音楽専門誌『ぴあMUSIC COMPLEX』連動企画
“歴史的大事件”ヘッドライナーのAdoをはじめ、HANA、BE:FIRST、サカナクション、デヴィッド・バーンほか、「SUMMER SONIC 2026」DAY2をレポート
PMC編集部
第279回
Ado Photo by Viola Kam (V'z Twinkle)
今年25周年を迎えた「SUMMER SONIC 2026」(以下、サマソニ)。今年は、8月14〜16日の3日間、東京・大阪の2ヶ所で同時開催された。8月15日、東京会場(千葉・ZOZOマリンスタジアム、幕張メッセ)2日目のレポートを、Adoが表紙を飾る『PMC Vol.41』にてAdoのインタビューを担当したライター・布施雄一郎がお届けする。

東京2日目の千葉・ZOZO、マリンスタジアムのMARINE STAGEはバラの花をあしらったオブジェで彩られていた。この日のトップバッターは、高い歌唱力とダンスパフォーマンスで圧倒的な存在感を誇るHANA。デビューした昨年に続く2度目の出演ながら、長年MCを務めるサッシャが「(MARINE STAGEに)最初に登場するアーティストで過去最高級(の動員数)かも」とコメントするほど、ぎっしり満員の観客で、ほどなく入場規制がかかるほどであった。
そんな熱気の中、ヘビーなギターサウンドがスタジアムに轟くと、メインステージの一段高いスペースに7人が横一列に並んで登場。CHIKAが「What's up SUMMER SONIC! We are HANA!」と叫び、観客が絶叫する中、「ALL IN」からステージはスタート。続けざまに「NON STOP」「Burning Flower」を畳みかけ、「Burning Flower」でのダンスブレイクでは、力強さとしなやかさが交錯する彼女たちのダンスに観客は熱狂していく。
そんな激しいパフォーマンスから一転、MCでKOHARUが「今日、こうやって前回よりもっと大きいステージに、みなさんと一緒にここ(SUMMER SONIC)に戻ってこれました」と感謝を述べると、MAHINAは「暑すぎない!?(笑)」と会場を和ませ、さらに「スタンドのみなさん、ヤッホー!」というコール&レスポンスで愛されキャラを発揮。そうして笑顔に包まれた7人が、再び圧倒的なパフォーマンスに戻るというギャップもまた、彼女たちの大きな魅力の一つだ。
「My Body」では、KOHARUの魅惑的なダンスやMOMOKAのクールで力強いラップに目と耳を奪われると、続く「Cold Night」のラスト、8小節に及んだCHIKAの驚異的な超絶ロングトーンは圧巻のひと言だった。「Bad Girl」を挟み、「次の曲はみなさんと一緒に歌いたいと思います」というJISOOのMCで大ヒット曲「Blue Jeans」が歌われると、次の「BAD LOVE」は全員がスタンドマイクでしっかりと歌を聴かせてくれた。
そして最後にCHIKAが「どんなに泥だらけの醜い世界でも、私たちは絶対に、強く、美しく咲き続けます。私たちの声と思いが、あなたに届くことを願っています」とメッセージを送ると、ファルセットのハイトーンと力強い歌声がシームレスにつながるNAOKOのボーカルが見事だった「ROSE」でライブは終了。会場のあちらこちらから「すごかった!」「カッコいい!」という声が上がっていた。

