音楽専門誌『ぴあMUSIC COMPLEX』連動企画

初のメタルステージをキュレーションしたBABYMETAL、METALVERSE、South Arcadeほか、「SUMMER SONIC 2026」DAY3をレポート

PMC編集部

第280回

BABYMETAL (C)SUMMER SONIC All Rights Reserved.

今年25周年を迎えた「SUMMER SONIC 2026」(以下、サマソニ)。今年は、8月14〜16日の3日間、東京・大阪の2ヶ所で同時開催された。8月16日、東京会場(千葉・ZOZOマリンスタジアム、幕張メッセ)3日目のレポートを、『PMC』ではBABYMETALの特集記事を担当するライター・阿刀大志がお届けする。

今年の「SUMMER SONIC」は記念すべき25周年を迎え、通常よりも1日多い3日間の特別開催となった。最終日8月16日のヘッドライナーを飾ったのはL'Arc-en-Ciel。セットリストをSNSで事前公開し、新曲「総天然色」の演奏中は写真、動画の撮影OKという告知を行い、話題となっていたが、ライブ自体も大盛況となった。

L'Arc-en-Ciel (C)SUMMER SONIC All Rights Reserved.

筆者の話をすると、この日はBABYMETALキュレートの「SONIC “METAL” STAGE」を軸に動き、さまざまな女性主役のステージを浴び続ける1日となった。

札幌某所 (C)SUMMER SONIC All Rights Reserved.

早めの行動が功を奏し、SONIC STAGEのオープニングアクトである、北海道出身4ピースバンド・札幌某所のライブを目撃することができた。彼らがSEとして鳴らしたのは、惜しくも昨年解散したデンマーク出身バンドMEWの「Am I Wry? No」。選曲のセンスのよさでグッと高まった期待に応えるパフォーマンスを繰り広げた。ボーカルの声はハイトーン気味で清涼感があり、歌メロは間口が広い。一聴するとストレートなギターロックなのだが、硬質なリードギター、主張の強い極厚なベース、シンプルながら大きなグルーブを描き出すドラムを聴いていると、札幌の偉大な先輩バンドたちの顔が浮かんでは消えていく。特に、ラストを飾ったミディアムナンバー「札幌」は北海道の大地を思わせる雄大なグルーブで出色の出来。全曲を披露したあとも、温かな拍手がいつまでもいつまでも4人を見送った。朝一発目にふさわしい、いいバンド、いい音。

METALVERSE (C)SUMMER SONIC All Rights Reserved.

いよいよ1組目METALVERSEのライブがスタート。11時半という早い時間ながらけっこうな数の客でフロアが埋まっていて、会場スタッフが前へ詰めるように何度も促すほど。注目度の高さがうかがえた。外国人客の姿も目立つ。筆者が彼女たちのライブを観るのは5月に開催されたSpotify O-EAST公演ぶり。近未来的なオープニングムービーのあとに繰り広げられた30分間のパフォーマンスは、以前とはだいぶ印象が異なるもので、観客を巻き込もうとする姿勢がより強くなっていた。MIKOは「サマソニー! みんな、盛り上がる準備できてるー?」とあおり、スイングメタルソング「Crazy J」で躍動感あふれるボーカルを響かせ、SAKIAとCOCONAは弾むようなダンスで楽曲に華を添える。ステージ度胸がついたのだろう、パフォーマンス全体が以前より伸びやかだった。

South Arcade (C)SUMMER SONIC All Rights Reserved.

METALVERSEが火をつけた勢いは、このあとのバンドにも続いた。今回が初来日となるUK出身のロックバンドSouth Arcadeのステージは素晴らしかった。特筆すべきは、フロントウーマンHarmony Cavelleの動き。彼女は1曲目からウォールオブデスをあおるなど、積極的にフロアとつながる姿勢を見せ、ステージ上を縦横無尽に動き回った。しかも、その動きには一切の無駄がなく、一挙手一投足に意味が感じられるくらい、見事。あえて意識したかどうかはわからないが、高校生レベルの単語のみで構成したMCは、英語ネイティブではない日本人にとって親切で、一体感を高めるのに大きな役割を果たした。結成こそ2021年と新しいが、フロアの掌握具合はベテランばり。音楽性は異なるが、90年代に観たグウェン・ステファニーが思い浮かんだ。今後の更なる人気の広がりが期待できるパフォーマンス。ワンマンでの来日も遠くないのでは。

WARNING (C)SUMMER SONIC All Rights Reserved.

続くWARNINGは、メキシコ出身の3姉妹が硬派で骨太なハードロックで観客を魅了した。メタリカのジェームズ・ヘットフィールドを思わせるダニエラの荒々しいボーカルもいいが、リズム隊の推進力も同様に素晴らしい。ヘッドセットでコーラスパートを歌い上げるドラムのパウリナのパフォーマンスは実にドラマチック。歌唱力も抜群だ。ほかのバンドなら十分にメインボーカルがつとまるだろう。L'Arc-en-CielのTシャツを着た女性客が拳を突き上げる姿が印象に残った。

Ave Mujica (C)SUMMER SONIC All Rights Reserved.

