ワッツ・オン・ブロードウェイ?~B’wayミュージカル非公式ガイド

ワッツ・オン・ブロードウェイ?~B’wayミュージカル非公式ガイド【2026年春号】

年4回更新

第11回

ブロードウェイに来ている。本記事がアップされる頃にはすでに帰国しているが、書いている今現在は絶賛日々マチソワ観劇中。前号で述べた通り、今シーズンは新作ミュージカルが非常に少なく、しかもまだ出揃っていない。だが1年半ぶりに来たため、前回はまだ開幕していなかった昨シーズンの準新作も含めると、観たい作品は結構な数に上るのだ。3月も下旬なのにまだ寒い、相変わらず物価が白目不可避なほど高い、なんかやっぱり“今”を切り取った作品が少ない気がする……旅半ばの今も色々と思うところはあるものの、振り返るのは全作を観終えてからにするとして、今号ではとってだしミニレポートをお届け。取り上げるのはオフで話題沸騰中の“イマーシブ・ファントム”、『マスカレード』である。

ワッツ「オン」ブロードウェイという連載タイトルには反するのだが、オンでの歴代最長ロングラン記録を持つ『オペラ座の怪人』(1988~2023)のご帰還であり、演出は『ピピン』『ウェイトレス』のダイアン・パウルス、キャストにもオンでのクリスティーヌ役経験者を含む一流どころが揃っているのだから、ここで取り上げてもおかしくはないだろう。昨年9月のオープン以来、延長に次ぐ延長を重ねてきているためまた延びそうな気もするが、今のところ9月6日クローズ予定とのことなので、気になった方はお早めに──。

■『オペラ座の怪人』オタク必見! オフの『マスカレード』

イマーシブ(没入型の)と言うだけあって、体験しなければ分からないショーである。なんなら全容は多分、5回くらい体験しないと分からない。劇場ではなくビルの中を、キャストや係員の誘導に従って歩いたり上り下りしたりしながら、そこここで繰り広げられる『オペラ座の怪人』のシーンを目と鼻の先で見たり、かなりの割合で自分も参加したりする── 無理やり説明するならばこんな感じだろうか。先に言っておくと、少なくとも筆者は、ミュージカルを観るならやはり普通に劇場がいいと思う。一流どころであるはずのキャストが、近すぎたり誘導要員だったりすると“作品世界の住人”感が薄れてやや素人役者っぽく見えるし、さすがは音響への意識が高い街だけあってスピーカーの数や設置方法は目を見張る見事さだったが、ミュージカル音楽はやはり生演奏で聴くに越したことはないからだ。

だが、それでも──。仮面を着けシャンパンを持ってあのマスカレードに参加でき、あの『ハンニバル』リハーサルの混乱をオペラ座の座員たちと一緒に体験でき、あの地下の隠れ家に自分も迷い込むことができ、クリスティーヌとラウルのオペラ座屋上でのあの密会をまさかのファントム目線で目撃でき、あのシャンデリアが目の前で落下する恐怖を味わうことができ、さらには本家『オペラ座の怪人』では描かれない、少年時代のファントムがいた見世物小屋の観客にまでなれて、しかも映画化された際の主題歌《Learn to Be Lonely》をストーリーに組み込まれた形で生で聴けるなんて、作品オタクにとってはまたとなさすぎる機会。『オペラ座の怪人』というより二次創作に近いものとして、ミュージカルというよりアトラクションとして、一度は体験することを、同志の皆さんにはぜひお勧めしたい。

https://masqueradenyc.com/

仮面とプログラム、『ドン・ファンの勝利』のチケットは参加者全員への配布物。ファントムからの手紙は筆者が運良く受け取ったもの

【2025-26シーズンの新作】

*情報は2026年3月28日時点のもの

『Beaches(フォエバー・フレンズ)』プレビュー中/4月22日開幕予定

1988年に映画化もされたベストセラー小説の舞台化。30年に及ぶ友情と愛の物語。
https://beachesthemusical.com/

『キャッツ:ザ・ジェリクル・ボール』プレビュー中/4月7日開幕予定

2024年のオフBWで大きな話題を呼んだボールルーム版キャッツがついにオンに登場!
https://catsthejellicleball.com/

『チェス』開幕済

日本でも上演歴のある80年代の名作のリバイバル。L・ミシェルの出演は6月21日まで。
https://chessbroadway.com/

『ラグタイム』開幕済/8月2日まで

2023年に日本初演された作品の、BWでは2度目のリバイバル。今度こそなるかトニー賞。
https://www.lct.org/shows/ragtime/

『シュミガドーン!』4月4日プレビュー開始予定

『ブリガドーン』をパロディ化した米ドラマをミュージカル化するコメディ。
https://schmigadoonbroadway.com/

『ロストボーイ』プレビュー中/4月26日開幕予定

1987年公開のホラー映画をトニー賞2度受賞のM・アーデン演出でミュージカル化。
https://www.lostboysmusical.com/

『ロッキー・ホラー・ショー』プレビュー中/4月23日開幕予定

映画版がカルト的人気を誇り、日本でも何度か上演歴のある70年代初演作のリバイバル。
https://www.roundabouttheatre.org/get-tickets/2025-2026-season/rocky-horror