6年連続のSUMMER SONIC出演となったBE:FIRSTは、直前の8月8日、米国で開催された世界的な音楽フェス「Head in the clouds LA」のステージにも立ったばかりで、グローバル展開に向けた新曲「BRUCE WAYNE feat. Flo Milli, ATL Jacob」を7月31日に配信リリース。新たなフェーズへと歩みを進めている真っ只中でのMARINE STAGEへの登場となった。
その1曲目は、まさに大注目の「BRUCE WAYNE」。現代ヒップホップシーンのど真ん中を行くトラックと、威風堂々と観るものを圧倒するパワフルな6人のダンスは、まるで今後の彼らの方向性を宣言するかのような自信に満ちたパフォーマンス。そこから「Mainstream」「BE:FIRST ALL DAY」と近年の彼らを象徴する楽曲を続けると、ビートやラップに合わせたSOTAの細かくもダイナミックな動きが、さらに力強さを増していく。続く「Rondo」のブレイク部分でドラム/ベース/キーボード/ギターのサポートメンバーが登場すると、同曲の終盤からはバンドサウンドにシフトチェンジ。そのままバンドアレンジで代表曲「Boom Boom Back」がはじまると、そのイントロでSOTAが「25周年、過去イチ踊り散らかしに来ました!踊れ、サマソニ!」と叫び、MARINE STAGEは熱狂のるつぼと化していった。
そもそもエネルギッシュなボーカルとダンスを展開するBE:FIRSTが、爆発力あるバンドサウンドを従えると、それはもはや向うところ敵なし状態。「GRIT」のときに降りはじめた雨ももろともせず、立て続けに「Secret Garden」を披露。ここでバンドのセッションをバックに、SHUNTOが「オレらデビュー5年目にして次のフェーズへ向かって、ジャパニーズボーイバンドが世界に通用することを証明しようと進んでいる最中です」と語り、「今日まで生きて来たあなたたち1人1人に向かって、この曲を届けたいと思います」と「Brave Generation」へ。「Great Mistakes」では、LEOが「好きでも嫌いでも関係なく、あなたのために楽しんでくれ!」と叫ぶと、ビートに合わせて様々な色のタオルが会場全体で振られ、風が起こった。
ライブも終盤にさしかかると、「Bye-Good-Bye」「夢中」「I Want You Back」(Jackson 5のカバー)といった曲で彼らはしっかりと歌を聴かせ、ラストには7月1日リリースの「Missing」をライブで初披露。ノンストップで13曲、BE:FIRSTは今年もサマソニを全力で駆け抜けていった。

一方の千葉・幕張メッセMOUNTAIN STAGEには、今回のSUMMER SONICで初来日を果たした英国ロンドン発のインディーポップデュオGood Neighboursが遂に登場。00年代のインディロックと、現代的なプロダクションを融合させたサウンドで注目を集める2人組。ライブでは、ボーカルのオリ・フォックスがギターに加えてフロアタムを叩きながら歌うなど、ユニークなバンドスタイルで、最新シングル「Superstar」の他、新曲として「Mary Jane」を世界初披露。ステージを終えるころには大勢の観客を集め、早くも日本のロックファンの心を掴んでいた。

SONIC STAGEでも、英国オックスフォード出身のスーダン系25歳のシンガーソングライター、エルミーンが日本初パフォーマンスを披露。ソウルフルでありながら、海や青空といった自然を感じさせる透き通った歌声は、とても美しく、なおかつ大地のような壮大さを兼ね備えており、7月31日に日本発売されたばかりのアルバム『サウンズ・フォー・サムワン』の収録曲を中心にライブを行った。日本フリークの彼は大ファンだと言う『ONE PIECE』の主題歌「ウィーアー!」をワンフレーズ歌うといった場面も。その流れで、まさかの藤井風がサブライズゲストとして登場し、2人でコラボレーションした楽曲「Comets+Gold」が歌われると、会場は歓喜に包まれた。

MOUNTAIN STAGEで9曲を演奏した羊文学は、最新作『Don’t Laugh It Off』の曲を中心にバンドの独自性をいかんなく発揮。シューゲイザー感を強く漂わせる塩塚モエカのギターと、クリアでダイナミックな河西ゆりかのベースが爆音で轟く中、塩塚の歌声が会場中に響き渡るという音圧感を前面に押し出しつつも、その狭間で現れる静寂とのコントラストを活かしたサウンドデザインで、「doll」「Burning」「more than words」「Dogs」などを演奏。堂々たる演奏で、MOUNTAIN STAGEエリアをはみ出てしまうほどに集まった観客たちに心地よい音圧を浴びさせてくれた。

アート性、音楽的斬新さ、あらゆる点で群を抜く完成度を展開したのはCorneliusのステージだ。特に言葉で観客をあおることもなく、さらに複雑な変拍子的フレーズを多々織り込んだ楽曲であるにもかかわらず、生きたバンドのグルーブで観客の身体を揺らしてくれる。何と言っても「Audio Architecture」をはじめとする、人力演奏で完璧なまでに同期した幾何学的な映像とのコラボレーションは秀逸。大野由美子のモーグベースとあらきゆうこが叩き出すビートを土台に、堀江博久が印象的なフレーズをシンセで奏でる中、小山田圭吾のエッジが効いたギターカッティングと素朴な歌声がレイヤーとなり、芸術的な音世界を創造する。そうかと思えば、大野がエレキベース、堀江がギターをかき鳴らすロック色の強い「Count 5 or 6」も痛快。クールなだけでなく熱力もある生演奏でありながら、映像と照明、音響とがパーフェクトに一体化したSONIC STAGEでのパフォーマンスだった。

