【おとな向け映画ガイド】
恐るべしトム・クルーズ! 『トップガン マーヴェリック』
今週(5/27〜28) の公開映画数は16本。うち全国100館以上で拡大公開される作品が『トップガン マーヴェリック』『20歳のソウル』『犬王』の3本。中規模公開、ミニシアター系が13本です。そのなかから大ヒット作の続編『トップガン マーヴェリック』をご紹介します。
『トップガン マーヴェリック』
こんなに、あれもこれも見事にキマッている続編は珍しい! 文句なしです。熱烈なファンというわけではありませんが、偉大なトム・クルーズ、そう思いました。前作の公開時、彼は20代なかば。あれから36年。全然、とはいいませんが、変わらない! どころか進化を続けている。奇跡といっていいと思います。
それにしても続編の登場までなぜこんなに時間がかかったのでしょう。 理由はシンプルでした。トムがOKをださなかったから。
2020年にフランスで製作された「トム・クルーズ 永遠の若さを追求して」というドキュメンタリーが、昨年NHK-BSで放送されたことがありました。このなかで『トップガン』続編についてふれています。
映画の大成功でアメリカのシンボルとなったトム。その年の全米興行収入のトップとなり、海軍の入隊志望者は5倍に増加、彼がつけたサングラスの売上は40%増になったといいます。もちろんプロデューサーは500万ドルのギャラを提示し、続編のオファーをしますが、トムは「もう一度同じ役をひきうければアクション・ヒーローのレッテルをはられてしまう」と断ります。その後のトム・クルーズは、ポール・ニューマン、ダスティン・ホフマンといった名優との共演、オリバー・ストーン、スタンリー・キューブリック、スティーブン・スピルバーグのような巨匠との仕事で演技の幅を広げていきます。
風向きが変わったのは『ミッション:インポッシブル』シリーズの成功から。プロデューサーも兼ねるようになったトムは、シリーズ映画の作り方のツボがわかってきたようです。機は熟した、ということでしょう。
続編『トップガン マーヴェリック』の準備が始まったのは、2010年。トムとプロデューサーのジェリー・ブラッカイマー、前作の監督トニー・スコット(惜しくも2012年急逝)の3人で、並んでもう一度『トップガン』を観たのだそうです。
「久しぶりに旧友に会い、また一緒に過ごせることを楽しむ感じ。同時に良いシリーズは過去と同じくらい未来にも目を向けていなければならない」とブラッカイマーが語っています。鑑賞後の雑談で手応えを感じた、といいます。
それから撮影までは8年の時間がかかりました。監督には、前作を観たとき13歳だったというジェセフ・コシンスキーを起用。2018年、彼が最初に撮影したのは、レザージャケットをまとい、アビエーターサングラスをつけたトムが、夕日を背に、カワサキのバイクで滑走路を走るF/A18と併走するシーンでした。
この作品にはそんな懐かしいショットがいくつもあります。トムによれば「映画の始まり方は明確に決まっていた。その理由は、冒頭で観客に“安全だから大丈夫。心配は要らない。長く待たせたから、今これを見せるよ。さあどうぞ” と伝えたかった。これが製作者たちと見出したバランスだ。このようなオープニング、このような作品にしたいと思った」。
なるほど納得のオープニングです。
もうひとつ、トムがこだわったのは、本モノの迫力。
「もし僕がこの映画で人々を楽しませるなら、すべてを“実際に撮影”する。僕はあのF/A-18(戦闘機)に本当に乗る。カメラの機材も撮影方法も開発しなければならないし、時間もかかるだろう。CGではだめ。それでは観客は”体験”した気にならない」。
これも『ミッション:インポッシブル』で、スタントマンを使わず、まさに体をはったアクションに挑戦し続けるトムならではの考えです。その本気がにじみ出ています。結果、驚くような映像として現れたのです。
クルーを演じた俳優たちは数カ月前から、飛行の訓練を受け、強力なG(重力加速度)に耐える体を鍛えます。実際の戦闘機のコックピットで、7.5G、8Gのなかで、演技をしながらセリフを話しているのです。トレーニングの監修にあたったのはトム自身でした。
前編から36年の時間。映像技術にも大変化があります。IMAXなど、巨大スクリーンの登場です。前作公開時にもあるにはあったのですが、撮影にも上映にも大型フィルムを使い、大がかりなシステムが必要でした。それがデジタルで超コンパクト化。今回、撮影には、一つのコックピット内にIMAXカメラ6台を搭載し、ありとあらゆる角度から鮮明かつ大胆な映像を撮影しています。
ドッグファイトの映像と組み合わさった音楽の迫力も前作通り。今回はレディ・ガガが主題歌を担当しています。
IMAX、4DX、MX4D、DOLBY CINEMAと最新鋭の機器での上映が決まっています。配信の時代ですが、この映画こそ、映像と音に極力こだわって、ぜひ設備のよい映画館でご覧ください。
【ぴあ水先案内から】
中川右介さん(作家、編集者)
「……軍隊映画でアクション映画でありながら、圧倒的に美しい映像とそれにフィットした音楽……」
渡辺祥子さん(映画評論家)
「……世代交代、時代の継承も見せながら、昔のライバル、アイスマンの登場も懐かしく、ハリウッド娯楽大作の魅力を堪能した。」
高松啓二さん(イラストレーター)
「……やっぱりG−1ジャケットを着てカワサキNinjaで疾走するトムを観るとテンションあがるね!」
堀晃和さん(ライター、編集者)
「……緊張感がダイレクトに観客席に迫ってくる。こんなにも踏ん張って観たのは初めてだ。……」
相馬学さん(フリーライター)
「……36年待った甲斐のある、エモいアクションに燃えよ!」
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