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2022年、絶対に押さえておくべきアートトピックス10

ぴあ

『ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展』ヨハネス・フェルメール《窓辺で手紙を読む女》(修復後) 1657-59年頃 ドレスデン国立古典絵画館  (c) Gemäldegalerie Alte Meister, Staatliche Kunstsammlungen Dresden, Photo by Herbert Boswank (2015)

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展覧会の日時予約制も定着し、少しずつ落ち着きを取り戻しつつあるアート界。2022年こそは予定されている全ての展覧会が、滞りなく開催されますように!という願いを込めて、2022年のアートな話題をたっぷりとお届けします。

※新型コロナウィルスの影響により、各展覧会の会期等が変更になる可能性があります。詳細は各展覧会の公式HPなどでご確認下さい。

【TOPIC1】 やっぱり見ておかなきゃ、フェルメール!

『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』ヨハネス・フェルメール≪信仰の寓意≫ 1670-72年頃 ニューヨーク、メトロポリタン美術館 The Friedsam Collection, Bequest of Michael Friedsam, 1931 / 32.100.18

17世紀オランダを代表する画家、フェルメール。おだやかな光の表現を特徴とするフェルメールの作品は、日本でも非常に人気が高い。しかしながら、現存する作品は三十数点と非常に少なく、実際の作品を見ることはなかなか難しいことでも知られている。

そのフェルメールの作品が、2022年は2点も来日。『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』(大阪市立美術館:開催中~1/16、国立新美術館:2/9~5/30)で見られる《信仰の寓意》 は、抽象的な概念を擬人化した「寓意画」で、風俗画を得意とするフェルメールとしては珍しい作品。本作では「信仰」を擬人化した女性の姿が描かれている。

『ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展』ヨハネス・フェルメール《窓辺で手紙を読む女》(修復前) 1657-59年頃 ドレスデン国立古典絵画館 (c) Gemäldegalerie Alte Meister, Staatliche Kunstsammlungen Dresden, Photo by Wolfgang Kreische

また、東京都美術館で開催される『ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展』(※1/6追記:新型コロナウイルス感染拡大の影響により東京都美術館での展覧会は開幕延期、北海道立近代美術館:4/22~6/26、大阪市立美術館:7/16~9/25、ほか宮城にも巡回予定)では、修復後の《窓辺で手紙を読む女》が公開される。フェルメール初期の傑作とされる本作だが、X線調査でかつてこの絵の壁にはキューピッドが画中画として描かれており、それが塗りつぶされていることが判明。大規模な修復プロジェクトによってそのキューピッドがふたたび現れることとなった。フェルメールが描いた本来の姿に修復された《窓辺で手紙を読む女》は、所蔵館でのお披露目に次ぐ公開となる。

『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』カラヴァッジョ(本名 ミケランジェロ・メリージ)≪音楽家たち≫1597年 ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Rogers Fund, 1952 / 52.81

もちろん、両展覧会ともフェルメール以外の作品も魅力的。『メトロポリタン美術館展』では、ルネサンスから19世紀までの西洋絵画の歴史500年を同館の傑作でたどることができ、『フェルメールと17世紀オランダ絵画展』では、ドレスデン国立古典絵画館の17世紀オランダ絵画の傑作を鑑賞できる。どちらも見逃せない展覧会だ。

【TOPIC2】新美術館&パワーアップ美術館は要チェック

大阪中之島美術館 外観

2022年も新しい美術館がオープン。大阪中之島美術館は、構想発表が1983年、準備室開室が1991年という、時間をたっぷりかけて作られた待望の美術館。すでに6000点もの作品を収蔵しており、開館記念展となる『Hello! Super Collection 超コレクション展―99のものがたり―』(2/2~3/21)は、400点の代表的な作品を選び3章にわけ一堂に公開する。生まれたばかりであるにもかかわらず、上質なコレクションを持つ大阪中之島美術館の今後に期待しよう。

『開館記念Hello! Super Collection 超コレクション展―99のものがたり―』アメデオ・モディリアーニ 《髪をほどいた横たわる裸婦》 1917年、大阪中之島美術館