「SONIC “METAL” STAGE」における驚くべきパフォーマンスはまだ続く。Ave Mujicaだ。「BanG Dream!」から生まれた5人組ガールズメタルバンドだが、彼女たちはただただバンドとして最高。ゴシックでV系にも通ずる世界観やステージ上での立ち居振る舞いはまるで舞台さながら。もちろん、見た目だけのバンドではない。まず、メインボーカルでありながらリードギターも務めるドロリスの技術が目を引いた。楽曲によってハンドマイクやヘッドセットを使い分ける一方で、高度なギターソロまで見せつける。変拍子を採り入れたプログレッシブな楽曲までプレイしたのには舌を巻いた。演奏以外でも見せ場は多かった。「Symbol II : Air」だと思うが、お立ち台の端に腰かけたかと思えば、<私>という歌詞に合わせて片足を振り上げるステージング。そんな魅せ方もできるのかと唖然とした。キーボードのオブリビオニスに至っては、衣装の効果もあって、まるで自動制御の西洋人形が鍵盤を弾いているよう。髪に手をやる仕草すら演出プランに入ってるんじゃないかというくらい全ての動きが絵になる。とんでもないものを観た。ワンマンにも行ってみたいし、アニメも観たい。

BAND-MAID (C)SUMMER SONIC All Rights Reserved.

女性バンドの好演がこれだけ続くと、ステージが違うからといってBAND-MAIDを観ないわけにはいかない。大勢の観客でパンパンになっていたPENDULUMのパフォーマンスを数曲楽しんだあと、PACIFIC STAGEへ移った。BAND-MAIDのライブは去年、福島県で開催された「LIVE AZUMA」で数年ぶりに観たのだが、5人が放つ極太サウンドに圧倒され、早く次のライブを観たいと思っていたところだった。この日、圧倒的だったのはKANAMIのほれぼれするギタープレイ。運指は美しく、奏でるフレーズの複雑さは一聴して彼女のものとわかる独自のもの。「HATE?」で魅せたベースMISAとのソロバトルは至福の時間だった。もちろん、バンド全体のアンサンブルも抜群で、ステージを支配するSAIKIのパワーは圧巻のひと言。ハードロックでありながらダンスミュージックのように踊らせる演奏は新たな発見だった。

キタニタツヤ (C)SUMMER SONIC All Rights Reserved.

今年初めて足を運んだMOUNTAIN STAGEでは、キタニタツヤが「PINK」を熱唱していた。彼のライブを観るのはこれが初めて。ド派手で華やかなステージを勝手に思い浮かべていたが、実際は正反対。お祭り騒ぎではなく、自身の体全体を使った熱のこもったパフォーマンスでフロアの視線を釘付けにしていた。その実直な表現は、なぜ彼がここまで支持されているのかをわかりやすく伝えてくれた。いい意味で彼を見る目が変わった。ただ、BABYMETALをフィーチャした「かすかなはな」での、サプライズを期待していたんだけどな……。

mgk (C)SUMMER SONIC All Rights Reserved.
REAL McCOY (C)SUMMER SONIC All Rights Reserved.

思わず「なんじゃこりゃ!?」という声が漏れるくらい人でパンパンになっていたmgkの盛り上がりを横目で見つつ、BEACH STAGEへ移動した。今年のサマソニにおける個人的裏メインは、「EURODANCE PARADISE」と銘打たれた時間帯。第8弾追加アーティスト発表でCRYSTAL WATERS、THEA AUSTIN, formerly of SNAP!、REAL McCOYという文字を見たとき、我が目を疑った。90年代の伝説的なダンスアクトが一堂に会することなんて、今後絶対に実現しない。REAL McCOYを目撃するために急いだ。「Run Away」と「Another Night」という大ヒット曲を生で観る日が来るなんて、得も言われぬ感動。ちなみに、ラッパーのO-Jayは今年61歳だという。あのころと同じ声でラップする姿はまだまだ現役だ。エネルギッシュなパフォーマンスに心が躍った。

さあ、遂に「SONIC “METAL” STAGE」のトリを飾るBABYMETALの登場だ。彼女たちのステージを観ようと多くの観客がSONIC STAGEに集結。一時は入場規制がかかっているのではないかと思うくらいのすし詰め状態に陥っていた。BABYMETALはサマソニ出演が最も多いアーティストの一つ。大阪会場のみ出演やゲスト出演のみの年まで含めると、11年目のパフォーマンスとなる。2010年代以降のサマソニを支えてきた立役者だ。だからこそ、定番のオープニングムービーも過去のサマソニにおけるパフォーマンス映像やオープニングムービーをコラージュ的につなぎ合わせたものになった。2013年のオープニングで流れたかの名言「LINKIN PARKはこっちじゃないぞ」が映し出されたときは、笑うのと同時に彼女たちのこれまでの旅路を思ってグッときた。

