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映画史・映画芸術の視点で新作・上映特集・映画展をご紹介

岡田 秀則

1968年生まれ、国立映画アーカイブ主任研究員

典座 -TENZO-

山梨県からタイへ、ラオスへ、次はどっちへ転がってゆくのか目が離せない映画集団「空族」。新作『典座 TENZO』は、曹洞宗の若手僧侶の団体から依頼されて撮ったというから意外だ。だが、彼らが恐らくスポンサーの注文通りに作っていないのは一目瞭然だ。 演技の経験などまるでないだろう僧侶が、たどたどしくセリフを述べているのを今さらどうとか言っても始まらない。降って湧くアイデアをカットアップのようにつなぎ合わせながら、ある時は高僧の知性あふれる名言にひれ伏し、またある時は信仰の中の「食べること」に真摯に思い悩む。 思えば『サウダーヂ』でも『バンコクナイツ』でもそうだが、「空族」の作る映画は、固定された作品として評価する映画というより、それがこの世に生まれ出てしまうこと自体をとことん楽しむ映画だと思う。その意味では『典座 TENZO』もそれまでの作品と大して変わることはない。カンヌ国際映画祭にまで出品されたと聞けば、なおさら「ようやる」のひと言が似合う。そして曹洞宗という宗派の果てしない寛容さに感謝したくなる。

19/10/1(火)

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