないわけです」

そこで、彼は徹底的にリサーチを重ねて、実際にクジラの腹の中でサバイバルし、脱出するためのディテールを精緻に追及していった。もちろん、そこに物語を盛り上げる設定、彼にとっては試練になるような要素を加えることも忘れてはいない。

「クジラの腹は非常に狭い空間で、主人公のダイバーが役に立つものを何も持っていないことにもこだわりました。ダイブナイフも懐中電灯も持っていない。つまり、彼はクジラの体の構造と、クジラが飲み込んだものや残骸だけを頼りに行動しなければならないわけです。効率性やその必死な感情、そして自分の創造性の限界を超えていこうとする様は、制作しているアーティストが経験するものを鏡に映したように似てもいます。限られた要素でプロットを作ろうとする僕と、同じように限られたものしかないジェイ。果たして僕らはこの状況から抜け出せるのか、とね」

一方で本作は主人公の成長と、彼と父の物語を描く感動作でもある。長い歴史の中で人間は繰り返し“主人公が巨大な生物に吞み込まれ、脱出する物語”を描いてきた。旧約聖書の「ヨナ書」では預言者ヨナが大きな魚に吞み込まれ、最終的には陸に吐き出される。ディズニー・アニメーション映画『ピノキオ』では、ピノキオが父ゼペットを救うために自ら巨大なクジラに吞み込まれる。ここでは“生と死の境界に触れ、脱出を経て成長する物語”が描かれるが、本作は主人公の成長だけでなく、父と子の物語も描かれる。主人公を間接的に導き、記憶の中でその複雑な関係を変化させていく父を演じたのは名優ジョシュ・ブローリンだ。

「ダニエルの本を読んだ時にすごく感情移入しました。映画化されるとか、誰かが製作や監督するとか、そんなことを当時聞いたかどうかは覚えていないけど、誰かに教えてもらったのかもしれない。この本は本当にたくさんの人に勧められたから、記憶が少し混乱していて。とにかく、誰かが勧めてくれたかは覚えていないけど本を読み終え、とてもエモーショナルな気持ちになりました。そして、これは何か、自分の中の深いものに触れたんだなと思いました」

父ミットは主人公ではないため、劇中に頻繁に登場するわけではない。しかし、本作は全編にわたって“父子のドラマ”が描かれていると感じられる。

「スペクタクルと感情的な体験の違いということかもしれません。親子の物語が基盤になっているから、誰もがこの物語をどこかパーソナライズすることができるのではないでしょうか。親と子の物語がこの作品のすべての基にあります。僕は『トゥルー・グリット』に出演しましたが、出番は5分か7分とかだったんです。でも、登場人物全員が僕の演じたキャラクターに動機づけられているために、彼がずっと出ていたように感じる。物語全体がひとりのキャラクターによって動かされていたからなんです。観客のみんなは僕が映画全編に出演していると信じているけれど、実はそうじゃないんです」

極限のサバイバル劇が進んでいく中で、父の厳しい姿勢の奥にある想いが浮かび上がり、息子の父への想いの変化が描かれ、物語はさらに豊かなものになる。この変化を支えているのが俳優たちの真摯な演技だ。

「この映画に関わりながら、自分は現状に甘んじて怠けてはいないか? と常に問いかけることになりました。そのような態度で本作に関わりたいと深く感じたからです。演技コーチをつけて、もっと色々試して、より深く掘り下げたいと思いました。この映画を最後に引退しても良い、と思ったぐらいです」

全フィルムメイカーと映画ファンが彼の引退を阻止することになるだろうから、心配には及ばないが、ブローリンの本作にかける想いの強さは伝わってくる。作者も俳優も自ら挑戦し、強い想いをもって取り組んだ本作は、他の映画にはない感動を観る者に与えてくれるだろう。

「僕も海の近くで育ちましたから、海と深いつながりを感じています。本作では海と親子の物語が描かれるわけですから、自分にとっても深い意味のある作品なんです」

『クジラに落ちた男』
公開中
(C)2026 20th Century Studios. All Rights Reserved.

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