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【おとな向け映画ガイド】

恋は、遠い日の花火ではない──小林聡美主演『ツユクサ』

ぴあ編集部 坂口英明
22/4/24(日)

イラストレーション:高松啓二

今週末(4/29〜30)の公開映画数は16本。うち全国100館以上で拡大公開される作品が『ホリック xxxHOLiC』『劇場版ラジエーションハウス』の2本。中規模公開、ミニシアター系が14本です。そのなかから今回は、おとなの恋をほんわかと描いた日本映画『ツユクサ』をご紹介します。

『ツユクサ』

こういう、観終わってしあわせな気持ちになれるおとな向きの日本映画、お待ちの方は多いと思います。熱愛でも悲恋でもない、ほんわかとしたラブストーリーです。

『愛を乞うひと』『閉鎖病棟―それぞれの朝―』など重厚な作品の多い平山秀幸監督が、安倍照雄のオリジナル脚本を10年間あたため、映像化。「今回はリキまない映画づくりをしよう」と考え、イメージしたのは、スローライフな生き方を感じさせる小林聡美でした。

彼女が演じる芙美さんはそろそろ50歳。東京に近い海辺の町にひとり暮らし。地元のタオル工場で働いています。断酒会に出ての帰り道、突然、運転していた軽自動車に隕石が衝突。小さな破片ですが、驚いてハンドルをきりそこない、車体が横転してしまいます。

一時は気が動転した芙美さんですが、仲良くしている天文オタクの少年、航平クン(斎藤汰鷹)によると、ひとが隕石に衝突する確率は1億分の1とか。こりゃ、何かいいことありそう、と少し喜んだ芙美さんの前に、なんと、気になるひとが現れます。散歩の途中でみかけた男性。道ばたにひっそり生えるツユクサで草笛を吹いていた、篠田サン(松重豊)です。

ふだんの芙美さんは、職場に、航平クンのママ直子さん(平岩紙)と妙子さん(江口のりこ)という仲良しの同僚もいて、ふたりとたわいのないおしゃべりをするのが楽しみといえば楽しみ。いたって平和な日々ですが、芙美さんの断酒会にでるほどのアルコール依存症にはわけがあり、親友ふたりも、実はそれぞれに悩みを抱えているのです。

小林聡美というと、テレビ『やっぱり猫が好き』のもたいまさこ・室井滋、映画『かもめ食堂』のもたいまさこ・片桐はいり、と女3人のコンビネーションが印象的。今回も絶妙です。

サラメシ時間の会話、買い物に行きながらの本音トーク……。「あの3人の芝居はカットをかけたくない。ずーっと見ていたかった」という平山監督。監督の気持ち、同感です。

直子さんの旦那に渋川清彦、工場長にベンガル、芙美さんいきつけのバーのマスターは泉谷しげると男優も個性派ぞろい。さらに、あまりテレビではお目にかかれない、落語界の超人気者、瀧川鯉昇、桃月庵白酒の両師匠が出演しています。平山監督が大ファンだそうです。鯉昇師は断酒会のリーダー、白酒師は風貌を生かしお坊さん役。それぞれ瞬間芸のように場をさらいます。

もうこんなものかな、とあきらめていた人生に奇跡がおきる。いや、そんなたいそうなものではないけれど……。中年男女が織りなす、ちょっといい話。昔、サントリーのCMで使われた「恋は、遠い日の花火ではない」というコピーを思い出しました。

【ぴあ水先案内から】

笠井信輔さん(フリーアナウンサー)
「……小林と平岩紙と江口のりこの日常会話が楽しく、まるで「おばちゃん3バカトリオ」。テレ東の深夜枠でこの3人のスピンオフドラマ希望(笑)……」

笠井信輔さんの水先案内をもっと見る

野村正昭さん(映画評論家)
「……ベテランの俳優さんたちの肩の力が抜けた演技は勿論、小学生、航平役の斎藤沙鷹の存在が、未来の希望を体現している……」

野村正昭さんの水先案内をもっと見る

(C)2022「ツユクサ」製作委員会