「MOUNTAIN STAGEは狭すぎる」。そんなことが真っ先に頭をよぎったのが、サカナクションのライブだった。開演30分前から既にMOUNTAIN STAGEエリアに入ること自体が難しい状況で、早々に入場規制がかかるほどの観客を集めた彼ら。だが、その様子を見ていると、当然ながら“魚民”と呼ばれる熱心なコアファンたちはアリーナ前方を陣取っていたのだろうが、MOUNTAIN STAGEの後ろ半分のエリア埋めた多くの観客は、「一度、サカナクションを観てみたかった」という音楽ファンたちだったのではないだろうか。
フロントマン山口一郎の鬱病による活動休止期間を経て生み出された「怪獣」、今年の春、突如として世界的なバズ現象を巻き起こした14年前の作品「夜の踊り子」といった楽曲をきっかけにサカナクションに関心を持った人はたくさんいたはず。そんな、ファンの間で“稚魚”と呼ばれるサカナクション初心者の入門編として最適でありつつ、“魚民”を熱狂させる二つの要素を見事に融合させたセットリストを、彼らは「SUMMER SONIC」の場で展開した。
5人のメンバーが横一列に並ぶスタイルで、原曲から大胆にダンサブルなアレンジを加えつつ、ディレイ/リバーブを多用した音響的要素も強調した“踊れるのにマニアック”な「サンプル」で幕を開けると、いきなりの「夜の踊り子」では和装姿の踊り子がステージで舞い、「アイデンティティ」から「ルーキー」につながるサカナクションライブの大定番演出を惜しげもなく投入。さらには、ステージにDJブースを出現させた「ミュージック」や、代表曲「新宝島」で観客を熱狂させると、自身最大のヒット曲となった「怪獣」でサカナクションの現在進行形を表現。非の打ち所がないセットリストと演出、そしてスキルの高い演奏で、誰もが納得のステージを展開した。
だが何よりもすごかった点は、「フェスだから盛り上がる曲を」ではなく、来年に結成20周年を迎えるというキャリアに甘んじることなく、今なおリスナーの度肝を抜いてやろうという“大人の本気度”に満ちあふれたステージングであったこと。まだまだサカナクションはすごくなる。そんな予感を漂わせたライブであった。

