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【おとな向け映画ガイド】

リーアム・ニーソンがまたキレる『ファイナル・プラン』、米アカデミー賞候補になった中国の純愛映画『少年の君』をご紹介。

ぴあ編集部 坂口英明
21/7/11(日)

イラストレーション:高松啓二

今週末(7/16〜17)に公開される映画は13本。全国100スクリーン以上で上映される作品は『竜とそばかすの姫』『SEOBOK/ソボク』『ファイナル・プラン』の3本。今回はその中から、“おとなの愛の映画”と“10代の純愛映画”をご紹介します。

すご腕の銀行ギャングが自首を決めたのは……
『ファイナル・プラン』



原題は『Honest Thief(正直な泥棒) 』。このタイトルがしっくりくる映画です。海兵隊で爆破物のプロだった男が、リタイアして始めたのが爆破強盗。これがすご腕。8年間に、7つの州で12の銀行を襲い、奪った金は900万ドル(約10億円!)。マスコミからつけられたニックネームは「速攻強盗」。タイトルバックで手口の一部が紹介されますが、人を傷つけず、出入りの証拠も残さない。あざやかなものです。

盗んだ大金は手付かずのまま。目的はお金のためというより、なんでしょう。生きる証? 趣味の域? これまで捜査の網に引っかからずにきました。それが、運命の女性に出会い、引退を決意します。彼女のためにも罪をつぐない新たな人生をおくりたい、と考えた正直泥棒は、FBIに自首を申し出ます、全ての金も返納すると。ところが、この対応に当たったFBI捜査官がワルだった……。

実年齢はそろそろ70歳というリーアム・ニーソンが主演です。「リーアムがキレる映画にはずれなし」といわれているそうです。この映画でももちろん「キレます」。このにじみ出る凄み、期待は裏切りません。銀行強盗、銃撃戦、カーアクション…。格闘シーンはすべて本当にご本人がやっています。リーアムにはマーク・ヴァンセローという専任のスタント・コーディネーターがいて、過去18作にわたり、どうしたら迫力のある絵になるかをともに考えてきたのです。マーク・ウィリアムズは監督2作目ですが、アクション映画のプロデューサーを何本も手がけてきたプロフェッショナル。リーアムと息があったのか、次回作でもコンビを組んでいます。

運命の女性役は、テレビシリーズ『グレース・アナトミー』で人気を博したケイト・ウォルシュ。彼に出会って彼女の人生も急変し、FBIにつけ狙われ、ともに戦うことになります。


クールな泥棒で「愛に生きる人」というヒーローのリベンジ・アクション。テンポもストーリー展開も”速攻強盗”同様にプロの仕事。時間も98分、たるみなし。これぞアメリカのエンタテインメントです。

【ぴあ水先案内から】

村山章さん(映画ライター)
「……リーアムにも敵にも親近感を覚えてしまう、とてもパーソナルな身近さが生まれている。近所の隣人たちを眺めるような気持ちで観られる、風変わりで愛らしい犯罪アクションである。」
https://bit.ly/3yuHoN7

高松啓ニさん(イラストレーター)
「……普通に自首しないでアニーと結婚すればいいのにという疑問も残るが、そこは原題となる“正直泥棒”たる所以かな? 触らぬリーアムに祟りナシだね。」
https://bit.ly/2UBlZn2



(C)2019 Honest Thief Productions, LLC



ガリ勉女子高生と街のチンピラの愛
『少年の君』



純愛映画です。ガリ勉の女子高生と街のチンピラ、およそ関係を持ちそうもないふたりが主人公。とくれば、許されぬ階級違いの恋でまわりの無理解に苦しむ…という涙、涙の悲恋ものか、と思いますが、そうではありません。不器用だけど、精一杯、自分たちが信じた愛に誠実にあろうとする恋人たちの「純愛映画」なのです。

ガリ勉と書きましたが、中国の受験戦争は生半可ではありません。6月に行われる「高考(全国統一大学入試)」に人生の全てがかかっています。この得点で大学の合否が決まります。主人公のチェン・ニェンがめざすのは中国でもトップの北京大学、清華大学クラス。描かれる受験校の姿は、日本の我々でも信じられない風景です。高度成長の裏にある壮絶な競争社会、それが現代の中国です。

そんななかで、陰湿ないじめがはびこり、チェン・ニェンはある優しい行動をしたためにグループの標的となります。彼女の母はシングルマザーで、娘の学費稼ぎのためにあやしげな美容商品のセールスで出稼ぎにでています。それもいじめの材料です。誰も味方にはなってくれません。そんなとき、下校の途中の街なかでチンピラ同士の小競り合いに遭遇し、シャオベイと出逢います。彼はストリートでその日ぐらしをする不良少年ですが、ふたりは惹かれあいます。しかし、事件が起き……。

チェン・ニェンを演じているのはチョウ・ドンユィ。チャン・イーモウの『サンザシの樹の下で』(2010)がデビュー作ですが、女子高生役でも全然不自然ではありません。さすが「13億人の妹」です。シャオベイ役はトップアイドルグループ、TFBOYSのイー・ヤンチェンシーです。

香港の名優エリック・ツァンを父に持つデレク・ツァンの監督第2作目。中国本土での公開は大した宣伝もされなかったにもかかわらず日本円にして興収280億円を超える大ヒット。香港アカデミー賞(香港電影金像奨)で作品賞ほか8部門を受賞するという最大級の評価を受けたうえ、米アカデミー賞国際長編映画賞にもノミネートされました。

受験の直前から始まり、息詰まる展開が続きます。が、ミア・ファローの名作『フォロー・ミー』のようなこころ和むシーンもあり、とてもよい後味。青春映画の名作と思います。

【ぴあ水先案内から】

佐々木俊尚さん(フリー・ジャーナリスト)
「……すべてのシーン、すべてのセリフ、すべての映像が鮮烈で胸に突き刺さってくる。終盤、笑顔が交わされるシーンにはただただ万感胸に迫る。」
https://bit.ly/3xoT0Bm

伊藤さとりさん(映画パーソナリティ)
「……キャスティングも絶妙で、一番見て欲しい思春期の若者に「人を傷つけないで」と伝える為に作られた気がしてならないです。大傑作!」
https://bit.ly/3xn54mw

高崎俊夫さん(フリー編集者、映画評論家)
「……今の中国が抱える、容易に解消するのは不可能な、根深い格差や暴力、貧困の問題を、初々しくも鮮烈な青春映画というフォームを使って、見事に浮かび上がらせているのだ。」
https://bit.ly/3wi1lFy

紀平重成さん(コラムニスト、元毎日新聞記者)
「……中国の進学校に通う優等生の少女チェン・ニェンと不良シャオベイとの純愛物語ともいえるし、二人が巻き込まれる殺人事件の謎を解いていくサスペンスとしても堪能できる第1級の娯楽作……」
https://bit.ly/3hP1oUi

(C)2019 Shooting Pictures Ltd., China (Shenzhen) Wit Media. Co., Ltd., Tianjin XIRON Entertainment Co., Ltd., We Pictures Ltd., Kashi J.Q. Culture and Media Company Limited, The Alliance of Gods Pictures (Tianjin) Co., Ltd. ALL Rights reserved.

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