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永田崇人が『カラフラブル』で示す心境の変化「売れたいというより、強靭になりたい」

ぴあ

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ゆうたんは、結局自分のことを愛せていない人

毎週木曜23時59分より放送中の『カラフラブル~ジェンダーレス男子に愛されています。~』(読売テレビ・日本テレビ系)。第3話から新たな台風の目として出演しているのが、ゆうたん役の永田崇人だ。

本作の脚本を務めるのは、『おじさんはカワイイものがお好き。』(読売テレビ・日本テレビ系)の坪田文。永田にとっては、『スター☆コンチェルト〜オレとキミのアイドル道〜』(メ〜テレ・TOKYO MX)、『モトカレマニア』(フジテレビ系)に続く3度目の坪田作品への出演となる。

「『スタ☆コン』の5話で、ト書きには泣くと書いていないのに、僕が号泣しちゃったシーンがあって。それを見た坪田さんが『書いて良かった』と言ってくださったんですね。そこからいろいろ気にかけてもらっているんですけど、こうやってまた作品に呼んでもらえるのは本当にありがたいです。」

『カラフラブル』は、とにかく美しいものに目がない新米編集者の和子(吉川愛)と、女性と見まがうほど美しい周(板垣李光人)が主人公のラブコメディ。胸がキュンとなるようなシーンと共に、ジェンダーを中心とした社会的なテーマが盛り込まれている。

「2話が女性の生理に関するお話だったんですけど、めっちゃ好きなお話でした。僕も台本を読んでいろいろ知ったというか。女性の中には、生理期間中はお休みがほしいくらい、しんどい人がいるんだなって。川上未映子さんの『きみは赤ちゃん』というエッセイがあって、それは出産に関するお話なんですけど。生理にしても出産にしても、僕は男性だからわからないことも多い。でも、知るだけでも全然違うじゃないですか。まずは知ることが大切だし、そうやっていろんなことを抱えながら生活をしている女性のみなさんに対してもっとリスペクトが必要だなと思いました。」

『カラフラブル』のテーマは、「Freedom=自由」。男性がメイクをしてもいい。女性が一人で外食をしてもいい。既存の価値観にとらわれず、一人ひとりが自分らしくあれる多様な世界を描いている。

「自分が自分のままでいけないことなんてない。だって、みんな誰かのために生きているわけじゃなくない? というメッセージを、台本を読んでいてもすごく感じますね。僕が演じるゆうたんはその真逆にいる人物。自分のためにやっているように見えて、結局自分のことを愛せていない人だから。」

ゆうたんの心に影を落としているのは、自身の性的指向。高校時代、ゲイであることを友人にアウティングされ、いじめにあった過去を持っている。

「ゲイの方たちがどんなふうに生きて、どんな苦しみを抱えているか、ちゃんと理解しなければいけないなと思って、自分なりに調べたり、同性愛者の知り合いに話を聞いたりしました。あと、すごく参考になったのが、ななぴぃ(七崎良輔)さんの『僕が夫に出会うまで』という本です。撮影に入る前に買って読んだんですけど。僕の中のゆうたんの設定として、本に書かれていたななぴぃさんの境遇をそのまま置き換えさせてもらったところも結構あります。」

自分の好きじゃない部分を隠さなくていいと思えるようになった

ゆうたんは、“子ども番組のお兄さん”として活躍するタレントだ。キュートな魅力で子どもたちから人気を集めている。

「僕も『あつまれ! アマゾンキッズ しまじろうとあそぼう!』で“キャップ(お兄さん)”役をやっていて。そこから設定を引っ張ってくださったみたいで。坪田さんから『今の崇人くんが思っていることとか言いたいことをゆうたんの台詞に乗せているから、ぜひやってほしい』と言ってもらえたのはうれしかったですね。」

ゆうたんは単に可愛くて無邪気なだけではない。ひょんなことからゆうたんの番組に出演することとなった周にライバル心を燃やし嫌がらせをする、二面性のあるキャラクター。簡単に言ってしまえば、“嫌われ役”だ。

「でも、周に嫉妬するゆうたんの気持ちは理解できますよ。そういう自分も、自分の中にいるし。やりやすいと言ったら、すごい自分が嫌なやつみたいだけど(笑)。」

そう笑いを織り交ぜてから、リラックスした様子で、自分の中に起きた変化を明かす。

「でも、やっとそういう自分のあまり好きじゃない部分を隠さなくてもいいよなと思えるようになってきたというか。それも俺だし、芝居に使えるんだったらいいじゃんって受け入れられるようになったのは、自分の中でも一歩進めたかなと思います。」

それまでは、演じる役に対して、どこかで自意識が見え隠れしていた。

「前までは、嫌なやつを演じるときも、どこかでちょっと嫌われないようにやろうとしていたと思うんですね。でもそれがなくなった。嫌われてもいいやって。もちろんその役が嫌すぎて、ドラマそのものまで嫌に見える可能性もあるから、塩梅は必要だけど。でも今は嫌なやつを演じるのも楽しい。でもどうだろう。そういう役ばっかり続いたら辛くなるのかな(笑)。」

監督から「あなたの出世作にしてみせます」と言ってもらいました

そんなふうに役を捉えられるようになったのは、『カラフラブル』の監督を務める熊坂出との出会いが大きかった。

「去年の8月に熊坂さんのワークショップに参加したんですよ。それが"セルフコンパッション"という、あるがままの自分を受け入れるという内容で。自己肯定感を上げる話をたくさん聞いたんです。そこでちょっと救われたというか。自分の中にあった苦しみがなくなった感じはありました。」