また、2022年は長期間の休館を経て、パワーアップして再オープンする美術館も多い。2020年から休館している国立西洋美術館は、建物自体の改修とともに、本館の前庭を創設当初の姿に戻す工事を行っている。リニューアルオープン直後の2つの小企画展『ル・コルビュジエ晩年の絵画と素描(仮称)』(4/9〜9/19)、『新収蔵版画コレクション展』(4/9〜5/22)のあと、リニューアル記念展として『自然と人のダイアローグ フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで』(6/4〜9/11)が開催される。

1992年に開館、長らく愛されてきた静嘉堂文庫美術館は、2021年6月に世田谷区岡本での活動を終え、今年10月より東京丸の内の明治生命館1階に移転オープンする。展示面積が1.5倍となった新美術館で開催される最初の展覧会『静嘉堂創設130周年・新美術館開館記念 響きあう名宝―曜変・琳派のかがやき(仮)』(10/1~12/18)は、国宝《曜変天目(稲葉天目)》はもちろん、所蔵する7件の国宝すべてを展示するという豪華な展覧会だ。

泉屋博古館東京 外観

住友家旧蔵の美術品を保存、公開するために設立された泉屋博古館(京都)の分館として2002年に東京・六本木に開館した泉屋博古館分館は、「泉屋博古館東京」と館名を改称、今年3月に再開館する。『リニューアルオープン記念展Ⅰ「日本画トライアングル」』展(3/19〜5/8)では、住友家がコレクションしていた大阪、京都、東京で活躍した日本画家の作品を展示し、地域に根ざした日本画の魅力や多様性を紹介する。

『再開記念展 松岡コレクションの真髄』 伝 周文《竹林閑居図》 後期展示 3/8(火)~4/17(日)

実業家、松岡清次郎のコレクションを保存・公開する松岡美術館は、約2年8か月の休館を経て今年1月、リニューアルオープン。『再開記念展 松岡コレクションの真髄』(1/26〜4/17)では、横山大観、渡辺省亭らの花鳥画から古代ギリシア・ローマの大理石彫刻など美術館を代表する作品を展示する。また、重要文化財 伝 周文《竹林閑居図》(3/8より公開)は、修復後初の公開となる、見逃せない傑作だ。

【TOPIC3】 世界の美術館から名品が集結

『スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち』ディエゴ・ベラスケス《卵を料理する老婆》 1618年 油彩・カンヴァス 100.5×119.5cm
(c) Trustees of the National Galleries of Scotland

今年も世界各地の人気美術館から名作がやってくる。『スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち』(東京都美術館:4/22〜7/3、神戸市立博物館:7/16~9/25、北九州市立美術館:10/4~11/20)は、イギリス北部の都市、エジンバラにあるスコットランド国立美術館が所蔵する珠玉のコレクションを公開。ラファエロやベラスケス、エル・グレコから、ルノワールやモネ、ゴーガンまで西洋絵画史の流れを辿ることができる(モネ、ゴーガンは東京展のみ展示)。

ドイツ第4の都市・ケルンにあるルートヴィヒ美術館のコレクションを紹介する展覧会『ルートヴィヒ美術館展 20世紀美術の軌跡─市民が創った珠玉のコレクション』(国立新美術館:6/29〜9/26、京都国立近代美術館:10/14〜2023/1/22)には、20世紀初頭から現代までのコレクションから152点が来日。アンディ・ウォーホルやロイ・リキテンスタインなどをはじめとするポップ・アートのコレクションのほか、ロシア・アヴァンギャルド、ドイツの戦後美術の名品が展示される。さらに、世界で3本の指に入るピカソのコレクションからは《アーティチョークを持つ女》など8点の出展が予定されている。

再開館した国立西洋美術館でも、世界からやってくる美術品を鑑賞できる。ドイツ・ベルリンにあるベルクグリューン美術館は、画商・ハインツ・ベルクグリューンの個人コレクションが礎となったもの。『ベルクグリューン・コレクション展』(10/8〜1/22)は、ピカソやクレー、マティスなど20世紀美術が充実した同館の珠玉作品が一堂に会する展覧会だ。

