【おとな向け映画ガイド】
ホアキン・フェニックスが子育て!『カモン カモン』
今週末(4/15〜16)の映画公開は13本。うち全国100館以上で拡大公開される作品が『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』の1本。中規模公開、ミニシアター系が12本です。今回は次週22日公開のホアキン・フェニックス主演作『カモン カモン』をご紹介します。
『カモン カモン』
狂気せまる『ジョーカー』の演技で存在感を決定づけ、米アカデミー賞主演男優賞を手にした、ホアキン・フェニックスが次回作に選んだのは、子育てに直面する中年男の物語でした。子育て、といっても、実の子供ではなく、妹の9歳になる息子を預かることになった独り者の伯父さんの役です。
オリジナル脚本を書いたのは監督のマイク・ミルズ。前作『20センチュリー・ウーマン』は、思春期の息子を持つ55歳のシングルマザーが主人公。時代の激変と子育てに悩む、自身の母が実はモデルでした。今回の作品は、自分の息子のことを映画にしようと考えたあげく、父親でなく、伯父という設定を思いついたそうです。“子供がおらず、なにもかもゼロから学ばねばならない伯父”を通じて、子育てについて考える。なるほどこれは面白い発想です。その伯父がホアキン・フェニックスであることも。
彼が演じるジョニーは、ニューヨークに住むラジオジャーナリスト。子供たちにインタビューする番組を担当して、アメリカ中を回る日々ですが、妹の夫の病状がひどくなり、甥っ子のジェシーの面倒をみることになります。
伯父さんの存在というのは、子供にとって、特に男の子にとっては興味津々。ところが、伯父さんにとって甥っ子の存在って、どうなんだろう? これは興味深い問いかけです。
利発で想像力にあふれていて、お話をせがむ甥っ子。でもさびしがりやで、ちょっと面倒な男の子です(神子役ウディ・ノーマン!)。子供にインタビューをすることが仕事のジョニーですが、9歳の男の子との生活は発見の連続。「どうして」「なぜ」を連発するなかに、父と母のあやうい状況にも心をいためるジェシーの本音が見え隠れし、ジョニーはそれに応じるうち、認知症を患い1年前に他界した母、疎遠にしていた妹夫婦のことに思いを巡らします……。
さらに、この映画を印象的なものにしているのが、モノクロの映像です。ジョニーの仕事にあわせ、ニューヨーク、ロサンゼルス、デトロイト、ニューオリンズの4都市が舞台になりますが、ロケ撮影で描かれた街の風景がしっとりとしていながら、躍動感があります。ヴィム・ヴェンダース監督の『都会のアリス』のようなロードムービースタイルで “ドキュメンタリーを織り込んだ寓話に” というマイク・ミルズの狙いは成功しています。モノクロの映像は、時を超えます。
【ぴあ水先案内から】
笠井信輔さん(フリーアナウンサー)
「……子育ては頭にくるほど大変、でも自分もこうだったんだろうなと思い出させてくれる一本。」
伊藤さとりさん(映画パーソナリティー)
「……子役のウディ・ノーマンがとにかく自然体なのだ……」
波多野健さん(TVプロデューサー)
「……(ホアキンが)実に真摯にジェシーと向き合う姿が、僕が今まで抱いていた彼の印象と遠くて「こういう役もできるのか」とちょっと驚いた……」
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