続いてMOUNTAIN STAGEに登場したのは、25周年を迎えた「SUMMER SONIC」のラインナップの中でもひときわ大きな話題となったデヴィッド・バーン。17年ぶりに来日した彼がMOUNTAIN STAGEで見せてくれたパフォーマンスは、大勢の出演者たちがオレンジ色のジャンプスーツを着て、マーチングバンド形式の編成でステージ上を移動しながら演奏していくというもの。2018年に発表したソロアルバムを基としたブロードウェイ公演『アメリカン・ユートピア』のスタイルだ(同公演はスパイク・リー監督により映画化もされた)。
だが単なる『アメリカン・ユートピア』の再演ではない。冒頭こそ、昨年リリースの最新アルバム『Who Is the Sky?』の1曲目を飾る「Everybody Laughs」だったが、その後はデヴィッド・バーンのキャリアを語るうえで欠かせない、トーキング・ヘッズ時代の「And She Was」「Houses in Motion」「(Nothing but) Flowers」や、自身のソロ曲「Strange Overtones」(ブライアン・イーノとの共作)などを織り交ぜた内容。
そして注目は、ライブの後半が、ほぼ彼(トーキング・ヘッズ)の名作『STOP THE MAKING SENSE』(1984年)で占められていた点だ。つまり、パフォーマンスのスタイルとして、2018年以降にデヴィッド・バーンが生み出した『アメリカン・ユートピア』のライブ表現手法を用いながら、『STOP THE MAKING SENSE』を2026年に再構築したと言って過言ではない内容だった。しかも74歳とは思えぬ驚異的な声量と、80分間をフルに動く体力、そして完璧なまでのパフォーマンスとメンバーとのフォーメーションで。
パフォーマンスだけではない。アンコールの1曲目、合唱アレンジの「Everybody's Coming to My House」を歌う直前に彼はMCで、コロナ禍での体験から「私たちはみんな、どれほど違っていても、世の中がどれだけ混沌としていても、人はやっぱり人と一緒にいるのが好きなんだと気がつきました」と語ると、そのメッセージに会場から大きな拍手が送られた。そしてラスト、自身のキャリアを総括するようにトーキング・ヘッズ「Burning Down the House」を演奏し、フィナーレを迎えた。同じ場所で同じ時間を過ごした観客たちにとって、おそらく生涯忘れることないライブとなったことだろう。
そんなMOUNTAIN STAGEの間に、ZOZOマリンスタジアムで大歓声を沸き上がらせたのは、MARINE STAGEのヘッドライナー、Adoだ。ステージの照明が消されて暗闇に包まれると、ステージ奥のLEDビジョンに映し出されたのは「It is "real" ?」という問い。するとそこに「そんなのロックじゃない」といった、SNS上にあふれた誹謗中傷の言葉が浮かび上がり、それに対して「覚悟はあるのか?」「I'm ready.」という言葉が続く。「Are You Ready?(準備はいいかい?)」ではなく、「I'm ready.(準備はできてる)」だ。Ado本人が当日の昼間、Xに「自信があります!」とポストした言葉と重なる。では一体、どの曲でステージの幕を開けるのかと思った瞬間、聴こえてきたのは重厚なギターリフと、ボックスの中で激しく頭を振りながら歌うAdoの歌声。オープニング曲は、何とメタリカ「Enter Sandman」のカバーだった。
80年代、スラッシュメタルの雄として君臨していたメタリカが、90年代にジャンルの枠を超え、世界のロックシーンを代表する存在となる。その当時を象徴する曲で、Adoがこのステージをスタートさせた意味と、その重みが十分すぎるほどに伝わってきた。それと同時に、彼女の歌唱にも驚かされた。Ado特有の“がなり”よりも“歪み”が強調された、激しさと艶やかさが共存する歌声を耳にし、思わず、何かとんでもない瞬間を体験しているのではないかという感覚に陥っていく。そして次の瞬間、MARINE STAGEに放たれたのはAdo最大の代表曲「うっせぇわ」、そして「逆光」「0」と、Adoの真骨頂とも言うべき曲たち。クリアでハードなバンドサウンドをバックに、まさに世界レベルの圧倒的な歌声をスタジアムに集った観客に次々と突き刺していった。
その後も、ダークな世界観の「Tot Musica」、操り人形のピエロのようなダンスも披露した「アイ・アイ・ア」、ダンスビートにレーザーが炸裂する「Stay Gold」が続くと、ここで完全英語詞の新曲「ASTEROID」が初披露されるというサプライズ。だが、驚きはまだまだ続く。バンドメンバーをフィーチャーしたセッションの後、フェスでは初めてAdoはボックスの中からステージへと飛び出し、上手から下手まで大きく動きながら「綺羅」「DIGNITY」と人気曲を連発。そして、2025年のワールドツアー“Hibana”でも歌われたシーアの世界的ヒット曲「Chandelier」のカバーも披露された。Adoとシーアの共通点と言えば、圧倒的な歌唱力と表現力を最大の武器として、顔を見せずに歌を伝えること。こうした曲をライブ中盤に挟むあたり、フェスだからと言って単純に人気曲を羅列するのではなく、自分にしか描けない物語を紡ごうとするAdoの強い意志が伝わってくる。
そして、ラテンテイストが激情的に取り入れられた新曲「モンストロ」、王道のスタジアムロック「ロックスター」を歌い終えたAdoは、この日、唯一のMCを行った。
「25周年のヘッドライナーに立たせていただけて、本当にうれしいですし、光栄な気持ちです。なので今日に向けて、たくさん準備をしてきました。大変恐縮な気持ちもありますが、今日、私の歌を聴いて、私がふさわしかったかどうかは、もうわかりましたよね。私は常に本気で、今日この声が尽き果ててもいいくらい、みなさんに魂を捧げたいと思っていました。私は、日本人として「SUMMER SONIC」のステージに立てて、本当に、最高の最高の最高の最高の気持ちです。そして、25年間、このステージを紡いできた全てのアーティストのみなさん、25年間ここに来てくれた全員、その歴史に、私は日本人として感謝いたします。ありがとうございました!」
こう絶叫すると、最後は盛り上がり必至のダンスナンバー「唱」「踊」で観客を熱狂させる。すると、鳴りやまない熱烈なアンコールに応えて歌われたのは、オープニングを飾った「Enter Sandman」の再演だった。だが、このときのAdoはボックスの外。よりアグレッシブで、ダイナミックで、それでいて完璧なパフォーマンスでライブを締めくくると、何発もの花火が打ち上がり、この日のMARINE STAGEでのアクトはすべて終了した。
見事にヘッドライナーの重責を果たしたAdoのステージ。後日、メタリカの公式SNSでAdoのカバーが讃えられていたが、その様は、まさに「It is "real" ?」と言う問いに対する明確な回答であると同時に、25周年を迎えた「SUMMER SONIC」の“歴史的大事件”として記憶に残るパフォーマンスであった。
Text:布施雄一郎
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