『ボストン美術館展 芸術×力』チラシビジュアル

さらに、新型コロナウイルス感染拡大の影響で2020年に中止となった『ボストン美術館展 芸術×力(げいじゅつとちから)』(7/23〜10/2、東京都美術館)が、さまざまな混乱を乗り越えて待望の開幕。ボストン美術館が所蔵する古今東西の権力者に関わる作品を紹介していく。エジプトのファラオから、ヨーロッパの王侯貴族、日本の天皇や大名など展示される作品のテーマはバラエティに富んだもの。そして、展示作品の半数以上が日本初公開となっている。さらに、海を渡った二つの絵巻、《吉備大臣入唐絵巻》と《平治物語絵巻 三条殿夜討巻》が待望の里帰り。いずれも「幻の国宝」とも呼ばれている傑作なので、チェックしておきたい。

【TOPIC4】現代美術の大スターも続々と個展を開催

『国立新美術館開館15周年記念 李禹煥』李禹煥、フランス、アングレームでの《Relatum - The Shadow of the Stars》設置作業、2021年 Photo(c)Lee Ufan

現代美術の巨匠たちの回顧展が開催されるのも2022年のトピックスのひとつ。

自然や人工の素材のありようをそのまま用いた作品で知られる「もの派」を代表する作家、李禹煥(リ・ウファン)。『国立新美術館開館15周年記念 李禹煥』(8/10~11/7、国立新美術館、12月より兵庫県立美術館に巡回予定)は、初期作品から新作まで代表作を網羅するもので、東京では初の大規模な回顧展となる。

『ゲルハルト・リヒター展』メインビジュアル

絵画や写真、映像、インスタレーションなど多彩でダイナミックな作品で知られるゲルハルト・リヒターの大規模個展『ゲルハルト・リヒター展』(東京国立近代美術館:6/7〜10/2、豊田市美術館:10/15〜2023/1/29)も開催される。2022年はリヒターが90歳を迎え、また画業60周年となる記念すべき年。作家が手元に残してきた作品群を中心に、彼の画業を振り返る。

『アンディ・ウォーホル・キョウト』キービジュアル

また、新型コロナウイルスの影響により、2020年に開催が予定され延期となっていた『アンディ・ウォーホル・キョウト』(9/17〜2023/2/12)が、京都市京セラ美術館新館「東山キューブ」にて開催される。同展はアメリカ・ピッツバーグにあるアンディ・ウォーホル美術館の所蔵品で構成される展覧会。出品作品のうち半数以上が日本初公開作品となる期待の展覧会だ。

このほか、東京国立近代美術館では絵画や彫刻、デザインに絵本の制作などあらゆるジャンルの表現を精力的に発表するアーティスト、大竹伸朗の回顧展『大竹伸朗展(仮)』(11/1〜2023/2/5、このほか国内3館巡回予定)も開催される。

【TOPIC5】発掘された東西ふたつの文化の謎に迫る

『特別展「ポンペイ」』《バックス(ディオニュソス)とヴェスヴィオ山》フレスコ ナポリ国立考古学博物館蔵 Photo(c)Luciano and Marco Pedicini

2022年は、タイムカプセルのように地中に封じ込められていた文化を紹介する展覧会が2つ開催される。

『特別展「ポンペイ」』(東京国立博物館:1/14〜4/3、京都市京セラ美術館:4/21~7/3、宮城会場(宮城展)7月~9月、九州国立博物館10/12~12/4)は、西暦79年に起こった、イタリアはナポリ近郊のヴェスヴィオ山の大規模噴火により飲み込まれてしまったローマの都市・ボンペイの発掘品を展示するもの。ナポリ国立考古学博物館が所蔵するモザイクや壁画、彫像など約150点が展示される、「ポンペイ展の決定版」ともいえる大規模な展覧会。また、「ファウヌスの家」「竪琴奏者の家」など発掘された遺跡の一部再現展示や、ヴェスヴィオ山の噴火の再現CG、修復が進む「アレクサンドロス大王のモザイク」の高精細映像など、さまざまな角度から、かつてあった都市・ポンペイを体感することができる。

