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水先案内人のおすすめ

評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!

歌舞伎とか文楽とか…伝統芸能ってカッコいい!

五十川 晶子

フリー編集者、ライター

9月文楽公演

第一部の『心中天網島』の紙屋治兵衛には、いやはや毎度呆れさせられる。ダメンズの典型なのだ。 大阪天満の紙屋治兵衛は妻子あるのに曽根崎新地の遊女の紀伊国屋小春と深い馴染み。この世では添われないため心中の約束をしており、物語はそこから始まる。だが小春は治兵衛の妻と密かに心を通い合わせ、治兵衛に心中させないよう心変わりした振りをする。兄の孫右衛門も諭すが、治兵衛は逆上してしまう。それどころか自宅に戻っても炬燵に寝そべり、妻の前で泣きくれる始末。ヒーローでもなんでもない、ちょっと軽薄でちょっと情の濃い市井の男と、周囲の人々の善意がからまわりしていく物語だ。 第二部は『娘景清八嶋日記」。世捨て人となった平家の強者景清と、その娘糸滝の物語。娘は父を案じて自ら身を売り金を用意し、父を捜して海を渡りはるばる日向国へやってくるが……。 第三部は『艶容女舞衣』。大阪上塩町の酒屋茜屋半七は芸人である三勝と深く馴染み、妻を置いて出奔、殺人の咎まで負ってしまう。 太夫と三味線と人形。どうしても人形に目がいきがちだが、時には太夫と三味線のかけあいにも耳を傾けたい。三味線は太夫の語りに寄り添い、そして時に叱咤し、鼓舞するように弾いく。さらに人形と太夫と三味線が三位一体になってノッていると、客席も次第に盛り上がっていくもの。そんなときは「勇気を出して、がまんせずに、ぜひ拍手をしてほしい。演者にとってはシーンとされているよりずっとうれしいので」という太夫も。 ちなみに舞台の周囲に字幕が表示されるので、詞章を聞いて頭の中で漢字変換できなくても大丈夫。

19/8/31(土)

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