ほぼ全裸、肩パッドだけの男たちに泣かされる!? エディンバラを熱狂させ、星5つを獲得した『GALAXY TRAIN-銀河鉄道の夜-』
ステージ
ニュース
『GALAXY TRAIN-銀河鉄道の夜-』稽古場より
続きを読むフォトギャラリー(9件)
すべて見る「劇団鹿殺し」の菜月チョビと丸尾丸一郎による演劇ユニット「2Shoulderpads」による音楽劇で、2025年、2026年と2年連続でエディンバラ・フェスティバル・フリンジにて上演され、絶賛を浴びた『GALAXY TRAIN-銀河鉄道の夜-』が東京と大阪で上演される。男性キャストが舞台上で身にまとうのは2枚の肩パッド(ショルダーパッド)のみという衝撃的なビジュアル…! なのに「泣ける」と話題の本作。10月中旬、通し稽古が行われた稽古場に足を運んだ。
もともと「鹿殺し」が独自に生み出した演出方法で、男性キャストの衣装は肩パッド2枚のみで、肉体と想像力を武器に「銀河鉄道の夜」や「星の王子様」、「オズの魔法使い」など多くの人が知る児童文学の名作を独自に解釈し直し、世に送り出してきた。音楽にタテタカコ、伊真吾、振付に伊藤今人(梅棒)、浅野康之を迎え、2025年に世界最大級の芸術祭「エディンバラ・フェスティバル・フリンジ」に初めて参加し全ステージ完売、数々のメディアから5つ星の評価を得て、歴史ある「Spirit of the Fringe Award」を受賞した。2026年は同じくエディンバラで1か月のロングランに挑戦。ASIAN ART AWARD 2026にて、最優秀作品賞にあたるOutstanding Showに輝いた。
今回、多くの舞台作品の制作・プロデュースを手掛けるCUBEの新プロジェクト「CUBE GLOBAL STAGE PRESENTS」の第1弾として、オーディションによる新メンバーも加えて『GALAXY TRAIN-銀河鉄道の夜-』日本凱旋公演が行われることになった。
この日は、通し稽古が行われ、笠松遥未、丸尾丸一郎、橘輝、ATSUSHI、松浦司、徳田皓己が出演。菜月チョビは演出席から見守った。

本作は、凱旋公演とあって、エディンバラで上演された英語と日本語をミックスしたオリジナル言語によるバージョンをそのまま上演するというもので、冒頭、英語(といっても、ゆっくりとした口調)による前説があり、英語で書かれたスケッチブックを掲げつつ、本作がどのような作品で、どういう経緯で生まれたかが観客に説明される。
「ショルダーパッズとは、世界最小の衣装である。これは、観客の想像力を最大限に高める夢のような試みであり、SDGsにもフィットする。さあ、身も心も自由に解き放とう!」と英語で呼びかけ、5人の男たち(この時は蝶ネクタイにシャツという正装という設定)が登場する。そして、ピアノの伴奏が鳴り響き、ジョバンニ(笠松)が「I can go anywhere。(私はどこにだって行ける!)」と歌声を響かせ、物語がスタートする。

この最初の楽曲の途中で、5人の男たちは、次々と正装をはぎ取られ、裸に2枚の肩パッドという姿を披露することになる。この日はあくまでも稽古ということで、(残念ながら)裸ではなく、衣服の上にゴム付きの肩パッドを着用するという形となったが、それでもインパクトは十分! 美しい楽曲、力強い歌声と男たちの衝撃のビジュアルに、テンションが否が応でも高まっていく。
物語の展開自体は、ほぼ原作通り。主人公の少年・ジョバンニは病弱な母と暮らし、自らも学校の後で働きながら、遠洋漁業に出ている父の帰りを待っていた。学校のクラスメイトたちは彼の貧しさをからかい、父が帰ってこないのは密漁で捕まったからだと囃し立てるが、幼い頃からの親友・カンパネルラとの関係がジョバンニの心の救いとなっていた。星まつりが開かれる夜、母のためのミルクを受け取りに牧場に行ったジョバンニは、ふと気づくと宇宙を走る銀河鉄道にカンパネルラと共に乗っていた。途中、様々な乗客とも出会いながら、ジョバンニはカンパネルラと共に「どこまでも行こう」と約束するのだが…。