『日中国交正常化50周年記念 兵馬俑(へいばよう)と古代中国~秦漢文明の遺産~』チラシビジュアル

一方、京都市京セラ美術館をはじめ国内4か所で開催されるのが、『日中国交正常化50周年記念 兵馬俑(へいばよう)と古代中国~秦漢文明の遺産~』(京都市京セラ美術館:3/25〜5/22、 静岡県立美術館:6/18~8/28、名古屋市博物館:9/10~11/6、上野の森美術館:11/22~2023/2/5)。

俑とは、生きた人間の姿を木や土に写し取ったもので、古代中国の人々は死者を守るために、俑を遺体とともに埋葬していた。兵馬俑は、俑のなかでも兵士及び馬をかたどったものを指す。

1974年に発見された秦始皇帝陵の兵馬俑は、皇帝を守るために地下に約8000体も並べられていた。等身大で、写実的に制作されている兵馬俑は、同じ顔は一つとしてないことも特徴。なぜ、ここまで兵馬俑が個性的なのか、その理由はまだ判明せず、現在も調査と発掘が進められている。

『日中国交正常化50周年記念 兵馬俑(へいばよう)と古代中国~秦漢文明の遺産~』《戦服将軍俑》 秦時代 高さ196cm / 秦始皇帝陵博物院 一級文物

同展では、これまで11体しか発見されていない将軍俑のうち、一体を日本初公開するほか、武士俑、騎兵俑など計36体の兵馬俑など約200点を展示。最新の調査結果を踏まえた、好奇心を刺激する展覧会となりそうだ。

【TOPIC6】デザイン、工芸、ファッションがテーマの展覧会

『上野リチ:ウィーンからきたデザイン・ファンタジー』上野リチ・リックス《プリント布地デザイン[木立]》1925-35年頃 京都国立近代美術館

2022年は美術分野以外の展覧会も大充実。『上野リチ:ウィーンからきたデザイン・ファンタジー』(京都国立近代美術館:開催中〜1/16、三菱一号館美術館:2/18〜5/15)はデザイナー・上野リチの世界初となる回顧展。ウィーン工房で活動していたリチは、京都出身の建築家・上野伊三郎と出会い、結婚。第二次世界大戦前は京都を拠点としてウィーンでも活動を行っていた。同展では、ウィーン、ニューヨーク、そして京都など世界各地から作品が集結。自然をモチーフに、自由で躍動感に満ちた線と色彩を使った彼女のデザインは、今見ても新鮮だ。

『ガブリエル・シャネル展ーManifeste de mode(仮称)』シャネル テーラード・スーツのアンサンブル 1965年春夏 裏打ちされたツイード ガリエラ宮パリ市立モード美術館蔵
(c)Julien T. Hamon

女性のためのスーツを浸透させ、ジャージー素材を用い、それまでタブーとされていた黒色を使ったドレスを提案するなど20世紀のファッションを次々に変革していったデザイナー、ガブリエル・シャネル。三菱一号館美術館で開催される『ガブリエル・シャネル展ーManifeste de mode(仮称)』(6/18〜9/25(予定))は、「20世紀で最も影響力の大きい女性デザイナー」と言われた彼女の日本では32年ぶりとなる回顧展。代表作となるリトル・ブラック・ドレスをはじめ、コスチューム・ジュエリー、香水などが並ぶ展示空間は、多くの人の心をときめかせるはず。

忘れてはならないのが日本の工芸品。『大蒔絵展ー漆と金の千年物語』(MOA美術館:4/1〜5/8、三井記念美術館:10/1〜11/13、:徳川美術館:2023年春)は、MOA美術館、三井記念美術館、徳川美術館の3館が共同で開催する蒔絵の全貌に迫る展覧会。平安時代から、現代の漆芸家作品まで約200点の名品が展示される。また、展示作品のうち国宝・重要文化財が合計で70件以上という豪華絢爛さも魅力。出品作品は会場ごとに異なるのも興味深い。

【TOPIC7】史上初、89件の国宝を大公開! めでたいトーハク150周年

狩野永徳筆 国宝《檜図屛風》東京国立博物館蔵 安土桃山時代・天正18年(1590)

