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稲葉友の「話はかわるけど」

三者三様×二人芝居×一瞬【前編】

毎週連載

第146回

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稲葉さんが企画した2人芝居『ともだちが来た』が、10月27日より浅草九劇で上演されます。役者は3人、スタッフも最少人数で行うというチャレンジに、稲葉さんは何を思う?

舞台『ともだちが来た』が浅草九劇にて10月27日~11月7日で上演される。多くの演劇人に愛されてきたこの二人芝居の戯曲で変則的な公演を行う。俳優は僕と大鶴佐助と泉澤祐希の三人。二人芝居なのに、三人。全員がそれぞれの組み合わせで二役を演じる。全部で組み合わせは六通りあるのだけど、当日どちらの役を演じるかはコイントスで決められる。さらには演出家がいない状態でお芝居を作っていく。

企画が動き出し稽古が始まり分かったことは今までどれだけ芝居だけに、役を全うすることだけに集中させてもらっていたかということ。例えば稽古場で、実際の舞台セットの場所がわかるように、物がなくても床にテープを貼って演技ができる範囲を線引きするのだが、それを自分たちでやるだけでも一苦労。本職の人からしたら大した作業じゃないのかもしれないが、そんなことも僕らが稽古場に入る前にスタッフさんたちが済ませてくれていたということを考えさせられる。劇を作る上で考える要素と角度が多すぎて驚いているところだ。実際やってみると大変なことをやろうとしているんだと痛感する。

演出家や監督がいない作品も初めてのこと。手探りで稽古をしているが祐希も佐助も頼りになるので互いに意見を出し合いながら少しずつ進めている。

舞台の創作のためにやることや二役演じるということを考えれば考えるほど、お芝居に必要なことがピュアになっていくという相反することを感じた。相手と会話をする、そしてプロットを見せるのではなく人間関係を立ち上げるということ。それの密度を高めていかなければ次に何もない。演出的なプランやシーンの見栄えは作りながら整えていかなければいけないが、まず何よりその役同士でどれだけやり取りを興味深いものにできるかというところを大切にしなければいけない。

今回の作品と稽古場は根源的なところに立ち返らせてくれる。そしてこのタイミングでそういう作品を作っていることの意味もついつい考えてしまう。人生としても、俳優としても。これまでとこれからを考えるときっと自分は岐路に立たされている。そんな実感が湧いてきた。

やるべきタイミングでやるべきことが巡ってきているという感覚もある。そしてやる以上はお客さんに観ていただきたい。多くの人が劇場に足を運んでもらえるとやっぱり嬉しい。

自分が演じる役をさらに二人の違う俳優が演じて、二人が演じる役を自分も演じて、それがそれぞれ二役。人が変われば同じ役でも芝居が変わるのは当たり前だけど、実は作品を作りながらは滅多に見られるものじゃない。

同じ役でも違う人が演じれば、どうしたって同じものにはならない。同じ二人の俳優でも役が入れ替わればまた違うものになる。そんな事実を稽古場で目の当たりにしている。いいところは引っ張られるし、いいアイデアだと思ったら盗めるものは盗む。とても刺激的な稽古場。

ダブルキャストやトリプルキャストの公演はよくあるが、それらとは違う異質な公演になるのかな。オーディションをする立場の人であれば同じ役を違う俳優がどんどんやっていくのはよく見る光景かもしれない。でもじっくり稽古をして生まれる効果を活かして作品作りをしていくのは、それだけでもとても面白いものだった。次回へ続く。

次回は10月27日更新です。お楽しみに!

プロフィール

稲葉友(いなばゆう)

1993年1月12日生まれ、神奈川県出身。
2010年、ドラマ『クローン ベイビー』(TBS)で俳優デビュー後、ドラマ、映画、舞台と幅広く活動。
主な出演作に、ドラマ『仮面ライダードライブ』(‘14~’15 EX)、『MARS~ただ、君を愛してる~』(’16 NTV)、『ひぐらしのなく頃に』(’16 BSスカパー!)、『レンタル救世主』(’16 NTV)、『将棋めし』(’17 CX)、映画『ワンダフルワールドエンド』(’15)、『HiGH&LOW』シリーズ、『N.Y.マックスマン』(’18)、『私の人生なのに』(’18)、舞台『すべての四月のために』(’17)、映画『春待つ僕ら』(’19)『この道』(’19)など。
J-WAVE『ALL GOOD FRIDAY』(毎週金曜11:30~16:00生放送)ではレギュラーパーソナリティ―を務める。

撮影/斎藤大嗣、取材/藤坂美樹、構成/中尾巴、ヘアメイク/速水昭仁、スタイリング/添田和宏、衣装協力/カーディガン¥41,800、モックネックニット¥38,500/ともにオーハル(ジョワイユ TEL:03-4361-4464)
パンツ¥24,200/ザ・リアルマッコイズ(ザ・リアルマッコイズ 東京 TEL:03-6427-4300)
ソックス¥2,145/靴下屋(タビオ株式会社 TEL:0120-315-924)
シューズ¥37,400/リーガル シュー & カンパニー(リーガル シュー & カンパニー TEL: 03-5459-3135)
スカーフ¥5,390/ユーズド(原宿シカゴ 原宿店 TEL:03-6427-5505)
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