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【おとな向け映画ガイド】『エルヴィス』を殺したのは誰?

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イラストレーション:高松啓二

今週(7/1〜2) の公開映画数は21本。うち全国100館以上で拡大公開される作品が『バズ・ライトイヤー』『エルヴィス』の2本。中規模公開、ミニシアター系が19本です。そのなかから、伝説のロック・レジェンド、プレスリーの生涯を描いた『エルヴィス』をご紹介します。

『エルヴィス』

エルヴィス・プレスリーを知らない若い人たちにぜひオススメ、と思ったけれど、40、50代の人も、ビートルズは知っていても、エルヴィスの凄まじさは知らないかも。観たらきっと驚きます。ミュージシャンのかっこよさの原点は彼なんだと……。逆に、プレスリーを知る人にとっては、驚きの事実、というか、発見があると思います。監督は、エポック・ド・パリを舞台にした『ムーラン・ルージュ』が代表作の、バズ・ラーマン。スーパースターを描いた音楽いっぱいの映画ですが、彼の生きた時代背景が投影されていることも興味深いし、死をめぐる謎はミステリー仕立て。実に盛りだくさんのエンタテインメントになっています。

プレスリーのデビューは1953年。南部の黒人が多く住む地区で黒人音楽を聴いて育ち、そのテイストをカントリーソングとミックス、独自の音楽スタイルを作りだしました。さらにそのセクシーな歌い方は、若い女性たちを悩殺、物議をかもしたほど。『ハートブレイク・ホテル』でヒットチャートの1位に駆け上がり、以降ヒットを連発しました。反道徳的な存在とされかけた時、2年間の兵役につき批判をうまくかわして、退役後は映画界に転身、MGMのスターになります。『ブルー・ハワイ』『ラスベガス万才』など、映画のなかで歌って踊るスタイル。その中からヒット作も多く生まれましたが、次第に飽きられ、60年代後半には、いってみれば“オワコン”になりかけていました。

それが1970年、ラスベガスのヒルトンホテルで始めたライブで一気に復活。『エルビス・オン・ステージ』というタイトルで映画化され、これが大ヒットしました。彼は大人のエンターテイナーとして認められたのです。ここからエルヴィスのことを知ったという人が、いまのファンの多くでしょう。舞台構成や選曲など、他のミュージシャンに与えた影響も大きかったといいます。

そのエルヴィスの生涯に付き添い、ショービジネスでの戦術をたてた黒幕がトム・パーカー大佐とよばれたマネージャーです。ふたりの出会いから、すべての人生の転機にどう大佐がかかわっていたか。そして、42歳の若さで亡くなった死の謎、その鍵を握るのもパーカー大佐なのです。実は彼こそがこの映画のもうひとりの主役です。

エルヴィスを演じているのは、オースティン・バトラー。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』に出演していた新進俳優。若い頃の歌は彼自身が歌っています。後半の大人の声はエルビス本人の歌声との組み合わせだそうですが、かなりうまく雰囲気をだしています。そして、問題のパーカー大佐役に起用されたのは、なんと、アカデミー賞俳優のトム・ハンクス。メイキャップで、この悪漢マネジャーになりきっています。

MGM時代、プレスリー映画といえば、例えば『アカプルコの海』とか、もちろん『ブルー・ハワイ』も、“世界のリゾート”が舞台だったのですが、エルヴィスがロケにでることはなく、すべてスタジオで、スクリーンに映しだされた景色の前でお芝居をしていました。パーカー大佐の考え、ときかされたことがありますが、その本当の理由も明らかにされます。パーカー氏とはいったい何者なのか……? 彼がショービジネスのマネージメントを始めたのは、テントを張ったカーニバルから……。そこは、どこかうさんくさげで、怪しい魅力にみちあふれています。映画ファンから見れば、ギレルモ・デル・トロ監督が描いた『ナイトメア・アリー』と同じような世界です。バズ・ラーマン監督の『ムーラン・ルージュ』ともつながりそうです。

見方によっていろいろな楽しみかたができる。そんな映画です。

【ぴあ水先案内から】

渡辺祥子さん(映画評論家)
「……彼に内包された優しさと弱さが自身を蝕んでいることをバズ・ラーマンは醒めて冷たい感性で見抜いている。」

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高松啓ニさん(イラストレーター)
「……ド派手演出が、センセーショナルなロックの王様との相性にぴったり……」

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中川右介さん(作家、編集者)
「……凝りようが半端ではない。エルヴィスに詳しい人が観ても、感心するのではないか。コンサート、TVショーの再現度が、ものすごい。……」

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