東京・上野にある東京国立博物館、通称トーハク。7万件以上の所蔵品を持つ、日本最大の博物館は2022年に創立150年を迎える。これを記念して東京国立博物館150周年記念『国宝 東京国立博物館のすべて』(10/18~12/11、会期中、一部作品に展示替えあり)が開催される。

国宝 《太刀 銘 三条(名物 三日月宗近)》 東京国立博物館蔵 渡邊誠一郎氏寄贈 平安時代・10~12世紀

展覧会は2部構成。第1部「東京国立博物館の国宝」では、日本の国宝の約1割となる国宝89件を展示替えを含めつつ全点公開する。狩野永徳の障壁画《檜図屛風》や渡辺崋山《鷹見泉石像》をはじめ、教科書にも登場する有名作品や名作を一挙に堪能することができる。そして、第2部の「東京国立博物館の150年」ではトーハクの150年の歴史をたどる。1872年に開催され、トーハクの源流となった「湯島聖堂博覧会」を描いた錦絵、一曜斎国輝《古今珎物集覧》をはじめ、トーハクにまつわる資料や作品、映像で、その長い歩みをたどっていく。

日本の美術館・博物館の礎ともいえるトーハクの歴史と作品を知ることで、日本美術の歴史もたどることができる、豪華絢爛な展覧会だ。

【TOPIC8】日本美術ももちろんアツい!

『大英博物館 北斎―国内の肉筆画の名品とともに―』葛飾北斎《流水に鴨図》一幅 江戸時代 弘化4年(1847) 大英博物館 1913,0501,0.320 (c) Trustees of the British Museum

近年盛り上がりを見せる日本画の展覧会も目白押しだ。『大英博物館 北斎―国内の肉筆画の名品とともに―』(サントリー美術館:4/16〜6/12、会期中展示替えあり)は、世界中に熱狂的なファンをもつ浮世絵師・葛飾北斎の展覧会。イギリス・大英博物館の所蔵する北斎作品を中心に、国内の肉筆画の名品も交えて、北斎の画業の変遷をたどっていく。また、なぜ大英博物館に北斎作品が集まったのか、その理由をコレクターに着目して浮き彫りにし、海外における日本美術の受容についても考えていくという興味深い内容だ。

「ボストン美術館所蔵 『THE HEROES 刀剣×浮世絵―武者たちの物語』」
歌川国芳《小子部栖軽豊浦里捕雷》 天保5-6年(1834-35)頃 Bequest of Maxim Karolik Photographs © Museum of Fine Arts, Boston

森アーツセンターギャラリーで開催される「ボストン美術館所蔵『THE HEROES 刀剣×浮世絵―武者たちの物語』」(1/21〜3/25、新潟県立万代島美術館:4/23~6/19、静岡市美術館:7/2~8/28、兵庫県立美術館:9/10~11/20)は、ボストン美術館が所蔵する武者絵と刀剣に焦点を当てた展覧会。武者絵とは武者たちの物語を描いた絵画のこと。「風景画」や「役者絵」「美人画」などとならび、庶民の人気が非常に高かった。同展では、初期の浮世絵師・菱川師宣から明治期の月岡芳年まで、有名絵師が描いた武者絵を118点展示。すべての作品が日本初出展となる。合わせて、ボストン美術館のコレクションより厳選した刀剣を20口、そして武者絵に関連する国内の刀剣も特別展示。平安時代から江戸末期までの日本刀の歴史を概観することができる。浮世絵と刀剣をあわせて鑑賞することで、力みなぎる武者の世界を堪能できるはずだ。

『没後50年 鏑木清方展』 鏑木清方《築地明石町》1927年 東京国立近代美術館 (c)Nemoto Akiko

『没後50年 鏑木清方展』(東京国立近代美術館:3/18〜5/8、京都国立近代美術館:5/27〜7/10)は、美人画で名高い日本画家・鏑木清方の没後50年を記念した大規模回顧展。13歳で水野年方に入門した清方は、挿絵画家・日本画家としてとしてめきめきと頭角を現していった。同展は、清方の代表作として知られていながら、1975年から2019年まで所在不明となっていた《築地明石町》をはじめ、すべて日本画のみで展示を構成していく。ときにはたおやかで、ときには艶やかな清方の女性像を心ゆくまで満喫できる貴重な機会だ。