『Titanique』プレビュー中/4月12日開幕予定

セリーヌ・ディオンの楽曲で綴る映画『タイタニック』のパロディ。期間限定。
https://titaniquebroadway.com/

『two strangers(carry a cake across new york)』開幕済

イギリス発のロマンティック・コメディ。出演者ふたりのみで爆笑をかっさらう。
https://twostrangersmusical.com/

【2024-25シーズンの準新作】

『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』

キューバ音楽のアルバムのジュークボックス。トニー賞振付・編曲・音響・助演女優賞。
https://buenavistamusical.com/

『永遠に美しく…』

メリル・ストリープ主演映画をC・ガテリの演出・振付で舞台化。トニー賞衣裳賞。
https://deathbecomesher.com/

『ジャスト・イン・タイム』

トニー賞無冠ながら一番人気。主演はJ・グロフからM・モリソン、J・ジョーダンへ。
https://justintimebroadway.com/

『メイビー、ハッピーエンディング』

韓国発の作品がトニー賞を席巻。作品・演出・脚本・楽曲・装置・主演男優賞の6冠を達成した。
https://www.maybehappyending.com/
2025年春号でレポート済

『オペレーション・ミンスミート』

第二次大戦中の英国軍の“奇策”を描くロンドンのヒット作だが、トニー賞では奮わず1冠。
https://operationbroadway.com/
2026年冬号でレポート済

【ロングラン作品】

■日本で既に上演された/されている作品

『アラジン』

ディズニーアニメが舞台ならではの手法で表現された秀作。魔法の絨毯は本当に魔法。
https://www.aladdinthemusical.com/

『シカゴ』

1996年から続く最長ロングラン作。『オペラ座の怪人』超え(2031年)も視野に入ってきた。
https://chicagothemusical.com/

『ムーラン・ルージュ!』 7月26日まで

2021年のトニー賞受賞作もついにクローズ。日本版と観比べられる最後のチャンス!
https://moulinrougemusical.com/

『SIX: The Musical』

ヘンリー8世の6人の妻たちが暴れ回る痛快作。日本版が上演された今こそ観比べたい。
https://sixonbroadway.com/

『ライオンキング』

『シカゴ』に次ぐロングラン第2位を安定飛行中の大名作。相変わらず満席を誇る。
https://www.lionking.com/

『ウィキッド』

定期的に観たい傑作。ブロードウェイ版は格別なので映画版でファンになった方もぜひ。
https://wickedthemusical.com/

■日本未上演の作品

『&ジュリエット』

ロミジュリの後日譚をマックス・マーティンの大ヒット曲で綴るロンドン発の傑作。
https://andjulietbroadway.com/

『ヘイディズタウン』

『グレコメ』の演出家が現代的に描くギリシャ神話。2019年のトニー賞で8冠を達成。
https://www.hadestown.com/

『ハミルトン』

2016年のトニー賞総なめ作。最近ようやく、入場率が100%を超えない回も出てきた。
https://hamiltonmusical.com/

『MJ The Musical』

M・ジャクソンのジュークボックス。今年アジアツアーが予定されているらしいが…?
https://mjthemusical.com/

『ブック・オブ・モルモン』

2011年のトニー賞を制した、もはや古典の領域の傑作。15周年の記念イヤーに突入。
https://bookofmormonbroadway.com/

『グレート・ギャツビー』

宝塚版でもよく知られる名作小説をJ・ハウランドの音楽で。2024年トニー賞衣裳賞。
https://broadwaygatsby.com/
2026年冬号でレポート済

『アウトサイダー』

原作は同名小説および巨匠コッポラ監督による映画版。2024年トニー賞で作品賞含む4冠。
https://outsidersmusical.com/
2025年秋号でレポート済

プロフィール

町田麻子(まちだ・あさこ)
1980年ロンドン生まれ、横浜育ちのミュージカル文筆家。2002年早大一文演劇専修、2022年東京藝大楽理科卒。公演パンフレット、演劇誌、WEB等で主にミュージカルの解説文、インタビューやレポート記事を執筆。10代からブロードウェイ観劇旅行を毎年続けるミュージカルおたく。趣味は翻訳版の妄想キャスティング。

町田麻子ウェブサイト
https://www.rodsputs.com/