熊坂出は、『おじカワ』をはじめ、2017年版『きみはペット』(フジテレビ系)でもメイン監督を務め、同作で第34回ATP賞テレビグランプリテレビドラマ部門奨励賞を受賞した気鋭の監督。初めてタッグを組むにあたり、永田は熊坂から痺れるような言葉をもらった。

「『このドラマをあなたの出世作にしてみせます』と言ってくれて。その言葉はすごくうれしかったですね。」

そんな激励に演技で応えたい。熱い想いをぶつけたのが、第3話の周と対峙するシーンだ。

「熊坂さんはずっと『自由に、大胆に』とおっしゃっていて。そのシーンも広いスタジオだったんですけど、『カメラとか気にせず、全部好きに使っていいから』と。僕は映像の演技って一歩でも間違えたら撮り直しになる世界だと思っていたから、そんなふうに『何でもやっていい』と言ってもらえたことにびっくりしました。」

だからこそ、恐れず、臆せず、臨むことができた。

「台本を読んだときに自分が想像していたようなシーンにはならなかったですね。何もかも違いました。あらかじめここはこうやりたいなと考えていたことを全部捨てて、その場で起きることに反応していった。僕自身、すごく集中していましたし、李光人くんもすごく素敵で、お互いの間でちゃんと化学反応を起こせた気がしました。その感じが画面を通して観ている人に伝わっていたらいいですね。」

俺って陰キャなんだって知りました(笑)

ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」など舞台を中心にキャリアを積み、近年は『初めて恋をした日に読む話』(TBS系)、『モトカレマニア』(フジテレビ系)など映像にも活躍の場を広げている。

「最近、ようやく映像の現場でも緊張しなくなりました。昔は撮影の前日とか寝られなかったから。ちゃんと台詞覚えたっけ? とか、ここのシーンはこうでって何度も段取りを確認したり。不安でしょうがなかったです。」

屈託のない笑顔からポジティブな印象も強いが、根は繊細。本人も「性格は明るくないと思いますよ」と認める。

「たぶん暗いんだと思う。友達もいないし。時間があるときはずっと一人で映画館に行ってるし。この前、友達に『崇人はお酒が飲めたらもうちょっと陰キャじゃなかったんだろうな』って言われて。ずっと自分のことを陽キャだと思っていたから、そのとき初めて俺って陰キャなんだって知りました(笑)。」

今、オフタイムの大半を占めるのが、映画鑑賞と読書。映画は、昨年は約130本観た。

「最近面白かったのが、『JUNK HEAD』。ストップモーションアニメなんですけど、監督が7年かけて自分一人でつくってるんですよ。1枚1枚、写真を撮って、それをつないで。今だったらモーションキャプチャーとかいろんな方法を使えばもっと簡単にできるのに、アナログな方法にこだわりぬいている気概がすごいなって。話も人間ドラマで、面白かったです。」

好きな作家は、村上春樹。最近は、今村夏子にもハマッている。

「『星の子』という映画がめちゃくちゃ面白くて。原作も気になったから読んでみたんです。そしたら、それもすごく良くて。『花束みたいな恋をした』という映画の中に今村夏子さんの『ピクニック』の話が出てきて。それで、『ピクニック』も読みたいなと思って、『ピクニック』が収録されている『こちらあみ子』という短編集を読んだら、僕は表題作の『こちらあみ子』が刺さりました。めっちゃ面白かったです。」

そうやってインプットに励むのは、俳優として研鑽を積むためだ。

「感性をちょっとずつ研いでいってる感じがあります。知れば知るほど、世の中には素敵なものがいろいろ溢れているなと思うし、インプットしただけアウトプットが出てくるってなんとなくだけど実感もあるし。今は時間があるときは、なるたけいろんなものを観たり読んだりしたいです。」

これからもずっと芝居にまみれていたい

以前の取材で「売れたいという想いは結構強い」と永田崇人は口にしていた。けれど、その気持ちも少しずつ変わりつつある。

「どこかでそんな気持ちもあるとは思うんです。けど、そこまで執着しなくなったというか。売れるってタイミングもあるし。でもそんな運とか奇跡みたいなことを願ったり信じていれば、どうにかなるほど人生は甘くないと思うから。今はそれよりもちゃんと少しずつでも現実的に積み上げていきたい。売れたいというより、強靭になりたいです。」

それは、決して諦めでも投げやりでもない。ふわふわとした憧れから、ちゃんと地固めをしていこうという決意の言葉だ。

「この世界にいる人はみんな頑張っているし、全員報われればいいのになって思いますけどね。そうはならない皮肉な世界だから。でも、そういう厳しさも大事なんだと思えるようになったから、今は慌てなくなりました。何が正解かはわからないですけど、今は自分に合っている生き方ができていると思うから。そうやって突き進んだら、また違う何かが見えてきて。その繰り返しなのかなという気がします。」

そう落ち着いた口調で胸の内を言葉にする。タイミングによって、フェーズによって、考え方は変わるし、目標の置き方も変わる。そうやって人は変化し、成長していくのだ。だけど、ひとつだけ永田崇人には変わらないことがある。

「芝居が好きなんで。そこだけはずっと変わらない。舞台も映像も両方やって。これからもずっと芝居にまみれていられたらいいですね。」

何があってもブレないものがある人間は強い。その芯が「芝居」だとしたら、永田崇人はもうそれを手にしているのかもしれない。焦ることも、いたずらに自分を卑下することもなく。永田崇人は「強靭」な気持ちで、ただ芝居と向き合い続ける。

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撮影/岩田えり、取材・文/横川良明、ヘアメイク/茂手山貴子、スタイリスト/東正晃、衣装協力/シャツ、ベスト、パンツ ナノアット、シューズ パラブーツ(03 5766 6688)、ソックス スタイリスト私物

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