【TOPIC9】今年も芸術祭が目白押し

スケジュールの変更が相次いだ国内の芸術祭も、ようやく落ち着きを取り戻しつつある。5回目となる「瀬戸内国際芸術祭2022」(4/14〜5/18、8/5〜9/4、9/29〜11/6、直島など12の島と高松港・宇野港周辺)は、4月から11月まで、それぞれ会期3期に分けて開催。今回のテーマは「海の復権」。青木野枝や鴻池朋子、大竹伸朗らが新作を発表するほか、ウィム・デルボア、藤原史江、保科豊巳も初参加する。

愛知県で2019年まで開催されていた芸術祭「あいちトリエンナーレ」は、森美術館館長の片岡真実を芸術監督に迎え、「国際芸術祭あいち2022」(7/30〜10/10)として生まれ変わった。テーマは「STILL ALIVE」。名古屋市の愛知芸術文化センターや、一宮市、常滑市、名古屋市有松地区など複数の会場で、国内外の80組程度のアーティスト及びグループが現代美術やパフォーミングアーツなどジャンルを横断した藝術を発表する。

また、神奈川県横須賀市では夜の無人島が会場の芸術祭「Sense Island -感覚の島- 暗闇の美術島 2021」(1/22〜3/6の金土日及び祝日と2/10、猿島一帯)が、京都では写真をテーマにした芸術祭「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2022」(4/9〜5/8)が、また、愛媛県松山市では道後温泉を会場にした「道後オンセナート2022」(5月予定、道後温泉一帯)も開催される予定。2022年も日本全国で芸術祭が楽しめそうだ。

【TOPIC10】20世紀スペインを代表する巨匠たちにも注目

『ミロ展―日本を夢みて』ジュアン・ミロ 《絵画(カタツムリ、女、花、星)》 1934年 油彩、キャンバス 国立ソフィア王妃芸術センター Photographic Archives Museo Nacional Centro de Arte Reina Sofia, Madrid (c) Successió Miró / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2021 E4304

ヒエロニムス・ボスにゴヤ、ベラスケス、エル・グレコなど偉大な芸術家を排出してきた藝術大国スペイン。このスペインで20世紀に活躍したミロ、そしてピカソの展覧会も開催される。

Bunkamura ザ・ミュージアムで開催される『ミロ展―日本を夢みて』(2/11〜4/17、愛知県美術館:4/29~7/3、富山県美術館:7月中旬~9月初旬)は、国内では20年ぶりとなるジュアン・ミロの回顧展。ピカソと並ぶ現代スペインの巨匠として知られるミロは、日本文化に深い造詣があったことが近年の研究で明らかになってきている。この展覧会では、ミロと日本の関係や、批評家の瀧口修造との交流、日本の民芸品への親しみなど、これまで知られてこなかったミロと日本のつながりを紐解き、新しい視点でミロを見つめていく。

ポーラ美術館で開催される『歿後50年 ピカソ 青の時代を超えて』(9/17〜2023/1/15 、ひろしま美術館:2023/2/4~5/28)は、ポーラ美術館とひろしま美術館による共同企画展。91年の生涯の間に画風をさまざまに変遷させてきたピカソが、どのようなプロセスで絵画制作を行ってきたのかについて迫っていく。初期の「青の時代」から、キュビスムの探求、円熟期から晩年に至るまで、彼はどのように「描く」ことを追求していったのかを、両館のコレクションをはじめ国内外の名品から紐解いていく。

上記でご紹介したもの以外にも、2022年は魅力的な展覧会が多数予定されている。中止が相次いだ20年、21年の分を取り戻すべく、22年はアートを思う存分楽しみましょう! 引き続き感染対策は万全に、また、事前予約の要不要については公式HPなどでご確認の上、お出かけ下さい。

構成・文:浦島茂世

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