1曲目は「BABYMETAL DEATH」。天井の照明に届くんじゃないかと思うほどド派手なフレイマーが吹き上がる中、3人はキツネサインを虚空に掲げる。曲順の違いこそあれ、彼女たちはこの儀式をサマソニで10年以上にわたってほぼ毎回続けてきた。この曲はサマソニの歴史の証人でもあるのだ。メンバーもいつも以上に日本語であおる。「もっとみんなの声聞かせて!」「みんなもっと熱くなれるよねえ!?」近年、BABYMETALの観客に対するアプローチが変化している。かつてはラストの「See you!」までひと言もしゃべらないのが定番だったが、人間臭いあおりが徐々に増えてきた。この日はそれが顕著。特に、ライブ終了後、サマソニ25周年に向けたSU-METALによるコメントは、その異例の長さに思わず驚きの声が出た。かつてはシアトリカルに振り切っていたパフォーマンスは、より観客との親密度を高めている。たとえば、「Monochrome」。この日はファン以外の観客も多かったが、定番のシンガロングパートではあちこちから大声が上がり、おびただしい数のスマホライトが揺れた。「Road of Resistance」でフロアの最後方まで割れたウォールオブデスも印象的で、フロア奥まで掲げられる拳がうれしかった。いい意味でフロアのメタル度が下がったことが、ジャンルの壁を超えたBABYMETALサウンドの広がりを感じさせた。彼女たちの音は、着実に国内のロックファンに届いてきている。

それにしても、メンバーのフレッシュさがいつまでも失われないのが不思議だ。キャリアを重ねたことでさまざまなスキルを獲得した今だからこそ、「ギミチョコ!!」や「ヘドバンギャー!!」といった初期曲におけるカワイイ表現が際立つ。彼女たちは、自分たちの年齢に合わせてパフォーマンスを変えるのではなく、あくまでもその曲が生まれたときの表現に忠実であろうとする。そして、それは成功している。現在、BABYMETALは海外の有名メタルフェスにてセカンドステージのトリ前を任されるまで序列を高め、グラミー賞の獲得を新たな目標として掲げるところまできた。BABYMETALの壮大なメタル絵巻はまだまだ続く。

さて、本当ならBABYMETALのショーをもって大団円でもよかった。しかし、筆者はCrystal Watersがどうしても観たかった。数年前にTikTokでバズったことで知った若いリスナーもいるだろうが、彼女が1991年に発表した「Gypsy Woman (She's Homeless)」はクラブを中心に圧倒的な支持を受け、結果として世界中で大ヒットを記録。この曲をどうしても生で体験したかったのだ。SONIC STAGEから早歩きでBEACH STAGEへ向かうこと約15分。1曲目「Makin’ Happy」のイントロに間に合った。前述の曲以外にも「100% Pure Love」のようなスマッシュヒット曲までしっかりパフォーマンスしてくれたことは本当にうれしかった。観客の数はそこまで多くなかったが、熱量はとても高かった。驚くべきはCrystal Watersのボーカルの瑞々しさ。35年前の音源と変わらぬ声に興奮が高まった。ちなみに、彼女の持ち時間は40分。しかし、ヒット曲をひと通り披露したあと、20分ほど残してさっさとステージを去ってしまった。自分の需要がどこにあるのかよくわかっているのか、その潔さに笑った。

Jamiroquai (C)SUMMER SONIC All Rights Reserved.

Crystal Watersの思わぬ早上がりには驚いたが、筆者はそれならとばかりに再びメッセにとんぼ返り。Jamiroquaiを観たかったのだ。ライブ開始からだいぶ時間は経っていたが、「Virtual Insanity」は最後にやると踏み、SNSで見つけたショートカットを参考にして、短時間でMOUNTAIN STAGEに到着した。広大な会場はほぼ入場規制状態だったが、お目当ての曲をしっかり堪能することができた。

終わってみれば、頭から最後までみっちりライブを楽しんだ。翌日まで引きずるくらい疲労困憊(ルビ:こんぱい)だったが、それを補って余りあるほどの喜びを得た。初の試みとなった「SONIC “METAL” STAGE」だが、結果として成功だったと思う。たとえ知らないアーティストだったとしても、このステージにくくられることで音楽的な方向性の予測はある程度ついただろうし、実際、多くの人を集めていた。こういった試みは今後も続けてほしい。何にせよ、いい1日だった。ああ、「EURODANCE PARADISE」を企画した人と酒が飲みたい。

Text:阿刀大志
(C)SUMMER SONIC All Rights Reserved.

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