“裸に肩パッド2枚で股間を覆った男たち“というビジュアルのインパクトゆえに “イロモノ”扱いされがちだが、作品を見れば、彼らの“本気”と共に、決してウケ狙いやインパクトのみを重視して、このスタイルを選んだわけではないことがきちんと伝わってくる。
最初の内は、どうしても“そこ”に目が行ってしまうのは事実。途中、登場人物が、肩パッドを支えるゴムひもを思いきり引っ張ったり、共演陣が慌てて、股間の部分を隠そうとするなど、この衣装をネタにしたコント的なコミカルなやりとりで笑いを誘うシーンもしっかりとあるのだが、面白いことに、物語が進むにつれて、彼らがどんな格好をしているかなど、全く気にならなくなっていく。想像力によって自由に人々や銀河鉄道、学校の様子を頭の中で補いながら、物語に没入させられる。
終盤にかけてのジョバンニとカンパネルラの「ほんとうのさいわいとは何か?」を巡るやりとり、そして別離など、しっかりと泣かされてしまう“強さ”を持った作品となっており、目の肥えたエディンバラの観客や批評家が、純粋な演劇として称賛したことがうなずける。


演出およびジョバンニ役(トリプルキャスト)の菜月は、本作について「お客様に見ていただければ、このスタイルが、一番演劇的で、最も原始的な演劇の魅力があると受け取ってもらえるという手応え、それだけの強さを持っている作品だという思いはありましたし、それはいまも変わりません。真面目に、しっかりと演劇をやっているというのがわかってもらえるはず」と自信を口にする。そして今回の凱旋公演について「エディンバラの風をそのまま持っていきたい」とあえて日本人向けに変更を施すことなく、エディンバラでの公演をそのまま上演することにしたと語る。

そして、本作の楽しみ方として「いまの時代、AIなどを使えばどんな映像も見られるけど、何も使わなくても、想像力を駆使するだけで、すごいものが見られるっていうことがわかると思います。劇場からの帰り道で『俺、男たちお尻でちゃんと泣けてた!』と自分の想像力の豊かさに嬉しくなるような作品です(笑)」と熱く語ってくれた。

丸尾は、オーディションを経て加わった新メンバーの成長への手応えを口にし、日本の観客に向けて「僕らは純粋に真面目に誠実にお芝居をつくっています。最初の一歩を踏み出していただければ、『こんな演劇があるんだ?』、『演劇ってこんなに自由なんだ!』と感じていただけて、新しい扉が開くと思います。最初はショルダーパッドだけの男たちの姿を笑ってもらいつつ、見終わったら、明日からの一歩が少しだけ軽くなったり、少しだけ目線を上げて世界を見られるようになっている――そんな作品です」と言葉に力を込める。
いったい何が世界最大級の芸術祭に足を運んだ人々を熱狂させたのか? その目で確かめてほしい。

取材・文/黒豆直樹
撮影/池上夢貢
<公演情報>
CUBE GLOBAL STAGE PRESENTS
2Shoulderpads『GALAXY TRAIN-銀河鉄道の夜-』
原作:宮沢賢治『銀河鉄道の夜』
(北村想 作「想稿銀河鉄道の夜」からの⼀部引用あり)
脚本:丸尾丸一郎
英語台本・演出:菜月チョビ
音楽:タテタカコ、伊 真吾
振付:伊藤今人、浅野康之
アンバサダー:古田新太
出演:
ジョバンニ:菜月チョビ/笠松遥未/川平花(トリプルキャスト)
カンパネルラ:丸尾丸一郎
ザネリ:島田惇平/松浦司(ダブルキャスト)
マルソ:橘輝
カトウ:谷山知宏/ATSUSHI/千葉一磨(トリプルキャスト)
先生:浅野康之/伊藤 奨/徳田皓己/金平武蔵(クアトロキャスト)
【東京公演】
2026年11月11日(水)〜11月15日(日)
会場:CBGKシブゲキ!!
【大阪公演】
2026年11月18日(水)〜11月20日(金)
会場:ABCホール
【東京凱旋公演】
2026年11月25日(水)〜11月29日(日)
会場:CBGKシブゲキ!!
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/cube-shoulderpads/
フォトギャラリー(9件)
すべて見る
