Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

水先案内人のおすすめ

評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!

邦画も洋画もミーハーに、心理を探る作品が好み

伊藤 さとり

俳優や監督との対談番組を多数、映画パーソナリティ

わたしはダフネ

ダウン症の物語というと『チョコレートドーナツ』が真っ先に浮かぶのだけど、夢を叶える力を与えてくれる『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』という傑作も記憶に新しく、今作『わたしはダフネ』は、主人公のダフネから人生の輝きを教えてもらいながら、子供を身ごもった時点でまず最初にぶつかる「産むか産まないか」という死生観にもしっかり向き合った人生の物語でした。 自分の面倒を見てくれていた母親が亡くなり、年老いた父親と暮らすことになるダウン症の女の子というと、“これは大変そうだ”と勝手に思ってしまうのがそもそも偏見だったのかもしれないと反省するほど、ダフネの才能は素晴らしく、とにかく紡ぐ言葉の美しさに魅了されるのです。 さらに彼女の会話の仕方や行動から、人を正面から見てきたことが読み取れる脚本と、ダフネを演じたカロリーナ・ラスパンティのチャーミングさに引き込まれます。 それは、ダフネの幼少期が描かれていなくとも彼女の育った環境を想像できてしまうダフネという人物像が、明確に画面に映し出されていることが大きいのです。 きっと母親や周囲から沢山の愛を貰い育ち、父親が自分に対して胸を張って誇れずにいることにも気づいているからこそ、一生懸命、自分を愛しているのかもしれないとまで察してしまう細やかな仕草と言い回しも独特だから。 けれど、これは演技というよりもカロリーナ・ラスパンティ自身の人生観なのかもしれない。「自分を愛することは他者を愛することへと繋がる」気がした力強い映画です。

21/6/19(土)

アプリで読む