これはもう観てもらうしかない－とまず書いてしまった方がいいと、ギブアップ宣言。クラシックのオーケストラ・サウンドと電子音楽を融合させた音楽スタイルで知られ、自身のアルバムの他にもスティーヴン・ホーキング博士の伝記映画『博士と彼女のセオリー』や『ボーダーライン』『メッセージ』といったヒット作の音楽も手がけ、坂本龍一やマックス・リヒターといった才能ある音楽家からもリスペクトされている天才作曲家ヨハン・ヨハンソンが自ら監督した『最後にして最初の人類』はスクリーンに釘づけにされてしまうだけでなく、終わった後にはしばらく席を立てなくなってしまうくらいに深く重い映画だ。原作は1930年の初版以来、『2001年宇宙の旅』で知られるアーサー・C・クラーク等にも大きな影響を与えてきたSF小説の金字塔。旧ユーゴスラビアに点在する巨大な戦争記念碑〈スポメニック〉の美しい映像と、形容不可能な音楽、ティルダ・スウィントンのナレーションがひとつになった映画は、残念ながらヨハンソンの遺作にもなってしまったが、その時空を超えた空間の中を孤高の天才の魂が浮遊しているようにも僕には感じられた。

21/7/13(火)